Lady Alice Ⅷ




バレンタイン当日。
お父さんやお世話になっているシゲさん達にチョコを渡すと、皆が喜んでもらってくれた。あとは、はあくんとタスクさんね。

はあくんは、相変わらずアリスを怒らせているままで、もらえていないようだ。素直にちょうだいって言えばいいのに…。アリスからチョコをもらっていたカルロやドラを見ては、羨ましいのかアリスの背後から物凄く睨んでいた。
しかも、チョコを渡し歩くアリスにずっとくっついて回っていたからか、アリスに「もうついて来ないで!」と怒鳴られ、暗い顔で私の部屋に来た。
きっとリクさんに渡しに行くのに、はあくんが邪魔だったと思うのよね。そこは空気を読めなかったのか、わざと読まなかったのか。



「はあくん…」

「……」

「はい。私からのバレンタインチョコよ。これ食べて、元気をだして!」

「ん、ありがと」


受け取るなり、はあくんは私があげたチョコを食べ始める。これは重症ね…。



「はあくん。タスクさんって、今どこにいるかわかる?チョコを渡したいんだけど」

「タスクさん?あの人なら、今は休憩じゃねェか。使用人の休憩室にいると思うぜ」

「そう。わかったわ。ありがとう」


用意したチョコを持ち、部屋を出て、使用人の人達が使う休憩室に向かう。本来、はあくんもここを使うはずが、全然行かないのよね。大体がアリスの部屋か私の部屋に来るのよ。私は別に構わないけど、アリスが少し不満なのか、はあくんにいつも文句言ってるけど、利かないし。
いつだったか、鍵かけて入れないようにしてたけど、はあくん、何故かアリスの部屋の鍵を持ってたのよね。あれは、ちょっと問いつめないといけない案件よね。私でも合鍵は持ってないのに!

そんなことを考えていたら、休憩室に到着したので、ドアをノックする。すると、中から使用人の子が出てきた。



「リコリス様!?どうしたんですか!?」

「突然、ごめんなさい。タスクさんはいらっしゃるかしら?」

「ちょっと待ってください。……タスク!」


何だか驚かせちゃったみたいね。休憩室内も何かバタバタと音がしてるし。私、普段はここには来ないせいよね。
廊下で待っていると、タスクさんが慌てて出てきた。



「リコリス様!?ど、どうしたんですか?」

「こんにちは。はあくんから事情を聞きまして。良かったら、これをどうぞ」


包装されたチョコを差し出す。タスクさんは、私の顔とチョコを見比べ、驚きの声を上げる。



「え、オレに!?……いいんですか?」

「はい。食べてください。それでは、私は部屋に帰りますね」


そう言い、そこから離れようとすると、タスクさんから呼び止められる。



「あの!」

「はい?」

「ありがとうございます!すげー嬉しいです!大事に食べます!」

「ふふっ。喜んでくれたなら、良かったです」

「!?」


あんなに喜んでくれるとは思わなかったわ。来年も渡そうかしらね。
さて、これでチョコは渡し終わったわ!

部屋に帰ると、何か良い匂いがした。甘い香り。チョコレートかしら?
……って、あら?はあくんがいない。代わりにクロッカスが部屋に帰って来ていた。



「お帰りなさいませ。リコリス様」

「クロッカス。何かチョコレートの匂いがするけど、一体…」


私の机の上にガトーショコラが置いてある。料理長が作ってくれたのかしら?
不思議に思って、首を傾げていると、クロッカスが言った。



「それは、アリス様からです。先程お越しになられたのですが、リコリス様がいなかったので、これらを渡してくださいと」

「え!?アリスからなの!連絡してくれたら、良かったのに…」

「どうやってですか?リコリス様のスマホは、ここに置いてありますよ」


そうだった!持ち歩いていなかったわ。
急いでアリスのところに行こうとしたら、クロッカスに止められた。



「リコリス様。アリス様は出かけて行きましたので、今部屋に行ってもいませんよ」

「えー…。いつ帰るか聞いてくれた?」

「夕方には帰るそうです」


残念。帰ったら、お礼を言いに行かなくちゃ!
さ、早速アリスお手製のガトーショコラを食べましょう。座って、フォークを手にして、ガトーショコラを一口食べる。



「おいしい。腕を上げたわね。アリス…」

「ええ、おいしかったです」


……ん?おいしかったです??思わずクロッカスを見る(¬_¬)



「何を驚いているんですか?私もアリス様にいただきましたから」

「私よりも先に食べたの!?」

「ええ、アリス様から一緒に食べましょうと言われましたから。リコリス様に悪いと思いながらも、お先にいただきました」

「ずるい!ずーるーい!(O゚皿゚O)私の天使とお茶会するなんて」

「ずるくありません。いなかったリコリス様が悪いので」


言い返せない!
そう言いながらも、クロッカスが紅茶を淹れてくれた。私だって、一緒に食べたかったわよー。
でも、アリスが私にもチョコを用意してくれてたことが嬉しかったからいいの!( *´艸`)



「ガトーショコラは、奥様、リコリス様、私…あとはアガットだけのようですよ」

「そうなの?」

「はい。他の姉妹の方達には、ガトーショコラではなく、チョコチップクッキーを渡していましたから」


特別!なんて良い響きなのかしら。お母さんやクロッカス、アガットもいるけど、私も特別なものにしてくれたのね!アリス用に渡すチョコも用意しているけど、変えようかしら。これじゃあ、私の愛が伝わらないわ!



「アリスに何かお返ししなくちゃね!ホワイトデー用に」

「用意したものは、渡さないんですか?」

「これだと愛が足りないのよ!」

「足りなくはありませんよ。むしろ、過剰です」

「えー。そうかしら?」


私としては、全然足りないくらいよ?もっともっと愛を伝えたい。アリスへの気持ちを…。



「ですから、ほどほどにしてくださいね。リコリス様」

「ほどほど?どういう意味よ!」

「リコリス様のことですから、ちゃんと止めないと、アリス様が大変困るような愛の重いもので返しそうなので」


読まれてるし!
私、そんなにわかりやすいかしら?いえ、わかりづらいはずよ。
年中一緒にいるクロッカスだからわかったのかもしれないわね。



夕方、アリスが帰って来たと聞いたので、早速お礼を言いに行ったら、アリスは「良かったー」って、喜んでいた。もう私の天使が可愛い!思わずアリスに抱きついてしまった。最高!(人*´∀`)

だけど、ちょっとして、アガットに引き剥がされたのよ!おのれー。私とアリスの幸せ時間を邪魔してー((ヾ(≧皿≦メ)ノ))
アガットと私が睨み合っていたら、アリスが「二人は仲良しなんだね!」って、キラキラした目で言って来た時は、ちょっとダメージを受けたわ。アガットもナンとも言えない顔をしていたし。


でも、最高のバレンタインデーだったわ!




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