Lady Alice Ⅷ




2月のとある日曜日。
昼食も終えて、静かなはずのキッチンから物音がした。気になって、覗いてみると、髪を結わき、エプロンをつけたアリスがいた。何やらボールやお玉などを準備していた。何か作るのかしら?

……っ、アリスが可愛い(ノ≧▽≦)ノそのエプロン姿に鼻血が出そうになった。
まずいわ。こんなところをアリスに見られたら、私のイメージが崩れてしまう!でも、可愛いものは可愛いのよ!それよりも、どうして今スマホを持っていないの。持っていたら、写真を撮れたのに!悔しいわ(≧口≦)ノ

思わず壁を叩いてしまった。すると、その音でアリスが私に気づく。



「リコリスお姉ちゃん。どうしたの?」

「物音したから、誰かいるのかと思って覗いたのよ。それよりもアリスがキッチンにいるなんて、珍しいわね」


自分の行動をスルーして、私はにこやかに返す。
天使が私に話しかけてきた。何を着ても似合う!似合うわー!私も同じエプロンを探そうかしら?それともお揃いのを買って、アリスと一緒に着る?いいわね!アガットの前で自慢したいわ!
……と内心で考えながら、アリスと話す。



「え、それは…」

「もしかして、そろそろバレンタインデーだから、チョコでも作るの?」


何て軽く口にしたら、アリスの顔が真っ赤になった。嘘でしょ!?Σ( ̄ロ ̄lll)



「……うん」

「だ、誰にあげるの!?」

「…………………………リク、せんせい…」


小さな声でアリスが言った。
わかってた!わかっていたけれど!!リクさんが憎い!私の天使から、本命チョコをもらえるなんて。
小さくてもいいから、私にもチョコをくれないかしら。よし。探りを入れなくちゃ( ´_ゝ`)



「他には誰にあげるの?」

「パパ。あとはカルロ、ドラとシゲさん達にもお世話になってるからあげようと思ってるんだ」

「そうなのね」


私は入ってないの!?アリスー!
ん?メンバーを聞いて、誰かが足りないような気がする…(゜ロ゜)あ、はあくんだわ。



「はあくんにチョコはあげないの?」

「ハルクにはあげない!少し前にバレンタインチョコを作ろうかなって話になった時、私に何て言ったと思う?「お前が作るチョコはまずそうだよな」って言ったんだよ!?そんなこと言う人なんかに絶対あげないもん!」


珍しく怒ったアリスを見て、怒った顔も可愛いと思いながらも、はあくんのことを考えた。
はあくん、本当に素直じゃないわね。アリスにだけは素直に欲しいって言えないから、つい照れ隠しで意地悪を言ったんでしょうけど(# ̄З ̄)



「アリスお嬢様。材料、持って来ましたよ。……あれ、リコリス様じゃないですか」

「アガット…」


私とアリスが楽しく話しているところにチョコの材料を抱えたアガットが入って来た。まさか、アガットと一緒に作るの?だから、私を誘ってくれなかったのー。いつもなら、私を誘ってくれていたのに。おのれー!アガット!!((ヾ(≧皿≦メ)ノ))



「ありがとう。それじゃあ、チョコ作り始めよう!」

「はい。リコリス様。部屋に戻らなくていいのですか?さっき、クロッカスが部屋に戻って来ないと嘆いてましたが」


あ、そうだったわ。書斎に本を戻すと言って、出たっきりだった。そろそろ戻らないと。まだレポートも残っていたままだし。レポートなんかなければ、ここでアリスとお菓子作りが出来たのに!



「お嬢様と私は、これからチョコ作りを致しますので、お引き取りを」

「え、ちょっと!」


アガットによって、キッチンから追い出された!
ここは、レポートよりアリスよね(*>∀<*)ノ私もアリスとチョコ作りに参加しよう!アリスといられるなら、そっちが最優先!
私は、ドアの外から声をかける。だって、入ろうとしたら、鍵がかかってるのよ!?もうアガットの仕業ね( ;゚皿゚)ノシ
アリスは私に対して、こんな意地悪はしないもの。



「アリス。私もチョコ作りを手伝うわ」

「ううん。大丈夫!アガットがいるから。気持ちだけもらうね!」

「そんな…」

「リコリス様。私がお嬢様のお手伝いしますので。ご安心を。チョコ作りは妹達とよくやっていますから、慣れております」

「……」


アガットったら、絶対に勝ち誇った顔してるわね!きー!私の天使を独占して!アリスのお付きだから、私よりも長く一緒にいるんだから。少しは譲りなさいよー!(≧□≦)

