Lady Alice II
今日は、パパの知り合いの人のパーティーに来ている。結構大きな規模のパーティーで、ここに来ているほとんどの人達がパートナーを同伴させていた。幸い、私とリンネは同伴者がいなくても大丈夫だった。まだ子供だし、ちょっとホッとした。リンネはちょっと不服そうだったけど。
クロノお姉ちゃん、リコリスお姉ちゃん、ラセンお姉ちゃん、エリーゼお姉ちゃんはまだ婚約者がいないため、代わりにうちの執事を連れていた。
「リンネ、なんでそんなに不満な顔してるの?もしかして、パートナーいたの?」
「いるよ。当たり前でしょ」
「え!?」
いるの!?
私なんてパートナーなんて、全然考えてないのに。むしろ同伴者必要なくて、ラッキーって思ってた。
「そんな驚くこと?」
「いや、だって、リンネはまだ9歳でしょ!?」
「まだって何!もう9歳だよ。アリスこそ、パートナーを見つけたら?12歳でしょ?来年から必要になるんだから」
正論過ぎて、言い返せない!これじゃあ、どっちが姉なんだか…。
13歳からはパーティーで同伴者が必要な場合も出てくる。私は婚約者とかいないから、同伴者が必要な時は、カルロやドラにでも頼もうとしか考えていなかった。
「どうせ必要な時は、カルロやドラに頼もうとか考えてたでしょ?」
「そ、そんなことは…!」
「ある。というか、アリスならハルクにでも頼めば?」
「なんでハルクなの!?」
「……。自分で考えたら?」
そう言って、リンネは行ってしまった。冷たい!妹がクール過ぎる…。
会場に入ったものの、話している人達には声をかけられない。だが、知り合いを見つけたから、挨拶だけしに行こうと回ってみることにした。
数十分後。
何とか知り合いの人達に挨拶だけを終えて、私は飲食スペースに来た。だって、歩き回ったら、お腹空いたんだもん。早速、お皿を手に取り、食べたい物をお皿に乗せてく。
「いっただきまーす!」
んー。おいしい!私は食べ終える度に次々と色んな物をお皿に乗せていた。
子供の私にとって、パーティーはあまり面白いものではない。だから、こうして、用意されている食べ物を食べることしか楽しみはない。たまに飲み物しかない時もあった。その時は仕方なく、来ていた人達と会話したけど、話とか全然覚えてないし…。あれは本当に辛かったよ!
でも、今日は当たりだ。特にデザートがおいしい!
しばらくそうして食べていたら、背後から声をかけられた。
「よく食べますね。まるで豚のように…」
「なっ…」
人を豚って…!
振り返ると、そこにはスーツを着たハルクが立っていた。
「ハルク!」
「さっきから見てたけど、食い過ぎ。そんな食ってばっかいるのお前だけだぞ…」
「お腹へったんだもん!」
「ふーん…」
ハルクも皿を手に取り、食べ物をお皿に乗せて、食べる。
「確かにうまい…」
「でしょ!?これとこれが特においしかった!」
「お前のうまいものセンサーにハズレはねェからな」
「どういう意味よ!」
それから何故か私の隣にハルクがいた。ずっと、ずっーとだ。
たまにハルクを見て、声をかけてくる女の人達がいたが、ハルクは私を理由にして断っていたけれど。中には私を睨んできた人もいたし。私、関係ないのに…。
「もう!なんでずっと私の横にいるのよ!リコリスお姉ちゃんの近くにいなさいよ」
「嫌だ。リコリスの傍はやたら人が来るから、面倒なんだよ」
はあ!?あなた、リコリスお姉ちゃんのパートナーとして来たんでしょ!
確かに見てみると、お姉ちゃんの姿が見えないほど、人が集まっていた。しかも、リコリスお姉ちゃんは色々な人達と話しても、堂々としていた。すごい。私はああはなれない…。人には向き不向きあるんだし。
「リコリスからも離れてていいって、許可ももらってんの」
「え、そうなの?お姉ちゃんが…」
「それにリコリスの近くにはカルロもいるから、大丈夫だろ」
「それなら安心だね!ハルクよりカルロの方が頼りになるもん!」
そう言ったら、頭をチョップされた。もうすぐに手が出る。隣のハルクを睨むが、ハルクは知らん顔で飲み物を飲んでいた。
「もうチョップするのやめてよ。すっごく痛いんだから!」
「お前が失礼なことを言うからだろ」
むー。私が嫌なら、どっか行けばいいのに!
すると、横にいるハルクが呆れた顔で私に言う。
「お前、そんなにずっと食べてると太るぞ。運動、まったくしねェんだから」
「いいじゃない。おいしいんだから!それにハルクだって、私よりも食べてるし」
「オレはその分動いてんだよ。お前の場合、本当に豚になっちまうぞ」
「ならないもん!」
「なる!」
そこへリンネがこちらにやって来た。あの子のことだから、挨拶だけでなく、色んな人達と話もしてきたのだろう。
「また喧嘩してる。どこに行っても、喧嘩ばっかして飽きないの?」
「ハルクが喧嘩を売ってくるんだよ!」
「違ェよ!お前が失礼なことばっか言ってくるから」
「同レベルだから仕方ないか。それよりアリス、パーティーに来ている人達と話した?」
「うっ、挨拶はしたもん…」
「挨拶だけじゃなくて、世間話とか…」
「……。苦手なんだもん。知らない人と話すの」
私、社交性ないし。知らない人達と何を話したらいいか、全然わからないし。
「今からでも慣れておかないと、将来、苦労するよ?」
「確かに少しは話せないと厳しいかもな」
「……もうわかったよ!行けばいいんでしょ」
持っていたフォークとお皿を置いて、私はその場を離れる。ハルクとリンネに言われて、渋々、人が集まっている方へ向かう。
歩きながら、話している人達を見る。その中にラセンお姉ちゃんやクロノお姉ちゃん達の姿もあった。お姉ちゃん達、知らない人達と普通に話してる。私、あんな風に出来ない…。言われて来たけど、やっぱりやめようかな。
……うん、やめよう。今日じゃなくてもいいし!ハルク達には適当なこと言って、ごまかそう。
さ、また食べに行こっと。確か、向こうの方にも飲食スペースがあったはずだ。
私が方向転換した時、誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい!」
「フフ、可愛らしいお嬢さんだ…」
「えっ?」
振り返ると、知らないおじさんがいた。
え?誰??全然わかんない。でも、私の名前は知らないみたいだし、知り合いじゃないよね。
「おや、話せないのかな?」
「あの…」
「私のことも誰かわからないのかい?ご両親に聞いてないのかな。一体、どういう教育をされているんだろうね」
「…っ!?」
ニヤッと笑うおじさんに私は怖くなり、その場から走り去り、会場を出た。
怖い。やだ。帰りたい!でも、まだ時間じゃないから帰れないし。
さっきのおじさんがいるから、会場には戻りたくない。パーティーが終わるまでどこかにいよう。
そうだ。テラスに行こう。今ならテラスにいても寒くも暑くもないし。夜空でも見てれば、時間は経つはず。
私は早速、テラスに向かった。すると───
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