Collabo Maid




「迷子?」

「迷子じゃないもん!」

「迷子以外ねェだろ!現に一緒に来たヤツとはぐれてんだから」

「あなた、ひどいことばっかり言うのね!そんなことばっかり言ってると、好きな人に嫌われちゃうんだからね!」

「き、嫌われてねェし!」

「私だったら、嫌いになるもん!そんなひどいことしか言わない人なんて、絶対好きにならない!」

「……っ…!」


何故か、男の子は泣きそうな顔になり、それ以上は何も言わなくなった。しかも、私から離れて、タスクに似た男の子のところに行ってしまった。



「お前、バカだね。何でそんな言い方しか出来ないわけ…」

「……だって」

「本人じゃなくても、ダメージは相当だったんじゃない?同じ顔した相手から嫌いなんて言われたから」

「うちにいるアリスよりかは、ハッキリ言うよね。これが大人と子供の差じゃね?」

「でも、うちにいるアリスも結構ハッキリしてるよ。リク以外には塩対応だし…」

「それ、カルロだけじゃね?アリス、オレには優しいよ」

「オレもからかう時あるけど、そこまで塩じゃねェよ。カルロは、よくアリスをからかってるからじゃん?」

「というか、アリスは年下には甘かったんだった。忘れてたよ…」


何やらカルロ、タスク、ドラに似た人達が何か小声で話していたが、私にはよくわからなかった。すると、リク先生に似たおにいさんが尋ねた。



「君のところにドラがいるの?」

「はい。カルロもタスクもハルクもドラもうちの使用人なんです」

「うちの兄弟、僕以外は使用人なんだ。それは面白いね。ところで、君にきょうだいは?」

「7人姉妹です。上にお姉ちゃんが5人いて、下に妹が1人います」

「全員女性なんだ。うちと反対だね」


リク先生に似たおにいさんがにこっと笑ってくれた。このおにいさん、本当に素敵!

二人で話していたら、カルロに似たおにいさんがこちらにやって来た。他の三人も一緒に。ハルクに似た男の子が私を見ていたが、私は見ないように横を向いた。



「それよりライは、来てないの?あとはライだけなんだけどね」

「来てないね。LIMEしたけど、既読にもなってないし」

「またナンパでもしてるんじゃね?アイツ、気に入ったのを見ると、すぐ声をかけるから。男女関係なくね」

「そうかもね。あの顔だから、意外について行っちゃう子が多いんだよ」


彼らの話す“ライ”も彼らの兄弟なんだろう。
知り合いとまったく同じ名前に私は、密かにげんなりしていた。ライって名前も皆に迷惑かけてばかりなのね。



「カルロこそ、ここに座っている時、やたら女に声かけられてたじゃん。オレが来る前も声かけられてたよね?」

「断っても、次々来るんだよ。タスクが戻って来てくれてもさ、なかなか引いてくれなくてね…。アリス(この子)が来てからは、来なくなってホッとしてるよ」


ナンパか。顔が良いと大変なんだな…。
そういえば、街によく出かけた時、カルロやハルクとかも、女の人に声をかけられていたような…?リコリスお姉ちゃんも男の人に声をかけられるから、ハルクが傍にいたな。



「さて。ライは待っても来ないだろうから、場所を変えようか?」

「てか、腹へった!」

「そうだね。食事でもしようか?この子もいることだし」

「アリスちゃん。お腹、空いてる?」

「す、空いてませ…」


リク先生に似たおにいさんに聞かれて、私は答えた。しかし、途中、私のお腹の鳴る音が先に聞こえてしまった。私のお腹、空気を読んで!