仕方なく、私は自分の部屋に帰るしかなくなった。


部屋に戻ると、クロッカスはいなかった。代わりにはあくんがいた。どうやらクロッカスは、別仕事で呼ばれたため、丁度部屋に来たはあくんに伝言を頼んだようだ。
私は、レポートをやりながら、キッチンでアリスとアガットがチョコ作りを始めたことを話した。



「はあくん、聞いて!アガットにアリスを取られたの!この気持ち、わかってくれるわよね!?」

「いや、わかんねェし」

「アリスと一緒にチョコ作りがしたかったー!もう悔しい!」


私もアリスが作ったチョコを食べたい。失敗したのでもいいから。でも、おねだりなんか出来ないわ。こういう時、クロノ姉さんが羨ましいわね。



「数日前からリクに作るんだーって、バレンタイン関連のレシピ本を沢山読んでたからな。アイツ。いつもは少女漫画や小説ばっか読むのに」

「そうなの?リクさん以外にも渡すみたいだけど、はあくんにはチョコないみたいよ。さっき、はあくんにだけは絶対にあげないって怒っていたから」

「まだ怒ってんのかよ。根に持つな…」


アリスからもらえないとわかって、少し寂しそうなはあくん。素直に言えば良かったのに…。



「アリスに欲しいって、ハッキリ言わないとくれないわよ」

「別にそこまで欲しいわけじゃねェよ。アイツがくれるって言うなら、仕方なくもらってやるだけ…」

「そう言うわりに、勝手にもらえると思っていたでしょ?アリスは素直な子だから、あげないと思ったら、本当に渡さないわよ」


図星だったのか、はあくんは黙ってしまった。ちょっと意地悪を言い過ぎたかしら?でも、事実だしね。私もアリスからもらえないんだから(o;д;)o



「オレのことよりも!リコリスは、誰かにバレンタインはあげるのか?」

「私?そうね。お父さんといつも運転をしてくれるシゲさん達くらいかしらね。今年は作る暇がなかったから、既製品のだけど。もう買ってあるから、当日に渡すだけよ」

「そ、そうか…」


はあくんの反応に私は、何かが引っかかった。何か変ね。いつもこんなことは、聞いて来ないのに…。



「なあに?はあくん。私からチョコが欲しかったの?大丈夫よ。はあくんのは、毎年あげているんだから、ちゃんと買ってあるわよ!」

「オレじゃねェよ」


え、はあくんじゃない?はあくんの場合、欲しいならちゃんと言うわよね。他に誰が…?
……。
困ったわ。全然、思い当たらないわね(;゜゜)



「実は、リコリスのチョコが欲しいって言ってる人がいんだよ。でも、あんまり親しくねェから、遠慮してるというか…」

「誰?」

「あー。それは本人が名乗り出たくねェと言ってて…」

「えー。誰かわからないと、用意出来ないわよ?」


本当は余分に買っているから、あげられなくはないけど。でも、誰が私のチョコを欲しがっているのだろうか。
すると、はあくんが観念したのか、「オレが言ったって、絶対に言うなよ?」と口にしながら、教えてくれた。



「タスクさん」

「タスク、さん?……ああ!あのおとなしい人ね」


一昨年くらいに入って来た人で、はあくんを交えて、何度か話したことはある。二人きりで話したこともあるものの、まだそこまで親しくはない。
意外に口数が少ないのよ、タスクさんって。いつだったか、アリスとは楽しそうに話しているのは見たから、仲良くなれば話してくれる気はするけれど。だって、私の天使とは楽しそうだったんだから。思わずジェラったわ…(ФωФ)私の天使に対して、ちょっと、いえ、かなり馴れ馴れしいんじゃないかしらって…(`ε´ )



「タスクさん、全然おとなしくねェけどな。いや、リコリスの前ではそんなようなもんか…」

「アリスとは楽しそうに話していたわよ!それを見て、嫉妬したんだから!」

「どっちに?」

「そんなの決まっているでしょ!私は常にアリスを独占したいの!」

「……やっぱりそっちか。過激派のリコリスが推しであるアリスに嫉妬するわけねェもんな。タスクさんはもっと頑張らないと、恋人なんて…」

「はあくん、何か言った?」

「……何でもねェ」


その後は、はあくんとお喋りしながら、レポートを終わらせた。急いでアリスのいるキッチンに駆け込んだが、既に作り終わったのか、アリスもアガットもキッチンにはいなかった。
遅かったわ…(´TωT`)
ガックリと肩を落としながら、部屋に戻った。



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