Plastic

(本編/リク/もしもネタ)



好きだった。
大好きで、大好きで……
例え、叶わぬ恋でも傍にいられたら……それだけで──


「アリス。まだ、引きずってんのか」
「……ううん。違うよ」


リクの墓前で手を合わせる。
もう、何年経ったんだっけ……
私はずっと、ハルクに支えられてきた。
それはずっと変わらない。

喧嘩する事は多かったし、今も喧嘩する。
けれど、開いた隙間を埋めてくれたのも間違いなく……ハルクだ。


「気が済むまでいたらいい……今日は、そういう日……だしな」
「…………ありがとう」


不思議な事に私とハルクが恋仲になったのは、自然の流れだった。
告白とかそういうのはなくて。
気が付く度に距離は縮まっていた。
やっぱり、そこにキッカケがあったわけじゃない。
長く伸びた髪を結う、ただそれだけ……そんな感覚。

変なの。
リクを好きになる、キッカケ。
また一つ好きになる、キッカケはたくさんあったのに。

年に一度だけ、気持ちの蓋を開ける。
年月と共に、中から涌き出る思いは薄れていく。
それが何より辛くて寂しくて……


「オレ、向こうで待って──」
「一緒にいて……お願い……」


ハルクは、私の瞳(め)に溜まった涙を指でぬぐって小さく頷いた。

──初めは、普段のリクの姿が都合よく記憶を塗り替えるように変わっていた。
次に声。
忘れるはずなんかないのに、記憶にあるリクの声と……データとして残っている声が何となく違ってる。
最後に性格。
これも……都合よく塗り替えられていた。
実際、リクの良いところしか知らないんだけど。


「……お待たせ。行こう、ハルク」
「ああ」


歩き出すハルクの腕を慌てて掴む。


「……ばいばい、リク」

 
私のその言葉にハルクは足を止めて振り向いた。


「…………アリス?」
「もう……泣くのはおしまい」


震える声……精一杯、涙を堪えた。



「……らしくねェな、ったく」


そう言うと、ハルクは私を抱き寄せた。


「次は、式の後。その次は子供の報告。そんで──」


ハルクは突然、訳の分からない事をリクのお墓に向かって話し出す。


「今度からは、二人揃って報告書持ってくるからな」


ハルクの言葉の意味を理解して、思わず笑ってしまう。


「な、何だよ」
「リクに告白してるみたいなんだもん」
「そうだけど?」
「え?」
「お前は、オレの気持ち……とっくに知ってんだろ?」
「……知ってる」

私がそういうとハルクが笑って、私もつられて笑った。


「明日かも知んねェし、明後日かも……数日かもだし、数ヶ月……数年かも知んねェけどな」
「──そうだね」


“早くしなよ”
そう言うように、風にそっと背中を押された。





Plastic/Janne Da Arc
END.
(2024.09.07)
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