Alice the Witch I

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あれ?何か静かだ。私の手を掴んでいたはずの感触もない。

ゆっくり目を開けると、私に因縁をつけていた人達は仰向けに倒れていた。それだけではない。近くにいた人達も同じように倒れていた。何で?不思議に思っていたら、黒猫が私の前にいた。

その片耳にはクロスの飾りがついていた。もしかして、この子が助けてくれたの?その猫を見ていたら、猫がこちらに振り返る。金色の瞳をしていた。確か、使い魔にも目の色で力が違うんだよね。一番下から白、黄、橙、桃、赤、茶、緑、青、紫、黒。リクは紫だった。でも、更に強い力を持つのが、銀と金。
それじゃあ、この猫は一番力が強い───



「何ボーっとしてんだよ!このマヌケ!」

「………へ?」


いきなり猫が喋りだした。いや、怒鳴った。
リクは私に怒鳴ったことなんてなかったから、私は驚き、思わず周りを見てしまった。



「お前に言ってんだよ!お前以外にいねェだろ!」

「……」

「聞いてんのかよ!」


何この猫。助けてもらったのはありがたいけど、すっごく偉そう!
見た目は可愛いけど、中身は可愛くない!



「聞いてます!」

「なら、返事しろよ!ノロマ!」


ムカつく!何なのこの猫!頭にくる!でも、この子が助けてくれなかったら、私、今頃は──。恐ろしい想像に思わず身震いをする。助けてもらったのは事実だから、礼を言おう。



「ありがとうございます。あなたに助けられてなかったら、私…」

「ヤられただろうな。ボロボロに朽ち果てて、ここから出られねェまま、死んだぜ。そういうヤツらは沢山見たからな」


予想以上にここはひどいところだったらしい。私、ヤバかったんだ。二度とここに迷い込まないようにしなくちゃ。

でも、見てきたってことは今まで助けなかったんだよね?何で私のこと助けてくれたんだろう。



「あの。どうして、私を助けてくれたんですか?」

「別にたまたまだって。腹へってイライラしてたのもあるし」


そうだよね。第一声も怒鳴って来たし。深い意味はないんだろう。



「てか、お前、魔法使いだろ?力もないわけじゃねェのに、何で使い魔を連れてねェんだよ」

「それは…」


だって、リクは私を庇って、死んでしまったから。つい思い出して、涙が流れた。すると、黒猫も私が泣いたことに驚く。



「お前…」

「っ、ごめんなさい!」


私はホウキを取り出して、そこから飛び去った。



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