Lady Alice I
30分後。
ショッピングモールに着いて、車を駐車場に停め、中に入った。店内は沢山の客で賑わっていた。家族連れ、恋人同士、友達と様々だった。
「さて、どこから行く?アリス」
「たまには新しいショップに行ってみようよ!来てない間にまたショップ、変わってるし」
「だな。いつものとこも新作は出てるみたいだし、後で寄るか」
「うん!」
やっぱりドラは頼りになるなー。
と、私は後ろを振り返り、ついて来ようとするハルクに言う。
「ハルクは別について来なくていいよ?つまんないだろうから。適当に時間でも潰してて」
「なんでだよ。お前らについてくって。ベンチでずっと待ってるのもつまんねェし、そこにいると女にやたら声をかけられるしさ」
「彼女いないんだし、作れば?」
「バカ。別に困ってねェよ。お前こそ、モテねェんだから、彼氏を作ればいいだろ」
ムカつく!悪かったわね、モテなくて。それに私、リク先生以外に興味ないもん!
「ハルク。素直に一緒に行きたいとか言えねーの?」
「何でオレが…」
「もうこんなの放って行こう!ドラ」
私はドラの手を引いて、エスカレーターのある方に歩き出す。
それからドラと洋服を見て、回った。色々な系統の服があって、迷いそうになったけれど、そこはドラが私に似合う服を選んでくれた。普段着るような服から、着たことのない服まで…。
更に服に合わせる鞄やアクセサリー、靴も一緒に選んでくれた。
その間もハルクはずっとついてきた。たまにふらっといなくなることもあったけど、気づいたら戻って来てるし。
ドラやハルクにも荷物を持ってもらいながらも、私は満足する買い物が出来た。
「欲しい服、沢山買えたー!他にもアクセや鞄、靴とかも。もうドラがいなかったら、途方にくれてたよ!付き合ってくれて、ありがとう!」
「ははっ、礼はいいって。オレも見てて、楽しかったし。自分のも買えたからさ」
「マジで疲れたー。オレに労いの言葉はねェわけ?」
「ないわよ?ハルクは邪魔しに来ただけじゃない!」
ショップで服を見ていた時、ハルクは私に似合わないような服をすすめてきたのだ。しかも、露出が高い服ばかり!私、こういうの着ないし。
あと飾られてる下着とかを見ながら、私に「お前、お子様パンツばっかだよなー。こういうの着けても全然色気なさそう」とか「胸もまっ平だし、ブラも出来ねェか」なんて言ってくるし。セクハラだ!使用人が私に対して、セクハラしてくる。頭きたから、言われる度にハルクの足を踏んづけたけど。本当にハルクはデリカシーがないんだから。
「ドラ。お腹空いたし、何か食べてから帰ろう」
「上のフロアにレストラン街があったから、そこに行くか」
「賛成!」
「そうと決まったなら、さっさと歩け。アリス!腹へったのはお前だけじゃねェからな」
「もう押さないでよ!ハルク」
その後、三人でレストランに入って、食事をした。
私が食べていると、横からちょいちょい奪われた。なんで私のところから取るのかしらね。何度も取らないでと言っても、「食うのが遅いから」って言ってくるし。そりゃハルクに比べたら、遅いわよ!ドラはそんなハルクに呆れていたけど。
食べ終えて、少し休んでいると、ドラのスマホに屋敷の誰かから連絡があったみたいで、「ちょっとかけてくるわ」とドラが席を外した。
私はふと気になったことを思い出し、隣にいるハルクに話しかけた。
「ハルクって、リコリスお姉ちゃんの専属じゃないの?」
「オレがリコリスの専属?ない、それはない!」
「仲は良いよね?よくお姉ちゃんに呼ばれてるし」
「ここにいて長いし、アイツとは同い年だからな。リコリスも言いやすいんじゃねェの?」
「本当にー?それだけ?」
「ねェよ。てか、リコリスの専属になったら、オレ、間違いなく殺されるしな。それだけは勘弁」
「殺される?誰に…」
「タスクさん。あの人、リコリスのことがマジで好きだから」
タスク?
ああ、よくリコリスお姉ちゃんと話してる人だ。顔を赤くしながらも、嬉しそうにしてて、私も影ながら応援してた。気持ちはわかるもん!
