Lady Alice X

……………
…………
………
……




そして、車で一時間かけて、リコリスお姉ちゃんと買い物に来た。荷物持ち要員として、ハルクも一緒。駐車場はかなり混んでいて、入るだけでも時間がかかる。これだけ待つのなら、一旦、車は帰らせた方がいいとお姉ちゃんが判断して、屋敷の方に帰ってもらい、帰る頃にまた迎えを頼むことにした。

車から降りて、初めて来るショッピングモール内に入って、沢山ある色々なお店を見て回る。雑貨屋さんに入って、リコリスお姉ちゃんとお揃いの髪留めやアクセサリーを買ってもらった。自分の分は払おうとしたのに、リコリスお姉ちゃんが今日の記念に買ってあげると言って、私のお金を受け取ってくれない。一度ならいいものの、あちこちで買ってくれるので、流石に悪いからって断ると、リコリスお姉ちゃんが泣きそうな顔をする。あれはずるいよ。ハルクに言っても「素直に買ってもらえば」って、言うだけだし。

お昼になり、昼食を取りにレストランに入って、食事した。その後も再び色々なお店を見て回る。
うーん、買ってもらってばかりだし、リコリスお姉ちゃんにお礼がしたい。何か買って渡したい。ふと目にしたお店でリコリスお姉ちゃんに似合いそうなシルバーのブレスレットを見つけた。青い石も入っていて、お姉ちゃんの目の色と同じ。値段も私でも買える金額だ。近くにお姉ちゃんの姿はない。少し離れたところでハルクと話していた。よし。今がチャンスだ。幸い、レジも空いており、私はそのブレスレットを持って、レジに向かう。ついでにラッピングをしてもらった。渡すぞー!

会計を終えて、リコリスお姉ちゃんとハルクの元に戻る。



「アリス。何か買ったの?言ってくれれば、買ってあげたのにー!」

「リコリスお姉ちゃん。これ、私からのお礼」

「え?そんなのいいわよ。私が買ってあげたくて買ったんだから」

「ううん。これはリコリスお姉ちゃんのために買ったから、もらってくれないと、無駄になっちゃうの…」

「アリス。私のために買ってくれたのね。ありがとう。開けてもいい?」

「…うん」


気に入ってもらえるかな?ドキドキする。リコリスお姉ちゃん、ブレスレットはあまりつけないけど、これならシンプルだし、似合うと思ったんだけど。



「ブレスレット…?」

「うん。リコリスお姉ちゃん、ブレスレットあまりつけないけど。それを見つけた時、似合いそうだと思って。石の色も青だし。気に入らなかったら、つけなくても…」


気に入らなかったのかなと私が俯きかけた時、リコリスお姉ちゃんに抱きしめられた。



「……バカね。アリスがくれたものを気に入らないわけないでしょ?私を想ってくれたものなんだから。大事につけるわ。本当にありがとう」

「私も今日買ってもらったものは大事に使うね!」

「ええ。今度はそれらを一緒につけて、出かけましょうね」

「うん!」


私とお姉ちゃんは笑い合った。そこへ今まで黙っていたハルクが口を開く。



「なあ。お前ら、オレのこと忘れて二人の世界に入ってるけど、そろそろ何か食わねェ?腹へった」

「はあくん、空気を読んで欲しいわ」

「ハルク、お邪魔ー!」

「いや、あちこち歩き回されて、荷物を持たされてるオレの身にもなれよ!」


時刻は、3時になるところ。確かにハルクの言う通り、私も疲れたから休みたいかも。



「そうね。休憩しましょうか。丁度近くにカフェがあるから、入りましょう」

「うん!」

「そうと決まれば行くぞ!ほら、リコリス、アリス。早く歩け」


近くのカフェに入り、私達は一時間くらいそこにいた。

夕方になり、そろそろ帰ろうという話になり、ショッピングモールから出ようとしたら、天候が急変していた。晴れていたはずの青い空は厚く暗い雲に覆われてしまい、横殴りの激しい雨が降り、更には強風が吹いていた。
確か、朝の天気予報では明日の朝に台風が上陸すると言っていたのだが、早まったらしい。



「すごい雨ね…」

「うん…」


リコリスお姉ちゃんもこんなに早くに雨が降ると思っていなかったようだ。私達は車でここまで送ってもらったから、傘は持っていなかった。



「カフェ寄らずにあの時に早く帰った方が良かったんじゃねェか?」

「えー!はあくんもカフェに行くの賛成してたじゃない(・ε・`o)」

「そうだ!そうだ!ハルクだって、リコリスお姉ちゃんに「腹へったー。何か食わせろー!」って言ったじゃん!」

「そうよねー!はあくんも同罪よ」

「同罪!」


私はリコリスお姉ちゃんと共にハルクを責めた。バツが悪いのか、ハルクはスマホを取り出した。実はカフェに入ってから、迎えの車を寄越してもらおうと連絡をしたのだが、出なかった。その後に何度かこちらにかかっていたのだが、今度はこちらが気づかずにいた。



「ん?メッセが入ってる」

「誰から?」

「カルロ。すぐに電話してくれって」


メッセを確認したハルクが電話をかける。やりとりを聞いていると、ハルクの表情が変わる。何かあったのかな?



