Gray Brothers.

……違うな……“カグラちゃん”が盾となってくれた。


「……カルロ、どうかした?」
「え?」


たった今までの“弟”とは別人のように……
いや、これがいつもの“弟”。

──そうか。
“弟”が穏やかな時はいつも、傍に“カグラちゃん”がいた。
逆に“弟”が奇行に走る時、“カグラちゃん”が見えない場所にあったり、僕が拒絶していた時……?


「あ、“カグラちゃん”」


“弟”はそっと、僕の腕から“カグラちゃん”を取った。

正直、“カグラちゃん”には誰にも触れてほしくない。
けれど、“弟”を落ち着かせるには“カグラちゃん”が必要なのも事実……

──その夜、夢を見た。
現実だったのかもしれない。
疲労感が見せた幻覚かもしれない。


「カル……ロ……」


僕の膝にちょこんと座って、“カグラちゃん”はお辞儀をした。
恐怖はなく、喜びの感情で満たされた。


「……カグラちゃん」
「…………ア……リス…………」


そう呟くと、“カグラちゃん”の頭部は床に転がった。
僕の満たされた心は一気に冷めた。

“ソレ”を拾って身体とくっつけようとしたが、どういうわけか元に戻らなかった。
──まるでそれを拒んでいるかのような……

“アリス”……“カグラちゃん”は確かにそう言っていた。

震える手を落ち着かせると、“カグラちゃん”はちゃんとくっつき元に戻った。


「アリス……」


僕が呟くと一瞬、“弟”の顔色が変わった気がした。

……気のせい、か?



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