Lady Alice Ⅴ




アリスがいなくて、四日が経過した頃、今度はカルロが塞ぎ込んでいた。カルロは違うよな?でも、この様子からして、リコリスと同じ雰囲気を感じる。

そんなリコリスは今、スマホでアリスが泊まっているホテル付近のホテルを探してる。いや、もうオレにはリコリスを止めるのは無理。諦めた。

自販機で飲み物を買ってから、カルロの方に近づく。



「どうしたんだ?カルロ」

「もう耐えられない…。早く帰って来ませんかね、アリスは」

「お前もかよ…」


呆れながらも、横のイスに座る。持っていた紙パックのジュースにストローを差し込み、飲む。



「今までこんなにしんどいと思いませんでした。改めて、感じましたよ。アリスの存在は癒しだった」

「カルロにもリコリスの病気が移ったのか?」

「リコリス様の気持ちはわかりますよ。僕、一部の姉妹達に手を焼いて、疲れてるんです。もう嫌だ。特に長女…。あの人の存在は僕にとってはストレスです」


クロノか。
アイツ、容赦なくセクハラまがいなことするからな。カルロは真面目だから、クロノとは水と油みたいなモンだし。いつだったか、クロノがカルロをからかうのが楽しいとか言ってたんだよな。



「リンネは子供扱いすると、すぐ怒りますし。だって、まだ子供だから仕方ないじゃないですか。アリスは喜んでくれますよ!?」

「アリスはリンネよりも中身はガキだからな」

「エリーゼ様は相変わらずセンスがひどい服で出かけようとするから、慌てて止めましたよ。デートだというのに、あの服はないです!いくら相手が何を着ても喜んでくれるからって…!」


今度はエリーゼか。
アイツ、彼氏がいるから、よく出かけてるけど、センスがマジでヤバイんだよな。ほとんどの使用人達、アリス達でもアイツの着る服はヤバイって言ってんだぞ?アイツの彼氏はどういう気持ちで見てるんだ?
おそらく普通じゃねェんだろうな、ソイツも。



「ラセン様は屋敷内を薄着で彷徨こうとするから、見かける度に何度も注意しても利かないし。僕のことを口やかましい爺だって言うんですよ!僕はまだ二十歳なのに…」

「ラセンのあれは良くねェな。流石に…」


よく廊下で見かけると、ほとんどが下着に近い格好をしてるな。クロノも似たことしてるけど、ラセンは見せたいというより、暑がりだから着たくねェんだろうな。
しかも、オレの姿を見ると、あの姿で抱きついてくんだよな…。腕とかに胸が当たるし。たまにラセンのことが好きな使用人に羨ましがられる。オレだって、何で気に入られてるかわかんねェよ。



「カルロ。つまりはアリスとリコリス以外のヤツらに振り回されてるわけか」

「アリスとリコリス様は、比較的に困らせることはしないですからね。だから、アリスがたまにワガママ言っても叶えてあげようってなります。しかし、あの二人以外は扱いが大変で面倒で、もう僕が病みそうですよ!」


本音が出てるぞ。
まあ、カルロがそこまで言うってことは、相当ストレスがたまってるんだろう。

何か意外にアリスいねェと、あちこちで支障が出て来てるな。アリスが帰るまで、あと一日はある。

カルロも少しはオレに愚痴ったからなのか、楽になったのか、仕事に向かって行った。やっぱ真面目だな、アイツも。










夜にリコリスのところに行けば、相変わらず沈んでいる。日に日にヤバくなって来てんな。




「……アリスはまだ?はあくん…」

「明日になんねェと帰って来ないぞ、アリスは」

「えー。まだなの…。はあくん、今からアリスのところに行って、アリスを連れ帰って来て」

「それ、誘拐犯じゃねェか!誰がやるか」

「アリスに会いたい。抱きしめたい!帰って来たら、アリスから絶対に離れないんだから!」


シスコンも度が過ぎるとやべェな。しかし、このままだと支障が出る。……仕方ねェ。オレはスマホを取り出して、電話をかける。すると、すぐに相手は出た。



「よお。修学旅行は楽しんでるか?」

『うん!楽しいよー!』


アリスの声が聞こえたのか、リコリスが勢い良く顔を上げた。しかも、目で早く代わってと圧をかけてくる。怖ェ。その顔を見たら、アリスが怯えるぞ。



「ちょっと待ってろ。今リコリスと代わるから」

『うん』


スマホをリコリスに渡す。リコリスはスマホを受け取ると、さっきまで死にかけていたような顔をしていたのに、いつの間にか元気を取り戻したようで…。



『リコリスお姉ちゃん!』

「アリス!修学旅行はどう?楽しい?」

『うん!楽しいよ。明日、帰るから!お土産を沢山買ったんだ!お姉ちゃんにも買ってあるの。明日渡すね。旅行であったことを沢山お話しするから、リコリスお姉ちゃん、聞いてくれる?』

「勿論よ。絶対に時間を作るわ!」

『ありがとう!あ、そろそろお風呂に行かなくちゃいけないんだ。お姉ちゃん、切るね。おやすみなさい』

「おやすみ。アリス…」


そこで通話は終わった。リコリスはオレにスマホを返してくれた。



「はあくん」

「ん?」

「アリスが天使だった…」

「……良かったな」


リコリスが両手を合わせながら、そう言った。この姿は絶対に見せられねェよな。リコリスのこと、すげー憧れてるヤツらからしたら、ショック受けるに違いないし。
オレからしたら、これがリコリスなんだけどな。





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