Alice the Witch I



“私、魔法使いに向いてないのかな?皆が出来ることが全然出来ない…”


“大丈夫。アリスなら絶対に出来る。アリスのペースでやればいいんだよ…”


“うん…。リクがそう言ってくれるなら頑張る!”


“僕はずっとアリスの味方、だから”





そう言ってくれた一週間後にリクは、亡くなった。

歩いていた私に放たれた攻撃魔法を避けられずにいた時、リクが私を庇ったからだ。


回復魔法をかけても、血は止まらない。それはそうだ。使い魔の力があってこそ、発揮が出来る。その使い魔が瀕死ならば、使えるわけがない。



「やだ!やだよー!リク、死なないでぇえ!!」

「ア……リス…ご…めん…ね……ずっと…き、み……を見守っ…て…いた…かった…」

「喋らないで!すぐに助けてもらえるから!あと少しだけ頑張って!!」

「おわ…か…れだ……アリ…ス……や、さ……し…い…魔法……つか…いに……なっ……て……ね」

「やだー!リク!!」


それが最期となり、二度とリクは動かなくなった。

後から聞いた話だが、私に攻撃魔法をした人はすぐに捕まったらしい。しかし、魔法を使った覚えはないと話しているそうだ。相手は私を知らず、私も相手は知らなかった。
事件はその後、相手が突然死して、捜査は打ち切られてしまった。



それから私は、朝、起きる度にあれは夢なんじゃないかと思い、いつものようにリクがいる場所を見た。いるわけがない。リクは私の目の前で死んでしまったのだから。

でも、リクが死んだことを認めたくなくて、私は現実から目をそらした。

そんな風に過ごして、半年が経った。

部屋から出なくなった私にリコリスお姉ちゃんは、今でも毎日来てくれる。リクが亡くなってすぐの頃、泣いてばかりいた私をただ優しく抱きしめてくれた。

だけど、今は───



「アリス。大切な使い魔が亡くなって悲しいのはわかるわ。でも、いつまでも落ち込んだままではだめよ」

「だけど、リクは初めての私の使い魔だったから!」

「使い魔がいなければ、私達は力がフルに発揮出来ないのよ」

「わかってるよ…」

「必ず見つかるわ。あなたにふさわしい使い魔が」


お姉ちゃんはああ言ってくれたけど、やっぱり私はリク以外の使い魔はいらない。
ずっとリクが傍にいてくれたから、私は魔法使いになれたんだもん。落ちこぼれだけど。


この世界では、使い魔がいることで魔法使いは自身の力を最大限に出せる。しかし、自身の力がなければ、使い魔と契約は出来ない。使い魔の力が強ければ強いほど優位だが、その使い魔に気に入られなければ契約すら出来ない。
合意でも強制でも契約が出来れば、力は使える。だが、長くは持たないけれど。
それと使い魔との相性もある。力がある使い魔と契約をしても、力が身体に合わなければ、拒否を起こすこともある。

私とリクは、相性は悪くなかったように思ったが、リクは時折、苦しそうな顔をしていたこともあった。大丈夫かと聞けば、頷いていたが、本当のところはわからない。



さて、そんな私は今、外にいる。
リコリスお姉ちゃんに「たまには外に行って来なさい。気分転換になるから」と言われて、ホウキで適当な場所に来ていた。
あまり周りも見ずに歩いていた。すると、どこからか声が聞こえてきた。



「お嬢ちゃん。こんなところで何してんだい?一緒に遊んであげようか?」

「……………え」


知らない声。顔を上げると、ニヤニヤして笑っている三人の若い男達がいた。どう見ても、普通の人達でない。
周りを見ても、助けてくれるような人すらいない。目の前にいる彼ら達のようにただ笑っているだけ。

しまった。ここは、治安が良くないところで入ったら最後。五体満足で無事に出られないと聞いたことがあった。リコリスお姉ちゃんからも注意を受けていたのに…。いつもなら絶対に近づかないのに、気づかずに来ちゃったんだ。



「ひひひ。お前、顔が怖いぜ?見ろ。お嬢ちゃんがビビってるぞ」

「つーか、その格好は魔法使いか。見た限り、使い魔はいないみたいだな」

「魔法使いは使い魔がいなきゃ、力をろくに引き出せないんだろ?ここにいるってことは、遊んで欲しいんだろ。可愛がってあげようぜ」

「……っ!?」


怖い。このままじゃあ、私…。しかし、助けてくれる人なんていない。ここは自分で何とかするしかない。後ずさりしながら、鞄の中を漁っても、役に立つアイテムが見つからない。目眩ましのアイテムはあるが、ここでかわせても、別の人達に捕まってしまう可能性もある。

こうなったら、まずは逃げて、隙を見て、飛んで逃げよう。
だが、逃げる前に腕を掴まれてしまった。



「おら、こっち来い!」

「俺達が遊んでやるよ!」

「嫌……放して!」


振り離せない。
やだ!リコリスお姉ちゃん!誰か助けて!!

思わず目を閉じた。



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