Lady Alice Ⅵ- III




そして、クラリスの別荘に着いた。
別荘は、おとぎ話に出てくるような建物になっていて、私のテンションが上がった!



「素敵!こんなところに泊まれるんだー!」

「良かったわね。アリス」

「うん!……あ。アガットに着いたって、報告しよ」


私はスマホを取り出して、別荘を背景に自撮りにした。それをアガットのメッセに送ると、すぐに返信があった。“到着されたんですね。こちらも実家に着きました”というコメントと共に画像が送られて、アガット達の妹達が映っていた。

可愛い!その画像を見て、つい笑みが溢れた。いいなー。こんな可愛い妹達がいて、私も欲しかった。何回か会って遊んだことあるけど、みんな素直で可愛かった。「アリスお姉ちゃん」って呼んでくれてさ。私にも一人いるけど、生意気なんだもん!私のことを下に見てるし。

すると、近くでカシャカシャと音が聞こえて、顔を上げると、リコリスお姉ちゃんもスマホで別荘を撮っていた。お姉ちゃんもクロッカスに送るのかな?……そう思いながら、見ていたら、リコリスお姉ちゃんと目が合った。思わず笑ったら、何故かお姉ちゃんが胸を押さえていた。どうかしたのかな?近くにいたハルクに聞いてみる。



「ハルク。リコリスお姉ちゃんは大丈夫?胸を押さえてるみたいだけど」

「あー。ちょっと放っておいてやれ。直に治っから」

「??……わかった…」


それから荷物を持って、別荘の玄関前に来た。そこにあるインターフォンをカルロが押すと、すぐにドアが開く。出てきたのは、クラリスのところの執事長さん。リコリスお姉ちゃんやカルロが頭を下げていたから、私も同じようにした。それから執事長さんがカルロと会話していたら、ハルクを連れて、中に入って行く。私とリコリスお姉ちゃんは、また別の執事さんが来て、その人の後について行くことになった。

案内された部屋は広くて、立派なソファーや暖炉があった。すると、執事さんは「ここでお待ちください」と言って、出て行ってしまった。
その直後、廊下から誰かの足音がパタパタと聞こえ、勢い良くドアが開いた。やってきたのは───



「リコピー!」


クラリスのお姉さんであるセシリアさんがリコリスお姉ちゃんに抱きつく。お姉ちゃんは嫌がることもせず、笑っていた。本当に嫌なら、さりげなく抱きつかせないようにするもんね。



「あら、セシリア。随分と熱烈な歓迎ね」

「だって、まだ他の子達来てないんだもん!うちの車以外、なかったでしょ?」

「あら、そういえばそうね」


確かに駐車場には、私達の車以外に三台置いてあったが、どれもクラリスの家の車だった。



「準備は早々に出来てるから、ずっと暇で寂しくて!リコピーが一番最初に来てくれて良かったよー!」

「それは良かったわ」


随分と仲が良いみたい。むーっとしながら二人を見ていたら、セシリアさんが私に気づく。



「あららん。ワンダーちゃん。おひさ!」

「お久しぶりです。セシリアさん」


リコリスお姉ちゃんは、私のお姉ちゃんなのにベタベタしてー。ちょっとくっつきすぎじゃないの!



「ふふふ。ワンダーちゃんったら、ヤキモチ?可愛いー!」

「違います!」

「いいのよ!わかってるから!ワンダーちゃんったら、本当にリコピーが大好きなんだから」


ヤキモチじゃないもん!
もうこの人、苦手!クラリスのお姉ちゃんだし、リコリスお姉ちゃんのお友達だけど、あんまり関わり合いたくない。



「もうセシリア。妹をからかわないであげて。それより、私達の部屋を案内して欲しいわ」

「リコピーにそう言われたなら、仕方ない。案内するね!」


私とリコリスお姉ちゃんは、セシリアさんに案内されることになった。部屋に向かう途中、前を歩く私はセシリアさんに尋ねる。



「あの、クラリスは?」

「あの子は、今ちょっと手が離せなくてね。ワンダーちゃんが来てることは知ってるから、そのうち来るよん」

「そうですか…」


スマホを見ると、クラリスから少し前にメッセが来ていた。“アリス。ごめんね!終わったら、すぐにそっちに行くから”とあったから、わかったというスタンプだけ送った。

部屋に着いて、荷物を置き、羽織っていたコートをクローゼットにしまう。
セシリアさんは、私とリコリスお姉ちゃんを部屋に案内すると、先に戻ってしまった。どうやら他の友達も別荘に到着したらしい。



「荷物は置いたし、下に行こう!リコリスお姉ちゃん」

「待って。アリス」

「何?」

「ちょっとこっち来て」


そう言われ、向かう。すると、お姉ちゃんが私を前に向かせた。



「髪が少し乱れてるから、直してあげる」

「ありがとう…」


リコリスお姉ちゃんが私の髪を直してくれた。良かった。皆の前で恥をかくところだった。



「……はい、出来たわ」

「ありがとう!リコリスお姉ちゃん」

「ふふっ、どういたしまして」


なんかリコリスお姉ちゃん、楽しそうに笑ってる。いいことでもあったのかな?





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