でも、あの人、私にはからかってくるんだよね。何故なの!私はからかっても面白くないのに。
「そんなこと聞いて来るってことは、アレか?オレに専属になって欲しいのか?アリス」
「ううん。それは絶対にない。専属にするなら、ドラかカルロがいい!」
「……」
「痛っ!何するのよ…」
無言でハルクにチョップされた。なんで私がチョップされないと行けないのよ!わけわかんないし。そこへドラが戻ってきた。
「ハルク、お前がクロノの買い物から逃げたじゃん?」
「ん、ああ。誰が代わりに犠牲になった?」
何か嬉しそうね。本来は自分が行くはずだったのに。
「最初近くにいたカルロを連れて行こうとしたらしいけど、たまたまライがうちに来てたみたいで、クロノはライを連れて行ったってさ」
「帰ったら、カルロにグチグチ言われるな。ライを差し出したのも自分が行きたくねェからだろ?」
「そうだろうな。カルロ、クロノのことは苦手みたいだし。体を触る手つきが気持ち悪いって言ってたな」
え、カルロ、体に触られるの嫌だったんだ。知らなかった!私、よく抱きついちゃってた。今もたまに…。
「どうした?アリス。泣きそうな顔して」
「昔からよくカルロに抱きついたことあるけど、私も嫌だったのかなーって。悪いことしちゃった…」
「いや、お前はガキだから大丈夫だろ。きっと下心あるのとないのの差じゃねェ?」
「下心??」
「カルロ、アリスには甘いからなー。下の妹組にばっか甘やかしてるし」
「てか、お前さ、リクが好きって言いながら、他の男に抱きついてんのかよ…」
「リク先生には出来ないもん」
そりゃ出来たら、抱きつきたいけど。
リク先生にしたら、ドキドキして、普通でいられないよ。
「じゃあ、カルロにする意味は?」
「カルロは、私にはお兄ちゃんみたいな存在だからだよ。でも、ハルクには絶対に抱きついたりしないから安心して!……痛っ!」
もうなんでハルクは私に意地悪してくるの?今もおでこにデコピンされたし。こんな優しくない人に抱きつくわけないじゃん。
「ハルク、大人げねー」
「本当だよ!全然優しくない!」
「バーカ。優しい大人ばっかじゃねェって、教えてあげてんだよ!」
私の周りで優しくないのは、ハルクだけだし!私が嫌いなら、なんで部屋に来たりするのかしら。わけわかんない。
それから私達は屋敷へと帰って来た。
帰ってくるなり、ハルクはカルロに捕まり、どこかへ連れて行かれたけど。「助けろ!」って叫んでいたけど、私とドラは手を振って見送った。
ドラに部屋まで荷物を運んでもらってから、礼を言って別れた。買った服などをクローゼットにしまって、私は部屋を出る。
向かった先は、リコリスお姉ちゃんのところだ。ドアをノックして、声をかけると返事があり、私はドアを開けた。
「リコリスお姉ちゃん、今いい?」
「ええ、大丈夫よ。どうしたの?」
「今度のお休みに一緒にお菓子作りしたい」
「ちょっと待ってね」
お姉ちゃんがスケジュール帳をパラパラとめくる。やっぱり予定が入ってるのかな?久々にお姉ちゃんと過ごしたいのに…。
「次のおやすみなら大丈夫。空いてるわよ。久しぶりにアリスと一緒に過ごせるわ」
「本当!?」
「ええ。二人で作って、お父さん達にあげましょうか?」
「うん!!リコリスお姉ちゃん、大好き!」
嬉しくて、リコリスお姉ちゃんに抱きつく。すると、お姉ちゃんも抱きしめてくれた。いい匂い。リコリスお姉ちゃんの傍は落ちつく。ずっと傍にいたいくらいだ。
「リコリスお姉ちゃん、約束だからね!」
「約束するわ」
私はお姉ちゃんに手を振って、部屋を出た。ちょっとして振り返ると、リコリスお姉ちゃんはドアのところから手を振ってくれてたから、私も振り返した。
良かった!次のおやすみは、リコリスお姉ちゃんとお菓子作りが出来る。早く来ないかな。
私は廊下をスキップしながら、自分の部屋に戻って行った。
.