Licoris's Daily Life




「おはようございます。リコリス様。お時間です。起きてください」

「……」


朝、鍵を開けて部屋に入って来たのは、リコリスのお付きメイドであるクロッカスだ。彼女がカーテンを開けながら、ベッドで寝ているリコリスに声をかける。
しかし、リコリスは返事をしない。そんなリコリスに慣れているのか、クロッカスはベッドに近づく。

リコリスは、布団をかぶっていた。クロッカスが部屋に入った時にはかぶっていなかった。おそらくカーテンを開けた時に眩しくて、かぶったのだろう。



「リコリス様。朝です」

「無理よ。ベッドから出られないわ。まだ眠いんだもの…」


布団の中から、リコリスがそう答えた。いつもの聞きわけの良さは、どこへ行ったのだろうか?

アリスと一緒に寝た場合、アリスの前では、自分のイメージを壊したくないからと頑張って起きているのである。
だが、実はリコリスはかなり朝が弱くて、なかなか起きられない。アラームも30分早くに鳴らすが、まったく起きない。見かねたクロッカスがリコリスを起こすのが日課でもある。しかし、このリコリスを起こすのは、毎回大変でもあった。



「リコリス様!いい加減、起きてください!朝ですよ!学校に遅刻しますよ!」

「まだ寝る。眠いのよ。瞼が開かない。だから、今日は休むわ…」

「何を言ってるんですか!アリス様に嫌われてもいいんですか!」

「き、嫌われる!?」


クロッカスの言葉にリコリスが青ざめる。想像豊かな彼女は、考えてしまったのだろう。


“えー。朝もちゃんと起きれないの?リコリスお姉ちゃんのこと、見損なった!嫌い!”


「いやあああ!天使に嫌われたら、私の生きる意味を失ってしまう!すぐに起きるわ!!」

「……おはようございます」

「おはよう」


あんなに出たがらなかったベッドから飛び起きた。リコリスを起こすスイッチは、彼女の溺愛する妹のアリス。妹の名前を出せば、リコリスは百発百中で起きる。

その後、クロッカスが手伝いながら、すばやく支度をして、リコリスは一人部屋を出る。向かう先は、ダイニング。そこでは、朝夜と家族が揃って、食事をする。揃わない時もあるが、用がない限りはほぼ一緒に食事することになっている。



「おはようございます」

「おはようございます。リコリス様」


ダイニングに来ると、リコリスが挨拶し、使用人の者達がリコリスに頭を下げる。テーブルには、既に両親、妹達が揃っており、リコリスは皆に挨拶する。妹達の顔を見ながら、内心で喜んでいた。皆、今日も可愛いわ。

彼女が自分の席につくと、二つの席が空いていた。一つは姉のクロノだ。クロノがいないのは、今日に限ったことではない。朝に来ること自体が少ないのである。夜も朝に比べれば、いる方だが、それでも数えられるくらいだ。

そして、もう一つ空いているのは、リコリスの溺愛する妹のアリスの席だ。



(え、アリスがいないわ(゜Д゜≡゜Д゜)?どうしたのかしら?まだ部屋なの?部屋に寄れば良かった…)


そう考えていた時、アリスの部屋の隣であるリンネに声をかけてみる。もしかしたら、歳の近い妹なら、事情を知っているかもしれないと。



「リンネ。アリスはまだなのかしら?」

「アリスなら、先に行っちゃったよ。今日は日直なんだって」

「そうなの?」

(何ですって!?せっかくアリスに会えると思っていたのに…!)


内心ショックを受ける。そこへ食事が運ばれてきたので、リコリスは無言で食べ始めた。



(はあー。アリスの顔を見てから、学校に行きたかったわ。朝から私の癒し時間がないなんて…。アリスー!(´Д`))




.
1/3ページ
スキ