Gray Brothers.
────リ……ス……──
声に目が覚めた。
「…………誰だ、“アイリス”って……」
言葉にして違和感に襲われる。
僕は……彼女を……知っている……
──知っている?
「アイリスって? カルロの女か?」
「…………ゼクス……お前、何で──」
両親が亡くなって、僕は“弟”を引き取り一緒に暮らしていた。
ただ、彼の度々の奇行に悩まされてもいた。
だから、部屋の中に“弟”の部屋を作った。
“弟”は何故か意図も簡単に部屋を抜け出す。
しかも……不思議な事に何も壊れていない。
「……ぼくもアイリスに会いたい」
「…………ごめんね、ゼクス。僕の知り合いじゃないんだ。多分、夢に出てきた美人」
そう言って、“弟”の頭を撫でる。
……嘘ではなかった。
何故なら、“知らない”女の名前だから。
「へえ。カルロは美人が好きなんだ」
「……どうだろうね。気にした事ないから」
初めこそ好みはあったと思う。
けれど、この身体……最低限の付き合いしか出来ない。
“弟”を恨むにも、彼は小さく無力だった。
恨む代わりに“カグラちゃん”に執着するようになっていた。
“カグラちゃん”の服は全て僕が作った。
“着せかえ人形”という意識はなく、一人の女性として扱っていた。
食べれないのは理解しているけど、豪華な食事も全て彼女の為。
彼女が食べた後に僕がそれらを片付(たべ)る。
それらが今の僕に繋がってるんだろうな。
「カルロ、大学は楽しいのか?」
「……普通かな」
「楽しくないのか」
「勉強する場所だからね」
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