Lady Alice I
日曜日。
これから、街に買い物に行く。数日前にドラに頼んだら、即OKが出た。これで強力な助っ人をゲット!可愛い服を沢山買うんだー。
ドラが玄関口に車を停車させ、私はその車に乗り込む。すると、私達の車の前に赤い車が止まっていたが、運転席には誰もいない。
でも、あの車は確か…
「ドラ。あの車って…」
「クロノだぜ」
そう答えるドラは、ニヤニヤと笑っていた。
クロノお姉ちゃんは、私の八つ上の姉。20歳。使用人達の間では、一番の問題児らしい。パパがクロノお姉ちゃんのことで、たまに頭を抱えているのを見たことがあるし、いつも温厚なカルロでさえも「出来るならば関わりたくないですね、クロノ様は」とため息つきながら言っていた。
私には普通に優しくて面白いお姉ちゃんだけどな。
「クロノお姉ちゃんもどこか行くんだ」
「クロノも買い物だって行ってたなー。昨日、お気にの男に服をプレゼントするから、執事のヤツらが集まる部屋に来て、「誰かついて来い」って、来たからさ。予定ないヤツ達が全員でジャンケンして、負けたのがハルク。そのうち来るんじゃねー?」
「そうなんだ。お気の毒~」
「顔が笑ってるぜ、アリス」
「だって、ハルクだし。クロノお姉ちゃんにどんどんこき使われればいいよ!」
ドラと一緒に笑っていたら、車に誰かが乗り込んで来た。そこにいたのは、噂のハルクだった。
「あー、助かった…」
「ちょっと、なんでハルクがこの車に乗るのよ!間違えてるわよ。クロノお姉ちゃんの車はあっち!」
「お前らも買い物に行くんだろ?」
「行くけど、ハルクはクロノとだろ?」
「間違えてアリスの車に乗り込んだってことにすれば、オレはクロノの買い物に行かなくて済む。ということで、さっさと出発しようぜ!クロノが戻る前にな」
「ハルク!あなた、クロノお姉ちゃんと一緒に買い物に行くんでしょ!今すぐ降りて」
「勘弁してくれよ。クロノと買い物なんて行ったら、合法的に痴漢されんだぞ?他人にベタベタと自分の体を触られたくねェ」
「それは同感。オレも嫌だ」
そんなにクロノお姉ちゃんとの買い物は嫌なの?よくわからないなー。
てか、痴漢って、女の人が男の人にされることじゃないの?なんでハルクがされるのかしら。クロノお姉ちゃん、そんなに飢えていたっけ?いやいや、ない。お姉ちゃん、色んな男の人といるからな。真面目そうな人から、チャラチャラした人、ムキムキな体の………ん!?
気づくと、車は動き出していた。ハルクを乗せたまま。後ろを見ると、クロノお姉ちゃんが丁度、車に戻ってきたところだった。
「ドラ。ハルクが乗ったままだよ!」
「ハルク。これ、貸しだからな?近いうちに返せよ」
「サンキュ、ドラ。助かった!」
私を置いて、男二人で話をつけてるし。だから、なんで!?
更に二人は会話を続けていた。
「前にクロノの買い物に付き合ったヤツらの話を聞くと、クロノ、結構際どいところまで触ってくるらしいぜ?」
「やっぱりな。それが狙いだろ?アイツは…」
「▽▽がクロノにあそこを触られながら、「お前、小さいな」って言われたらしいぜ?しばらくショックで寝込んだってさ」
「マジかよ。最悪じゃん!逃げて正解だわ、オレ」
「え?サイズが合った服かどうかを確かめるとかじゃないの?」
なんで体を触るの?クロノお姉ちゃんは。しかも、際どいところって、どこ?てか、何が小さいの??
「違ェよ。クロノは服を着せるだけが目的じゃねェんだよ。着せて、体にフィットしてるかどうか確かめるとか言って、連れて行ったヤツの体をあちこち触んだよ。それが目的で、執事を連れて買い物に来させんだよ」
「付き添ってくれたお礼に下着を買ってくれるらしいけど、セクシーな下着だって。完全にクロノの趣味だから、ライでもない限り絶対に履かないだろうな」
「うわっ、絶対にいらねェ!その下着」
「てか、履いてるかクロノにチェックされんじゃね?」
「セクシーな下着…??」
どういう下着なんだろう?女の人のならわかるんだけど。クロノお姉ちゃん、結構スケスケだったり、生地の面積が少ないような下着をつけてるし。胸も結構大きいのに、すごいのよね…。ラセンお姉ちゃんもそれに近いようなのつけてたことあったな。
「ま、お子様のアリスにはまだわからねェ世界だろうな」
「いや、アリスはそのままでいろよ。間違ってもクロノみたくなるなよ?」
「数日前にもカルロにそのままでいてって、言われた」
「お前ら姉妹は、個性強いのが多いからな…。お前くらいじゃねェ?一番扱いやすいのは」
む、なんかバカにされたような気がする!
ハルクを睨んだら、髪をぐしゃぐしゃにされた。
「やめてよ!今日はせっかくリコリスお姉ちゃんに髪をやってもらったのに…」
「リコリスに?だから、アイツ、やけに機嫌が良かったのか…」
「そうなの?どこか出かけるからじゃないの??」
「今日は出かけないはずだぜ。ここに来る前に会ったけど、今日は家にいるって言ってたから」
珍しいな。リコリスお姉ちゃんが家にいるのって。ここしばらくは、土日はいつも予定入ってばかりで家にはいなかったから。
また一緒にお菓子作り、したいな。帰ってみたら、聞いてみようかな?
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