team Licorice




「……よし。終わった…」


面倒な掃除を終わらせた。昼前からずっとここでやってたから、マジで疲れた。てか、一人でやらせる場所じゃねェよな。ドラかタスクさんを呼べば、良かっただろうけど、何か対価が必要だからな。掃除用具を片して、そこから出た。鍵かけんのも忘れずにな。

あー、昼も食ってねェから、腹へった。スマホで時間を確認すれば、15時過ぎ。この時間だと、食堂はやってねェな。となると、アリスのところでも行くか。きっと今なら、お菓子とか沢山置いてあるだろうし。アイツのことだから、また頬にいっぱいため込みながら、食ってんだろうな…。
一昨日にアリスがリコリスとお茶会してたけど、リコリスが内心悶えながらも、平常心を装ってたな。アイツ、本当にそういうことに関しては上手く隠すからな。

使用人の方にもちゃんとおやつは、毎日用意はされているが、オレは一度も行ったことはねェ。ほとんどアリスのところにいるから。たまにアリスがリコリスに呼ばれた時は、リコリスがオレの分も用意してくれたりもするしな。
それに休憩室は、女ばっかだから行きたくねェんだよな。アリスの部屋に行くか。

早速、アリスの部屋に向かおうとしたら───



「ハルクうううううぅぅ!!」

「………げー…」


背後からオレの名前を叫ばれた。そんな大声を出さなくても聞こえてるつーの。トレニアの後ろには、相変わらず数人の取り巻きまでもいた。



「何だよ。ちゃんと指示された掃除なら、終わらせたぞ」

「そんなことではなああああい!!ハルク。貴様、またリコリス様といたなあああっ!」

「ずるいぞ!」

「そうだ!ボク達と代われ!」


至近距離で叫ぶな。トレニアの後ろにいる取り巻きの野郎どもは、ごちゃごちゃうるせェし。
てか、またそれかよ…。軽く頭を掻きながら、オレは答えた。



「リコリスから呼ばれたんだよ…」

「リコリス様だろう!様をつけろ!馴れ馴れしい!!」

「リコリスがつけなくていいって言ったんだよ。文句あんなら、直接リコリスに言えよ!」

「……くっ!」


流石にリコリスには言えないのか、トレニアは唇を噛みしめながら去って行く。取り巻きのヤツらと共に。

入れ代わるようにタスクさんが傍にやって来た。



「アイツら、マジでうるせェな…」

「タスクさんと同じ仲間ですよ。リコリスを慕うヤツらなんですから」

「オレをあんなのと一緒にすんな!」


タスクさんがむっとしながら怒る。オレからすれば、タスクさんもアイツらも同じ仲間だと思う。リコリスを慕ってんだからな。表の姿のリコリスをな。裏を知ったら、幻滅するかもな。でも、本来はそっちが素だから。アリスに幻滅されたくないから、猫かぶってるんだし。



「あー。マジ疲れた。このパウンドケーキ、マジでうまいわ。どんどん食える…」

「もう!私のお菓子を食べないでよ!半分以上、ハルクが食べてるし」


アリスが横で文句言ってるが、トレニアらの文句に比べれば可愛いもんだ。



「これくらいいいだろ。トレニア達に捕まって、面倒な場所の掃除までやらされて、疲れてんだよ。オレは」

「トレニア?……ああ。リコリスお姉ちゃんの親衛隊の人達だよね。私、ちょっと苦手…」

「お前もか」

「うん。リコリスお姉ちゃんは知らないけど、ラセンお姉ちゃんやリンネは嫌ってたよ。うるさいって。アガット達もあまり良い顔はしてなかったし」


やっぱり一部には嫌われてんのか。まー、確かに気持ちはわかるよな。



「でもね、クロノお姉ちゃんは面白いって言ってた!」

「クロノはそう言うだろうな」


オモチャとしてだろうけど。アイツ、そういうところあるし。いつだったか、クロノがからかってたな。トレニアの顔が真っ赤に染まってたから、何か恥ずかしい言葉でも言ったんだろうな。



「今日も菓子はうまいな…」

「あー!私が最後に取っておいたフィナンシェ、食べたー!!ハルクのバカー!」


横でアリスがオレの腕を揺すっているが、痛くもねェ。やっぱりこの時間は、アリスのところで食べるのが一番だな。紅茶もうまいし。



アリスのところで休憩してから、再び仕事に戻る。てか、リコリスのところにまた戻るだけ。今日は朝からリコリスが部屋を掃除するから、ついでに模様替えもしたいから、手伝って欲しいと言われてるからだ。昼を食いに行くところで、トレニア達の取り巻きどもに掃除を押し付けられたんだよな。



