Small Halloween





ハロウィン当日。

リコリスの部屋で髪をやってあげていると、アガットからママが私を呼んでいると伝えられた。リコリスの髪のセットは終わったから、衣装を着せるのは、クロッカスに任せて、私はママの部屋に向かうことにした。

部屋に入ると、衣装が用意されていた。しかも、二人分。一着は私のだろう。だが、もう一着は?



「アリス。衣装を用意したわ!これならリコリスと一緒に行けるわよ」

「あ、うん。ありがとう…」


どうやらわざわざ衣装を買ってくれたらしい。取り合えず、ママに渡された衣装を手に取る。真っ黒のワンピースだが、腕の部分は少し透けている。全体的に黒だが、可愛いく作られていた。ストライプのタイツとヒールの少し高い黒のブーツまでも用意されている。



「ママ、これは何?」

「これは、ウエストにつけるりぼんなの!可愛いでしょ!」


大きめのモノトーンのストライプ。タイツの柄とは少し違う。確かに可愛いけど…。私に似合うかどうかはまた違うんだよ。

それにしても、この衣装。
どう考えても、あの猫耳に似合う衣装なんだけど。もう一着もそうだ。黒のワイシャツに黒のベスト。ズボンは、モノトーンのストライプ柄。靴も黒だけど。こっちも私よりは、小さいがストラップのりぼんが付属されてる。

というか、この衣装って、ハルクにピッタリのサイズじゃない。靴のサイズもそうだし。何気にペアルックでは??何で!?



「ママ。こっちの衣装は誰が着るの?」

「勿論、ハルくんよ!」

「何でハルクのまで!?」

「アリスの衣装がないから、探して頼んだのよ。そしたら、丁度、お揃いになるような衣装を見つけたから、ハルくんのも買っちゃった!セットだと安かったから」

「ハルクは一緒に行かないよ…」

「あら、そうなの?二人だけでは心配だから、ついて行ってくれるって頼んだら、ハルくんは了承してくれたわよ」


聞いてないし。でも、だからって、ハルクとペアルックはない…。私が頭を抱えていると、ドアをノックする音。ママが返事すると、入って来たのはハルクだった。



「失礼します。ヒナギク様、オレに何か……え、アリス??」

「ハルくん。早速で悪いけれど、この衣装を着てくれないかしら?」


そう言い、ママはもう一つの衣装をハルクに渡して着替えるように促す。



「え?衣装…」

「そこにカーテンがあるから、着替えられるでしょう?これはハルくんのために用意したんだから!着てくれるわよね?」

「わ、わかりました…」


ママの勢いに押されて、ハルクは衣装を手にして、カーテンを閉めて、着替え始めた。ハルクもママには弱いんだよね。うちでは、ママが一番強いから。



「アリスは、私のクローゼットの方で着替えなさい」

「うん…」


そう言われたので、衣装を手にクローゼットに向かった。ママのクローゼット、キレイに整頓されてる上にかなり広い。沢山の服や小物が置いてあるし。ママに似合うものばっかりだ。私もこういうのが似合う大人になりたい。
……見てる場合じゃない。着替えなくちゃ!


私が着替えると、既に着替え終わったハルクがいた。だが、ママに髪をいじられているようだ。ママ、器用だからな。

しばし見ていたら、終わったらしく、ハルクが立ち上がる。ちょっといつもと違い過ぎない!?全然、雰囲気が違うよ!かっこよく見えるよ!あのハルクが。私、目がおかしくなったかな??

衣装を着て、髪もやってもらったせいか、仮装じゃなくて、芸能人みたいなんだけど!ハルク、顔だけはいいからな。私の友達も皆、うちに来る度にニヤニヤするし。



「あら、アリス。着替え終わったのね!声をかけてくれたら良かったのに!似合うじゃない!」

「そうかな?サイズはピッタリだけど」

「ハルくんもそう思わない!?」

「え…まあ、いつもよりはマシじゃないですか…」


それ、どういう意味!?
外見はいつもと違っても、中身は変わってないじゃない!
ハルクが私を褒めるわけないし。



「アリスも衣装に髪型が似合うようにしなくちゃね!ここに座って!」

「うん…」

「ハルくん、リコリスを迎えに行ってあげて。部屋でアリスが来てくれるのを待ってるだろうけど、アリスは行けないから、後からすぐ行くからと伝えてね」

「わかりました」


そう言われ、ハルクは部屋を出る。私はさっきまでハルクが座っていたイスに座る。



「アリス、何自信をなくしてるの?」

「だって、私、可愛くないもん。この衣装だって、私じゃ着こなせないよ…」

「大丈夫。アリスは可愛いわよ。私の娘なんだから。自信を持ちなさい!」


そう言われても、自信なんて持てないよ。ハルクを見たら、余計に…。俯く私にママは肩に手を置く。



「もう!私が魔法をかけてあげるわ。しばらく目を瞑ってなさい。いいって言うまで開けちゃダメよ?」

「………わかった」


ママに言われて、私は目を瞑る。



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