Lady Alice III

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なんか温かい。
しかも、一定の間隔で揺れてる。まるで誰かの背中に乗って、歩いているような…。

あと香りがする。香水みたいに強いわけじゃないんだけど、きつい匂いでもない。どちらかというと、落ちつくような…。

でも、この匂い、覚えがあるんだけど、誰だっけ?


誰なのか、確かめようと、私は目を開ける。すると、見覚えのある後ろ姿。茶髪で跳ねた髪、耳にピアスが沢山あった。これは一人しかいない。



「ハルク…」

「起きたのか?まだ寝てていいぞ」

「ハルクがお迎えに来てくれたの?」

「他に迎えに行けるヤツが誰もいなかったからな」


そうなんだ。だから、ハルクが来てくれたんだ。
しかし、おんぶされたのなんて、いつぶりだろう。昔、パパに何度かしてもらったことはあるけれど、最後にしてもらったのは、小学生に上がる前くらいだ。



「お前、具合悪かったの?」

「朝起きた時、いつもと違う気はしたけど、それ以外は何ともなかったから、大丈夫だと思って…」

「授業中にいきなり倒れたって聞いたぞ?あんま無理すんな」


珍しくハルクが私の心配してくれた。いつも意地悪ばっかりなのに、優しいところもあるんだ…。



「心配してくれたんだ…」

「当たり前だろ。いつも元気なヤツが体調悪いなら、心配するだろうが」

「……そっかぁ。ふふっ…」

「アリス?」


ふと周りを見る。
私がいつも見る目線よりも少し高い。ハルクはいつもこの高さから見てるんだ。



「久々におんぶされた。楽しい…」

「楽しいって…。おんぶで喜ぶのお前くらいじゃねェ?リンネは絶対に嫌がるぞ」

「リンネは、子供扱いされるの嫌ってるからね。おんぶも小学生になる前にパパにしてもらったのが最後かな」

「カルロとかにやってもらわなかったのか?」

「おんぶはないよ。だっこなら、やってもらったことはあるけど」

「へぇ…」


ハルクの口調がいつもと比べると、優しい気がする。いつもこうならいいのに…。
そしたら、話しやすいのにな。



「ハルク、今日は優しいね…」

「は?オレはいつも優しいだろ」

「いつも意地悪だよ。今みたいに優しいなら、専属執事になっても、いい…の……に」


気づくと、私はまた夢の中に落ちた。

もうしばらくは起きていたかったのにな。だって、こんなに優しいハルクは今だけだもん。私が元気になったら、またいつもの口が悪いハルクに戻ってしまうから。



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