Butterfly of the noon
長い夜が明ける──
深夜、レンナ先輩達の事が全校生徒に伝わった。
誰もが動揺を隠せずに、睡眠を取れた者は誰一人といないと思う。
オレ自身もそう。
でも、一番辛いのはきっと山村先輩だと思う。
先輩は体育館の隅で俯いて時折、レンナ先輩の名前を呟いては嗚咽を漏らしていた。
「山村先輩……」
名前の先は言葉が出ない。
何を言えばいいのか分からない──
「……はよ……」
「え?」
「朝、か……」
先輩の目元は真っ赤だった。
「何て顔してんだよ、姫路」
それ以外は、いつもと変わらない。
「あの……レンナ先輩の──」
「知るかよ!」
ゴス──
「がっ……」
先輩がオレの脇腹を蹴り上げた。
「その名前、二度と……口にすんな」
憤怒する先輩を初めて見た。
オレを殴った右手は赤く、左手は小刻みに震えていた。
「姫路くん、大丈夫?」
「滑って転んだみたいだから、大丈夫」
オレの代わりに先輩が答えた。
「本当に?」
「心配ないよ」
「そっか、良かった」
「……野嶋、どこかに行ってたのか?」
そう聞いたのは、野嶋の服が泥だらけだったから。
夜は、確か綺麗だった筈だ。
「レンナ先──」
言いかけた野嶋の口を手で塞ぐ。
「何?どうしたの?」
「何でもな──」
「レンナ先輩が寂しくないように花を植えてきたの」
「野嶋!」
野嶋を庇うように山村先輩を見る。
「ありがとう……」
先輩は泣いていた。
「こんな状況じゃ墓すら作れないよな……ありがとう……ありが……とうっ」
先輩がレンナ先輩を思う気持ちが痛い程伝わってくる……
「野嶋──」
オレも野嶋にお礼を言った。
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