「カルロからだけどさ。迎えの車がこっちに来られねェって」

「え!?何で」

「屋敷の車、何台か車検に出しちまってんだって。戻るのは明日になるらしい。出してなかった他の車もリンネの迎えが終わったタイミングで故障しちまったんだと」

「故障しちゃったの!?」

「それと屋敷近くの道路でも事故があったみてェで、かなり混んでるし、出せる車もないから今日は迎えに行けねェって」

「迎えの車が来ないのなら、タクシーよね。でも、この雨じゃタクシーもなかなか捕まらないわね」


近くにあるタクシー乗り場の方を見る。そこには乗車待ちの人達で行列が出来ていた。今から並んだところで、待つだけでずぶ濡れになってしまいそう。傘もないし。



「そしたら、カルロが近くのホテル予約したから、今日はそこにに泊まれって言ってたぜ。二人からの許可も貰ってある。迎えは、明日連絡してから向かわせるってさ」

「お泊まり。楽しそう!」

「帰れないなら、仕方ないわ。それに明日もお休みだし、そうしましょう!(^_^)/」

「リコリス、お前…」


ハルクがリコリスお姉ちゃんに何か言いたそうにしていたが、お姉ちゃんは私の手を取って、ショッピングモールの中に戻って行く。ハルクもすぐに追いかけてきた。

今日、服はほとんど買っていなかったが、ホテルに泊まるなら、替えの下着とパジャマが必要ということになり、買いに戻った。リコリスお姉ちゃんと私はお揃いのパジャマを買うことにした。流石に下着まではお揃いにはしなかった。リコリスお姉ちゃんは残念がっていたけど。
会計するから、私は先にお店から出ると、ハルクが店の外で既に待っていた。手には私達の購入した紙袋とは、別の袋を持っていた。



「もう買って来たの?」

「下着だけな。お前らみたいにこだわってねェし」

「パジャマとかは買わないの?」

「いらねェよ。一泊だけだし、ホテルにあるヤツを適当に着る」


確かにホテルにも用意はしてあるけど。子供用はないからな。
ハルクの隣でリコリスお姉ちゃんを待っていると、他のお店も台風上陸にともない、閉店作業を始めているところもあった。入口に貼り紙を貼ったり、商品を中に入れたりと店員さんが慌ただしく動いていた。そんな店員さんとは対照的にお客さんは、のんびりしている。もう閉まっちゃうんだーって感じだもん。きっと外の天候が見えてないんだろうな。さっきまで私達もそうだったけど。
そこへ買い物を終えたリコリスお姉ちゃんが戻って来た。



「二人ともお待たせ。さ、ホテルの方に行きましょうか!」

「うん!」


リコリスお姉ちゃんがお店から出て来てからも、そこの店員さん達も閉店作業に取りかかっていた。レジにはまだお客さんがいるけど、手が空いてる人達で商品をしまっていたのが見えた。



「アリス、ホテル着くまで一緒に手を繋ぎましょう!」

「うん!繋ぐ!」


私はリコリスお姉ちゃんと手を繋いで、カルロが予約してくれたというホテルに向かう。幸い、ショッピングモールからホテルに直通している地下通路から、ホテル内に入れた。

受付ロビーでチェックインしようとしたら、ホテルの手違いで部屋は一つしか取れていなかった。もう一つ取ろうにも既に満室らしく、そのお詫びなのだろうか。代わりに一人分の室料・宿泊費は無料となった。そんなわけで、私達は一つの部屋を三人で使うことになった。エレベーターで上がり、泊まる部屋に向かう。

部屋は普通の部屋より広く、バスルームも広かったし、トイレは別。だが、ベッドはキングサイズのベッドが一つしかない。ソファーはあったけど、これはベッドにならないタイプのようだ。



「ハルク、ソファーで寝てね!」

「何でだよ!」

「ベッドは一つしかないもん。私とリコリスお姉ちゃんで使うからだよ」

「こんだけ広ければ、オレ一人増えたって問題ねェだろ!」


ハルクが文句を言ってきたが、ベッドは私とリコリスお姉ちゃんが使うんだから。当然の主張だ。
しかし、リコリスお姉ちゃんは───



.
3/7ページ
スキ