Oshikatsu





【side アリス】

朝、リコリスお姉ちゃんと一緒に学園に向かうため、玄関に向かっていた。すると、お姉ちゃんの鞄についてるキーホルダーが目に入った。


「お姉ちゃん、鞄に新しいキーホルダーをつけたの?」

「まあ!アリスったら、これに気づくなんて、お目が高いわね!(^_^)これは知り合いに頼んで、作ってもらったものなの。可愛いでしょ?」

「うーん…」

可愛いか、可愛くないかで言えば、可愛くはない。ゆるキャラでも可愛いのは沢山あるけど、このキーホルダーは何というか、ぶさ可愛いに近い。でも、リコリスお姉ちゃんは気に入っているみたいだから、可愛くないとは言えない。傷つけてしまうもん。


「個性的でいいんじゃないかな!」

「そうでしょ!はあくんも同じのを持っているのよ!」

「ええっ!?」

ハルクも持ってるの!?そんなに可愛いかったのかな?センス、悪いな…。


「気に入ってくれたみたいで、部屋の鍵につけてるみたいなの!」

「そんなに…!?」

このキーホルダーの何が良かったのか。私には理解が出来なかった。

15時前に学園から帰って来て、部屋でおやつを食べていた。横でハルクも食べていたので、朝のリコリスお姉ちゃんとの話を思い出して、話しかけた。


「ねぇ、ハルク」

「んー?」

「リコリスお姉ちゃんとお揃いのキーホルダー、持ってるんだって」

ハルクが食べていたものをふきだしそうになった。もう汚いな。口に含んでいたものを飲み込んでから、ハルクが答えた。


「まあな…」

「あれ、可愛くないよ。流石にリコリスお姉ちゃんには言えなかったけどさ…」

「オレも最初はそう思ってた。でも、不思議と可愛く見えてきてさ…」

「えー!?」

ハルクまでもおかしくなってる!「眼科に行った方がいいよ!」と言ったら、「おかしくねェ!」とチョップをくらった。
あのキーホルダー、人を狂わせる魅力でもあるのかな!?何て恐ろしい…!

そんな私の思いとは裏腹に、それから二ヶ月も経たないうちに屋敷内でもあのキーホルダーをつけている人達が増えて行った。アガットまでも持ってるんだよ!聞いてみたら、「私には可愛くて仕方ありません…」ってうっとりするような顔で言われた。理解が出来ない!


「ドラ。あのキャラクター、今人気なの?」

「少し前から流行り出したな…。雑誌でも急上昇で特集が組まれてたし」

「え!?あんなぶさいくなのに!?」

「それがいいんだろ?オレも持ってるし」

ドラが見せてくれたのは、スマホカバー。絵柄が少しだけ可愛くデフォルトされていた。これなら可愛くなくもないけど、ドラまでハマってるとは思わなかった!
本当に何なの!あのキャラクターは。

それから人気は落ちることなく、街でもつけている人を沢山見かけるようになり、遂には私のクラスでもつけている子が増え出したのである。ヤバイよ…。



ある日、私は一人テラスにいた。テーブルには雑誌が置かれ、開かれたページには、あのキャラクターが大々的に載っていた。名前はアリーナちゃんというらしい。私と名前が似てる!複雑!

そこで考えるポーズをしながら、座っていると、カルロに声をかけられた。


「どうしました?アリス」

「今の流行りを理解しようとしたんだけど、全っ然出来なくて…!」

カルロが私の持つ雑誌に目をやりながら、「ああ」と頷く。


「そのキャラクターのことですね。僕も可愛く感じますよ」

「信じられない…!」

「アリスは好きではないんですね」

「嫌いじゃないけど、可愛いとは思えない!」

「好みは人それぞれですからね。ちなみにそのキャラクターの原案者は、リコリス様ですよ」

それを聞いて、私は驚いた。まさか、リコリスお姉ちゃんがこのキャラクターを作ったなんて…!だから、持ってたのか。そういえば、あれから部屋を訪れる度に増えてたんだよね。原案者だから、あんなに沢山あったんだ。


「そうなの!?」

「はい。ちなみにモデルがいるんですが…」

「え、いるの!?私の知ってる人?」

「そうですね」

何故だか、カルロが私を見てくる。私の顔に何かついてるのかな?いやいや、カルロなら、ちゃんと教えてくれるだろうし。何だろう?


「何?」

「あのキャラクターのモデルは、アリスだそうです」

「私!?」

それを聞いて、私はショックを受けた。だって、あんなぶさキャラのモデルが私なんて…!私、リコリスお姉ちゃんからすれば、あんなイメージなの!?だから、名前が似てたのかー。ショックだー!

翌日。
私は、朝早くに門のところにいた。今日から毎朝、屋敷周りを走ることにしたからだ。隣には、同じようにジャージ姿のアガットがいた。


「アリスお嬢様。どうしたんですか?いきなり運動を始めたいだなんて」

「私、痩せなくちゃいけないの!」

「そんな痩せなきゃならないほど、太ってないですよ。標準です」

「だめ!今のままじゃだめなの!だから、アガットも協力して!」

「それは構いませんが…。あんなに運動が嫌いなアリスお嬢様が運動を始めるなんて。……………槍でも降らないといいのですが」

ちょっと!何で空を見るの。アガットって、たまに失礼な時あるよね。


「よーし。今日から頑張るぞー!」

「はい。頑張りましょう!」


それからしばらく身体を動かしたことで、私は少しだけ痩せることが出来た。でも、まだまだ!もう少し落とさなくては。
目指せ!リコリスお姉ちゃん。



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