Shadow of the departed soul
「ケィくん、泣いてるの?」
レンナ先輩に抱き締められる。
“私はケィくんの味方だよ”
そして、耳元で優しく囁いた。
鳥肌が立った──
理由は分からない。
「大丈夫です……だから、離して下さ──」
「ケィくんは弱いの。だから私か守ってあげる」
レンナ先輩の手に力がこもる。
“先輩”という鎖がオレを縛り付けた気がした。
手を動かせば離れられるのに、出来ない。
「何してるの?」
野嶋がオレの顔を覗き込む。
「好きなの?」
「違──」
「やっぱり嫌いなんだ」
ドン──
「きゃあ!」
野嶋がレンナ先輩を突き飛ばした。
「ちょっと!何するのよ!」
「姫路くん、大丈夫だった?」
オレは小さく頷いた。
「無視?アナタ、名前は?」
「大丈夫みたいで良かったよ」
「……何よ、コイツ……」
と、レンナ先輩に男子生徒が耳打ちをする。
「野嶋サラ、ね……」
薄ら笑いを浮かべてレンナ先輩は立ち去った。
一瞬、冷たい風が吹き抜けた気がした。
「……気に入らない……」
「何か言ったか?」
「ううん、何も」
野嶋は微笑んで、生徒達に紛れていった。
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