Alice the Witch II


※ここからは、会話文になります。


ライがアガットを部屋に連れて、入ったのを確認してから、二人の青年が部屋から出てきた。どちらも猫耳をしていた。彼の使い魔でもあった。



「アガットには申し訳ありませんが、ここは耐えていただきましょうか」

「ああ。今日はきっと八つ当たりに近いだろうな。男だから孕みはしないだろうが」

「少し前にスミレが被害に遭いましたね。心配でしばらく検査キットを買って、毎回チェックしていましたよ。妊娠はしていなかったから、ホッとしていましたね」

「あれの血を引く子供なんて産みたくないと言っていたからな」

「……。それにしても、金色の目を持つ使い魔、ですか」

「お前の目もレアじゃないのかな?カルロくん」

「僕の目も確かにあまりいませんが、金色よりはいますよ」

「いやいや。銀色も他の色に比べれば、全然いないからな。けど、確かに金色はあんまいないよな。絶滅はしてないが、それも時間の問題か」

「ええ。力が強い一方で、魔法使い達から使い魔にしようと狙われていますから。力は強いから、簡単に撃退するでしょう」

「警戒心も強いからな。契約も自分が認めないとしないんだろ?」

「金色の使い魔に強制契約は、効きませんからね。あまり知られていませんが、彼らは特別契約しかしないそうです。合意契約するのも少しはいると思いますけど」

「特別契約って、あれだろ?魔法使いに自分の力を一生捧げるあの重い契約」

「ええ。僕らも出来ます。しかし、その契約にも条件を満たさないと、魔法使いが死んでも使い魔は死なないこともあるらしいです」

「そうなのか?」

「互いに同じ気持ちでなければ、使い魔だけが残されるんですよ。僕の知り合いにもいました。その契約を交わしたにも関わらず、取り残されたのが。今どうしているんだか…」


カルロは窓の外を見た。空は曇っているためか、月は見えない。見えなくて良かったと彼は思っていた。何故なら、月を見ていると、その使い魔の目を思い出すからか、彼は少し悲しい表情をしていた。

もう一人の彼が話を変えようと話し出す。



「そういえば、オーキッドは?全然、姿を見ないんだが」

「彼なら、ライと街に行きましたよ。ですが、ライが一人で帰って来たということは、捨てられたんでしょうね」

「え?」

「ここには、他にも家事をするうさぎがいますからね。ライがいらないと判断したら、即捨てられます。ひどいものですよ」

「アガットみたいに家事が出来る使い魔もいるしな。余計に仕事がない。オーキッドも出来る方ではあるんだがな」

「彼の場合は、ライに愛を求めたせいでしょう。あれにそんなものはないのに…。はあ、僕も捨ててくれないですかね」

「カルロはないな。その銀色の目があるんだから。俺のような色の使い魔は他に見つかれば、オーキッドのように容赦なく捨てられる」

「たまにこの色でなければと何度も思いましたよ。契約を破棄出来るならば、ちゃんと僕のことを考えてくれる魔法使いがいいです」

「そんな魔法使いいるか?物語の中だけじゃないか」

「クルミ。世界は広いんです。必ずどこかにいるはずです。そんなキレイな心を持つ魔法使いが」

「いても、ライ様に負けちまうぜ?あの人、欲しいものには貪欲だからな」

「ですよね。本当にいないですかね」


彼らは、この牢獄のような世界から、逃げたくても逃げられない。契約があるから、離れられないせいで。彼らの主でもあるライは、時に使い魔を性の捌け口にすることもある。二人も先程のアガットのように何度も汚された。ライにとって、自分が一番でそれ以外は見下している節もある。しかし、変に逆らったりはしない。逆らえば、その行為は終わらないからだ。ならば、ただ耐えるしかない。ライが飽きるのを…。

そんな彼らが願うのは、心から尊敬と信頼が出来る優しい魔法使いと契約をすること。使い魔にとって、それが一番の願い。
しかし、今いる魔法使いのほとんどは、ライのように欲にまみれた者が多い。彼らもそれぞれにライの前に契約していた魔法使いがいたが、どちらかといえば、あまり良い人間ではなかった。が、ライに比べればかなりマシだった。

そんな魔法使いに幻滅して、契約しない者も増えているが、魔法使いに見つかり、無理やり契約をされるのが現状でもあった。




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