「お前も腹へってんじゃん!」

「違うもん!これは…」

「はいはい。言い合ってないで、レストランに行くよ」


上の階にレストラン街があるので、エレベーターで向かった。目的の階に着くと、休日の昼間なせいか、かなり混んでいた。

案内まで時間があるため、私はリク先生と一緒に迷子センターに向かうことになった。もしかしたら、カルロがここに来てるかもしれない。だが、確認してもらったが、来ていないと言われた。しかし、この後に来るかもしれないからと、私を預かっているということ、リク先生の携帯番号を書いたメモを渡してくれるように係の人に頼んだ。



「あとは連絡を待つだけだね。それまで僕達と一緒で大丈夫?アリスちゃん」

「はい。ここで一人待つよりは…」


チラッと迷子センターの方を見ると、私より幼い子達が泣いてたり、遊んでいたりと騒がしかった。流石にカルロが来るまでここにいるのは恥ずかしい。それならリク先生に似たおにいさん達と一緒にいる方がいい。悪い人達には見えないし。知り合いに似てるのもあるから。



「わかった。うちの兄や弟達に何か言われたら、すぐに言って。僕が守るから」

「ありがとうございます!」


頼もしい!リク先生に似てるけど、ちょっと違う。でも、いいな…。

レストランの方に戻ると、他の人達はまだお店の外のイスに座っていた。なかなか空かないんだね。



「どうだった?リク」

「来てなかったから、来た場合に僕の連絡先を書いたメモを渡してくれるように頼んできたよ。それまで彼女も一緒だから」


カルロに似たおにいさんが私の方を向き、聞いてくる。



「イスに座る?座りたいなら、代わるよ?」

「大丈夫!」


私は断った。それにその隣には、ハルクに似た男の子も座っていたから…。一瞬、目が合ったけど、私はすぐにそらした。



「なかなか案内されないんだね」

「これでも他よりは早い方だよ。他は全然動いてないところもあるし」

「そうなの?」

「そうそう。あそこのお店は、オレ達が来た時から全然動いてねェし」


そこは中華料理店みたいだが、なかなか動かないのか、離れてしまう人達も結構いた。今が一番混んでる時間だもんね。

しばらく待っていたら、ようやく店員さんに呼ばれて、席に案内された。
少し人数がいるからか、広い席に案内された。私はリク先生とカルロの間に座ることになった。



「アリスは何食べたい?」

「これ!」


メニューを一通りめくってから、あるページのものを指さす。



「どうして、これなの?」

「こないだリコリスお姉ちゃんと出かけた時、一口もらったら、すごくおいしかったから!」

「リコリス、お姉ちゃん…?」

「二番目のお姉ちゃん。優しくて、キレイなの!私の憧れのお姉ちゃんで、私もあんな風になりたいんだー!」

「無理、無理。お前がなれるわけねェじゃん!」

「なるもん!うちにいるハルクと同じこと言ったー!」

「オレも“ハルク”だし」

「ハルクって、デリカシーない人ばっかり!」


本当にやだ!
すると、タスクに似た男の子が尋ねてきた。



「なあ、どんな人?写真ある?」

「あるよ!」


私はパスケースに入ってる写真を取り出して、見せた。夏の家族旅行に行った時に二人でお揃いの服を着て、撮った写真だ。



「そっくりだね、リコリス嬢に」

「キレイ!美人!マジでリコリスだし!オレのリコリスも成長したら、こんな風になるのか…!」

「リコリスお姉ちゃんと同じ名前?」

「そうだよ。うちのタスクの婚約者なんだ」


リコリスお姉ちゃんの婚約者はいないけど、うちにいるタスクはお姉ちゃんのこと、好きなんだよね。うちの方とは全然違うな。あ、でも。



「うちだとリコリスお姉ちゃんは、タスクよりもハルクとの方が仲良いんですよ」

「……………は?」

「嫌な予感がする…」

「アリス、それマジ?」

「うん。一時期、恋人なのかって疑われてたし。私もそう思ってた!だって、一緒にいることが多いんだもん」


タスクに似た男の子がギロリと隣に座るハルクに似た男の子を見る。というか、睨んでいた。



「ハールークー!」

「タスク兄!オレじゃねェから!」

「わかってっけど、お前も最初はオレよりもリコリスと仲良かっただろ」

「それは向こうから話しかけられたからだよ。同い年なのもあるから」


その光景は、うちでもよく見る。タスクがハルクによくリコリスお姉ちゃんとのことで、よく絡んでいるから。つい笑ってしまった。





【to be continued…】
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