Lady Alice Ⅵ- II




「アリスお嬢様、起きてください」

「むにゃ…もうちょっと」

「寝てていいんですか?今日からクラリス様の別荘に行くのではないですか?」


そう言われて、目が覚め、慌てて起き上がる。
ベッド横で私のお世話をしてくれるメイドのアガットがいた。私と目が合うなり、ニコッと笑う。



「おはようございます。お嬢様」

「おはよう!アガット」

「早く支度しないと、皆さんを待たせてしまいますよ」

「わかった!」


それからベッドから飛び出して、洗面所に向かう。トイレを済ませ、歯磨きをして、顔を洗ってから、再び部屋に戻って来る。

部屋では、アガットが今日着ていく服を何点かコーディネートしてくれた。アガットが用意してくれるものは、私の好みに合うものばかりで、毎回迷ってしまう。



「お嬢様、今日はどの服にいたしますか?」

「うーん……これにする!」


真ん中にあった赤系統の服を選ぶ。普段あまり赤は着ないけど、今日はクリスマスだしね。緑でもいいけど、クラリス辺りが着てそうな気もするし。



「わかりました。では、これに着替えましょう」

「はーい!」


すぐにパジャマから、その服に着替えた。
着替えの後は、髪をやってもらう。たまにはやらないような髪型でもいいよね。



「アガット。ハーフアップにして!」

「いいですよ」


そう言って、アガットは私の髪を素早く丁寧にやってくれた。鏡を見たら、私が思っていたよりも可愛い髪型になっていた。



「可愛い!ありがとう!」

「どういたしまして。今回は一緒に行けませんが、楽しいからといって、皆さんに迷惑をかけてはダメですよ?」

「わかってるよー。もうアガットは心配症なんだから」

「心配にもなりますよ。お嬢様は猪のように真っ直ぐにしか行けないんですから」


アガットから見たら、私、そんな感じなの?



「壁にぶつかっても、ものともせず、更に突っ込んで行く姿は大変面白いです。でも、それがアリス様らしいのですが」

「褒めてないでしょ!」

「これでも褒めてるんですよ」

「本当かな…。じゃあ、行って来る!早いけど、よいお年を」

「行ってらっしゃいませ。よいお年を」


荷物を持って、アガットに見送られ、部屋を出た。

鼻歌混じりで廊下を歩いていたら、玄関付近でリコリスお姉ちゃんの後ろ姿を見つけて、駆け寄る。



「おはよう!リコリスお姉ちゃん!」

「おはよう。アリス。朝から元気ね」

「うん!だって、今日から別荘に行くんだもん!楽しみでなかなか寝れなかったから、危うく寝過ごすところだった」

「ふふっ、私もよ。なかなか起きれなくて、クロッカスに怒られちゃったわ」


リコリスお姉ちゃんでも、そんなことあるんだ。意外。

お姉ちゃんの格好を見て、私はうっとりした。だって、キレイなんだもん!白のコート、千鳥格子柄のストール、黒のパンツに低めの黒ブーツ。お姉ちゃんにしては少し色味が地味だけど、逆に大人っぽくて素敵。私もこういう服装が似合う大人になりたい…。

二人で話しながら、玄関口に向かうと、既に車が待機していて、カルロが待っていた。服もいつもの執事服ではなく、私服。服はモノトーン系統でロングコートを羽織っていた。私達の姿にすぐに気づいて、こちらに近寄って、挨拶してくれた。



「おはようございます。リコリス様、アリス」

「おはよう!」

「おはようございます。今日からよろしくお願いしますね」

「はい。では、荷物をトランクに入れますので、こちらに渡してください」


私達の荷物を渡して、それをカルロがトランクに詰め込んだ。



「朝はどこかで食べてこう!お腹空いたー。」

「そうね。こんな朝早くだから、どこかやってるところに入りましょう」

「行く途中にアリスの好きなレストランがありましたから、そこにしましょう。大きい店舗なので、車も停められますから」

「やったー!早く行こう!」

「あ、アリス!前を…」


浮かれていた私は、何かにぶつかった。痛い。



「もっと周りを見ろ。バカ」

「その声は…。そっちが急に出て来たからでしょ!」

「あら、はあくん…」


何故かハルクがいた。
私服を来ていたから、一瞬、誰かわからなかった。執事服に見慣れていたから、変な感じ。着てる服も黒系統だし。髪も結んでないし。手には少し大きな鞄を持っていた。



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