Lady Alice Ⅵ- III
翌朝。
私が目を覚ますと、リコリスお姉ちゃんと目が合った。
「おはよう。アリス。眠れた?」
「おはよう。うん!眠れたよ」
「良かったわ」
お姉ちゃん、いつから起きていたんだろう?私がいつの間にか腕を枕にしていたから、ベッドから起き上がれなかったみたいだし。
「お姉ちゃん、ごめんね。腕、痺れてない?重かったよね?」
「大丈夫よ。アリスは優しいわね」
「リコリスお姉ちゃんの方が優しいよ」
いつも私に気遣ってくれるし。
リコリスお姉ちゃんが先にベッドから出ようとした時、私は後ろから抱きついた。
「!!……っ、アリス…?」
「リコリスお姉ちゃん、大好き」
私はその言葉を伝えた。
ふと隣のベッドを見れば、ハルクの姿はベッドになかった。もう部屋に戻ったのかもしれない。荷物とかは、あっちだろうから。
それから支度をして、皆で朝食を取った。私は気づかなかったが、昨日の夜に雪が降って、そのまま積もったようだ。クラリス達と雪で遊んでいたら、クラリスのところの執事のウィルさん達数人が来てくれた。その中にハルクもいたけど。
「アリス。久しぶり」
「ウィルさん、お久しぶりです!昨日は挨拶出来なくて、すみません。お元気でしたか?」
「昨日は着いたばかりだったから、仕方ないさ。こっちも元気だよ。アリスも元気そうだね」
「はい!!」
ウィルさん……名前は、ウィスタリア・クオーツという。穏やかで優しいおにいさんみたいな人。クラリスの家の執事で、遊びに行く度によく顔を合わせるから、私は普通に話せる。だけど、他の4人は顔を真っ赤にして、全然話さない。挨拶しかしてないんじゃないかな。
ウィルさんがクラリスのところに行ってしまうと、他の友達が私に小声で話しかけてきた。
「(アリスちゃん、何でウィスタリアさんと普通に話せるの!)」
「(え?だって、クラリスの家で会ってるし。ハルクと違って、すごく優しいよ!)」
「(優しいのはわかるけど、イケメン過ぎて無理だよ!)」
「(ハルクさんも優しいわよ!でも、やっぱりかっこいいから話せない!)」
「(えー。クラリスも普通に話してたよ?)」
「(私達には無理だから!)」
「(そう。話せないよ)」
「(もう見てるだけでいい…)」
えー。ウィルさんなら、ちゃんと話してくれるよ。ハルクと違って。ちなみにハルクは他の執事さん達と話しているのが見えた。
というか、昨日からずっと私の傍にハルクがいるような気がする。しばしハルクを見ていたら、私の視線に気づいたのか、他の人達から離れて、ハルクが私の方にやって来た。
「何だよ」
「ハルク、仕事ないの?」
「あんまねェな。手伝おうとしても、ここの使用人達がみーんなやっちまうし」
「そうなんだ。そういえば、カルロは?」
「アイツは他の使用人達と仲良くなって、お喋りしてるぜ」
カルロ、誰とでも仲良く話せるのに、何でウィルさんとは仲悪いんだろう。不思議だな。今度、理由を聞いてみよう。
「リコリスお姉ちゃんのところは、行かないの?」
「リコリス達、今日は勉強会してるからな。それにオレはリコリス達から、ある任務を頼まれてるんだよ。ほら、こっち向け」
スマホを向けられ、ついポーズを取ると、ハルクが何枚か撮ってくれた。
というか、任務って何??
「ねぇ、半目じゃなかった?」
「平気だって。アイツらはお前の写真なら何でも喜ぶから。送らないと、さっきからやかましくてさ…」
「アイツら?やかましい??」
「……」
ハルクは一体、誰に送ってるの?尋ねてみても、教えてくれなかった。
【to be continued…】
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