「遅くなって悪い。戻った」

「あら、はあくん。頼まれていた仕事は終わったの?」

「おう。腹がへったから、アリスのところで菓子を食ってきた」


頼まれたというか、アイツらがオレに面倒な場所の掃除を押し付けてきたんだけどな。地味な嫌がらせしてきやがって。てか、トレニアはいなかったな。じゃあ、あの取り巻きの一部が勝手にやったのか。



「アリスの部屋にいたの?」

「おう。アイツんところには、うまい菓子ばっか用意されてるからな。毎日、休憩室代わりによく行くし」

「ふふっ、ありがとう」

「……………は?」


何でリコリスがお礼を言うんだ?
アリスのおやつを用意してるのって、まさか…!



「わかったようね!そう。アリスのおやつは、私が選んでいるのよ!( *´艸`)きゃっ、言っちゃったー(σ≧▽≦)σはあくんだからいっか!」

「嘘だろ…」

「本当よ!アガットに聞けば、わかるわよ!アリスが好きそうなお菓子を選んで、出してるの。たまにアリスをお茶に呼んで、候補のお菓子を出したりしてね。これは好み、こっちはあまり好きじゃない…って、アリスの話をニヤニヤしながら聞いて、観察してるわφ(Ф∇Ф)一昨日もそのリサーチしてたの!」

「怖っ!」


たまにリコリスがアリスを呼んで、部屋だったり庭だったりで、飲み食いしてると思ってたら、アリスの好みを調べてたのかよ。恐ろしいな、コイツ…。



「お前、マジで怖ェな…」

「大丈夫よ!アリスにしかしないから( ´∀`)b」

「大丈夫じゃねェ。アリスがそれを知ったら、怖がるぞ!マジで見る目を変えるからな」

「はあくん。私がそんなミスをするわけないでしょ!私を侮らないでちょうだい(・ω・)」


ダメだ、コイツ。全然わかってねェ!

だから、皆、騙されるんだな。リコリスは隠すのが上手いから。



「さて、部屋の模様替えは済ませたし。衣装部屋の家具の配置も終わったから、あとは掃除と片付けだけだな。さっさと終わらせるぞ!」

「ええ。私も頑張るわ!」

「いや、お前は動かなくていい。クロッカスとやるから」

「えー(・ェ・)私の部屋なのに…」

「お前が入ると、余計に仕事が増えるんだよ!」


そう。何でも出来るリコリスだが、掃除に関しては任せてはいけねェ。悪化させるからな…。箒で掃くくらいなら、まだマシだけど。雑巾で拭かせると、ビチャビチャでろくに水を絞らないままの雑巾で拭こうとするし、掃除機をかけさせれば、すぐに詰まらせるし。はたきを持たせれば、それを使って踊りながら、はたきを振り回すし。他にも…と本来キレイになるはずが、更に汚くなるんだよな。
アリスでさえ、苦笑してたからな。「リコリスお姉ちゃんにだけは、掃除をやらせちゃだめだね…」って。

それからリコリスを見張りながら、オレはクロッカスと掃除を開始した。元からキレイに片付いている部屋だから、二人でやれば30分もかからないうちに終わった。



「すごいわ!二人のお陰で更にキレイになったわ。ありがとう!」

「いえ…」

「良かったな」


リコリスがオレとクロッカスにお茶を用意してくれた。クロッカスは「私がやります!」と言ったが、リコリスは首を横に振り、「だめよ!これくらいは私がやるから」と言って、クロッカスをイスに座らせた。
三人で飲んでいると、リコリスが言った。



「そういえば、アリスはもう掃除したのかしら?」

「アリスなら、明日やるって言ってたぜ。だけど、一日中はかかると思う。アイツ、すぐに脱線するから」


アリスの場合、リコリスと違い、掃除や片付けに関しては問題ないが、奥から出て来た懐かしい本やアルバムなどを見つけては読み出すのだ。アガットが注意しても、やり出すからな。



「それなら、私も手伝いに…」

「だめです!」

「オレが行くから、リコリスは行かなくていい!」

「えーo(T□T)o私もお手伝いに行きたいわ!」


リコリスが行くと、足手まといになるだけ。連れて行ったら、アガットがオレを睨むだろう。「何で連れてきたんですか!」ってな。



「別のことをすればいいじゃん。今みたいに差し入れするとか。そしたら、アリスは喜ぶんじゃねェの?」

「そうね!私、そっちの方なら得意よ!アリスを喜ばせるんだからp(^-^)q」



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