Alice the Witch I




リクがいなくなって、三ヶ月は経ったのに、私はまだ傷が癒えない。思い出しては泣いてしまう。

やっぱりリクがいないと、私は───



「おい!逃げるな。まだ話は終わってねェぞ!」

「あなた、何でいるの!?」


さっきの黒猫が私のホウキに乗っていた。いつの間について来たの!?



「助けたお礼、もらってねェから!」

「え!?お礼??」

「オレがタダで助けるわけねェし。ほら、早く寄越せ」

「ちょっと!危ないから!家に着いてからにして!」


少ししてから、私の家の屋上に辿り着いて、降りる。私の部屋は最上階。屋上の下。階段で降り、部屋の前に立つ。



「……ここがお前の家?まあ、悪くねェな」

「お礼って何がいいの?」

「何か食いもんくれよ。さっきので力を使ったから、もう腹ぺこ」

「わかったよ。ちょっと待ってて」


私は手をかざして、ドアを開けて、部屋に入る。中に入ってから、黒猫が話しかけてきた。



「お前の部屋、汚いな。床が見えねェじゃん」

「うっ、片付け苦手なんだもん…」

「家事が出来るうさぎはいねェのかよ?」

「いない。今まではリクがやってくれてたから」

「リク?」

「私の使い魔だった子。死んじゃったから」


そのままキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。作り置きしてあるものを取り出して、それを温めるためにレンジに入れた。数分立ってから、取り出して、器によそい、黒猫の前に出す。今度は自分の食べる分をレンジに入れて温めていた。

あれ?猫って、熱いのだめだったよね。だから、リクは温めにしていたけど、この子も同じかな。
慌てて振り返り、出した器を見る。だが、器にあったはずの食べ物は、もうなかった。



「もう食べたの!?熱いの苦手なんじゃ…」

「オレを普通の猫と一緒にすんな。さっさと次の食いもんを寄越せ」

「まだ食べるの!?」

「全然足りねェよ。あ、そこにあるもんも寄越せよな!」

「だめだよ。私のご飯!」

「助けてやっただろ!」


それを言われると弱い!
仕方なく私は、黒猫が満足するまで、食べ物を与え続けた。

しばらくして…。



「はあー。食った食った!満足!」


ペロリと平らげたのか、その猫はリビングのソファーに寝転がっていた。

後片付けは魔法で済ませ、一瞬で終わらせた。本当は料理も魔法を使えば、一瞬なんだけど、私は作る工程が好きだから、その時だけ魔法は使わない。



「あー、こんなに腹いっぱい食ったのは久々だぜ!」

「良かったね…」


私の分だけじゃなく、作り置き分全部食べちゃったせいで、また作らなきゃいけなくなったわ。また食材、買いに行かないと。明日、行こう。

そういえば、あの猫、自分の家に帰らなくていいのかな?そう思い、声をかける。



「ねぇ、あなたは自分の家に帰らなくて…」


声をかけたら、猫はもう寝ていた。早い。誰かの使い魔じゃないのかな?でも、それなら食事はちゃんともらえるはずだし。もしや野良?だけど、金色の目を持っていれば、魔法使いから使い魔になってと誘いは来るはず。

ま、いいか。助けてもらって、お礼は返した。きっと起きたら、勝手にここを出ていくだろう。私は黒猫の身体に軽いストールをかけてあげた。それからバスルームへと向かい、済ませた後、私もすぐに就寝した。




【to be continued…】
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