Oshikatsu




【side リコリス】

「はあ…」

「どうしたんだよ?ため息なんかついて」

「つきたくもなるわ。最近、アリスがお菓子を一緒に食べてくれないのよ…o(T◇T o)」

「あー。食べても、低カロリーの身体に良い菓子ばっかだな」

今日も私が用意したお菓子は断られてしまい、代わりにはあくんがパクパクと食べていた。無駄になるよりはいいけれど。
でも、はあくんはちょっと食べ過ぎよ!遠慮して。


「アガットが言うには、やけに切羽詰まった表情で痩せなくちゃいけないとか言ってたらしいぞ」

「ええ!?誰かに太ってると言われたのかしら!」

「前にお菓子ばっか食ってるアリスにブタになるぞとは、何度か言ったことあるな」

「はあくん…(*`ω´*)」

私ははあくんを思いっきり睨む。はあくんがひどいことを言ったせいで、私は天使とのティータイムが出来ないのね!


「オレが言ったって、ダイエットするタイプじゃねェだろ!」

「そう言われるとそうね…。それなら、どうして突然、痩せなきゃいけないってなったのかしら?」

「ソレが原因らしいぞ」

「え?」

はあくんが私の腕に抱えるぬいぐるみを指差す。アリスを元に作られたキャラクターのアリーナ。私が鞄につけたことで、同じ学園の子達が「これ、どこで買ったんですか」と聞かれて、作ってもらったと答えた。そしたら、皆が欲しいと騒ぎ出し、何故か問い合わせが殺到し、グッズが作られると、飛ぶように売れた。今では若い女の子達に注目を浴びるようになり、今度はうちの系列ビルで、オンリーショップがやることまで決まっていた。


「そのモデルが自分だということを知ったって」

「え!知ってしまったの!?」

「ショックを受けて、運動を始めたんじゃねェかって、カルロが言ってたな」

ショックを受けた!?どうして!アリスは今のままでも、充分可愛いのに…。

その後、アリスの元へ行き、「今のままで充分可愛いわよ!」と説得しに行ったのだが、アリスは「私はリコリスお姉ちゃんを目指してるの!」と言われてしまい、それ以上は言えなかった。
アリスが無茶しようとしても、傍にはアガットがいるから、無理なこともさせないだろうし。今はアリスのやりたいことをさせてあげよう。


数日後。

私は、自室の机で絵を書いていた。これは、学園の勉強ではない。新たなキャラクターを生み出そうと悩んでいた。

そろそろアリーナちゃん以外のキャラクターを出してはどうかと言われてたのよね。アリーナちゃんはアリスだから。
あ、私なんて、どうかしら?お姉ちゃんだし、アリーナちゃんの姉キャラを出す。私は絵を描いてみた。……よし。これでいいか、連絡しましょう!

連絡すれば、すぐに返事が来たが、却下された!何で!向こうの人は男の子を出してみてはどうかと提案してきた。またやり直しだ。女の子でいいじゃないの!もう(>д<)ノ

それにしても男の子、か…。うちには若い男性が勤めているから、モデルになりそうな人を探してみましょう。私は部屋を出て、探しに行く。

屋敷内を歩くと、何人かとすれ違うが、なかなかモデルになりそうな人は見つからない。というか、アリスと並べるのだから、似合う人を探さないと。あ、アリーナちゃんね!

そんな時、窓から外を見れば、ドラとカルロさんを見つけた。あら、あの二人なら、どうだろうか。

ドラはモデルにしやすそうね…。でも、アリス(アリーナちゃん)と並べると、ちょっと色合いが物足りないわね。
カルロさんもアリスと並べると、髪色は対照的でいい。だけど、兄妹みたくなるわね。難しいわ…。


「リコリス様、どうかされたんですか?」

「あ、タスクさん。ちょっと気分転換に屋敷内を回っているんです」

流石にアリス(アリーナちゃん)の相手になる人を探しているとは言えない。はっΣ(゚Д゚)タスクさんはどうかしら?

タスクさんを見つめる。うーん、惜しいわ。タスクさんもいいけれど、何か足りないのよ!


「あの、リコリス様…?オレの顔に何かついてますか?」

「え。……いえ、ついてません。ごめんなさい。ちょっとボーっとしていたみたいです。では、私はこれで」

「はい。お話出来て、嬉しかったです」

タスクさんと別れた。
危なかった!つい凝視してしまったわ。それよりもアリーナちゃんの相手になりそうな人…!あ、リクさんはどうかしら?……………だめ。アリーナちゃんが舞い上がっちゃうわ。落ちつきもなくなっちゃうし。

もうどこかにいないかしら!こうなったら、私をモデルにした男の子キャラにしてしまえば、いいんじゃないかしら(。-∀-)それがいいわね!流石は私だわ。早速、部屋に戻らなくちゃ。


「リコリス!お前、こんなところにいたのかよ!」

「はあくん…」

はあくんが私の元に駆け寄って来る。何かあったのかしら?


「アリスが探してたぞ!勉強を教わりたいのに、部屋にいねェって」

「アリスが!?それは急いで部屋に戻らなくちゃいけないわね!」

「もう大丈夫。たまたまクロノが帰って来てさ、アリスのヤツ、そっちに教わりに行ったから」

「えー(。・´д`・。)私、スマホ持ち歩いているから、連絡してよ。はあくん!」

「スマホ、部屋に置いてきちまったんだよ」

せっかくのアリスとの時間が……あ(・o・)いたじゃないの!アリーナちゃんの相手になりそうな人が。すっかり忘れてたわ!


「うふふ…(。-∀-)」

「何だよ、その不気味な笑みは…」

「いやーね!私はただ笑っただけよ( *´艸`)」

「その笑みは、何か企んでる時の笑い方だぞ」

はあくんは、流石に騙されないわね。本当の私を知ってるから。
すぐ部屋に戻ったら、はあくんをモデルに描いてみよう。そう決まったら、私の筆は早かった。


それからほどなくして…。

新キャラクターが登場した。その名もハープくん。アリーナちゃんのボーイフレンド的存在。女の子と男の子だから、ちょっと恋要素を加えたら、まさかの大バズリした。しかも、この二人のストラップの片方を好きな相手に渡したら、両想いになれたという噂までも流れた。
え、何それ。いつの間にか、私のキャラクター達がキューピッド役になってしまったの!?


「リコリス。ちょっと聞きてェんだけど」

「なあに?はあくん」

「このハープのモデル、オレじゃねェよな?」

「決まってるわ!」

「良かった。オレじゃね……」

「はあくんよ(*・∀・)」

「やっぱオレかよ!」

アリーナちゃんが優しい女の子なら、ハープくんは少し意地悪な男の子。そんな彼がたまに見せる優しさに女の子達には、受けたらしい。


「アレ見た時から、何か似てるとは思ってたけど」

「私のお陰ね!」

「ドヤ顔すんな。今度はアリスがふてくされてるぞ」

「え、どうして?」

「リクみたいな黒髪の優しい男キャラが良かったんだと」

アリスの好みは、リクさんだからね。
見た感じから、わかる人にははあくんってわかるものね…。でも、今更変えられないもの。ハープくん、結構人気が出ちゃったみたいだし。

でも、はあくんも優しい人なのよ。アリスにはまだわからないみたいだけど。


またこの次に新キャラクターを描く時は、絶対に私をモデルにしたキャラクターを描こうと決めたのだった───。





【END】
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