Heartwarming Christmas




「あれ?車で行くんだよね??ハルク、車の免許って持ってたっけ…?」

「バイクのしか持ってねェよ」


えー。じゃあ、誰が運転するの?リコリスお姉ちゃんは取ったけど、長距離の運転はまだ無理だし。それに私の着替えを手伝ってくれるとも言ってたし。一体、誰が?と考えていたら、そこに私服姿のタスクがやって来た。



「あれ?タスクだ…」

「悪い。ちょっとトイレ行ってた!」

「リコリスお姉ちゃん。もしかして…」

「そうよ。今日はタスクさんが運転してくれることになったの!」


タスクって、車の免許持ってるんだ。すると、リコリスお姉ちゃんがタスクの傍に行き、話しかける。



「タスクさん、今日はありがとうございます。いきなり運転をお願いしてしまって」

「いえ、大丈夫です。オレで良かったら、いつでもやりますから!」


タスクの顔が赤い。本当にリコリスお姉ちゃんのことが好きなんだな。

すると、ハルクが近寄って来て、小声で言った。



「(タスクさん、ここに入ってすぐに車の免許を取ったんだよ。リコリスを車で送り迎え出来るように、な)」

「(そうなの?)」

「(そ。そんで少し前にリコリスが免許を取っただろ?車の運転に慣れるために、何度かリコリスと車で出かけてたんだよ。もう毎回帰って来る度にニヤニヤしてたからな、タスクさん…)」


そうなんだ。リコリスお姉ちゃんの運転に付き合って…。
って、私もリコリスお姉ちゃんの車に乗りたかった!何で言ってくれなかったんたろう。確かに私じゃ何もアドバイスも出来ないけどさ。



「私も乗りたかった!」

「そのうち乗せてくれんじゃね?」

「そうかな…」


※リコリスが運転の練習をしているのは、アリスを乗せて一緒に出かけたいからである。かっこ悪いところを見せたくないから、タスクを練習台として乗せていた。タスクも大分浮かれていたが、ちゃんとアドバイスはしている。



そうして、車に乗り込み、出発した。
私はお姉ちゃんから用意された服を着るように言われて、着替えた。車に乗っている間、運転席と助手席からは見えないようにスモークガラスとカーテンで遮っていた。当然、窓も外から見えないようになっている。車の中でお姉ちゃんとおしゃべりしながらだったから、あっという間に感じた。

しかし、リコリスお姉ちゃんのセンスは良い。服も鞄も靴も何もかも最高。髪型もやってもらったけど、普段の私と比べて、全然違っていた。すごい!地味な私でも可愛くなれた気がする。

クリスマスイルミネーションは人が沢山いたけど、素敵だった!お姉ちゃんと手を繋ぎながら、あちこちで写真を撮った。たまに羨ましそうに見ていたタスクに気を利かせて、リコリスお姉ちゃんと撮ってあげた。そしたら、何故か私とハルクまでも一緒に撮らされた!私はいいと言ったのにー!

イルミネーションを見終わると、お腹が空いた。すると、リコリスお姉ちゃんは言った。



「アリス、ご飯食べに行きましょうか?予約してあるのよ。アリスの好きなイタリアン料理」

「え!?本当。わーい!リコリスお姉ちゃん、大好き」

「ふふ、私も大好きよ!」


駐車場に着き、車に乗り込む。だが、リコリスお姉ちゃんは助手席に乗ってしまう。どうやらレストランまでナビをするらしい。さっき着いた途端に車のナビが故障しちゃったからね。仕方ない。
となると、隣はハルクになる。



「タスクさん。駐車場を出たら、真っ直ぐ行ってもらってもいいですか?左手に大きな公園が見えてきたら、右に曲がってください」

「わかりました!」


早速、お姉ちゃんがスマホを見ながら、タスクに指示を出す。そうして、動き出した。後部座席から、二人を見る。

リコリスお姉ちゃんは、スマホを見て、時折顔を上げて、辺りを確認している。
タスクは運転しながらも、チラチラと隣のお姉ちゃんを見ていた。デレデレしている!
今日のリコリスお姉ちゃんは、更にキレイだからね。わからなくもない。イルミネーションの時も男の人が結構見てたし。彼女連れの人まで見惚れてたしね。うんうん。わかるよ、その気持ち。リコリスお姉ちゃんはキレイだもの!もしも、私が男の人だったら、彼女にしたい。



「……アリス。お前、さっきから一人で何やってんだよ。腕組んで頷いたりして」

「私のことは放っていいから!」

「はあ?横で挙動不審な行動してるから、目に入んだよ!」

「窓の外を見ればいいじゃん!」

「景色なんて興味ねェよ」


もうハルク、やだー!行きと同じリコリスお姉ちゃんが隣にいてくれてた方が良かったのに…。



数十分後。
予約していたレストランに着いた。入口には立て札があり、クリスマスだからか、予約以外は入れないとの注意書きがあった。

店内に案内されると、家族連れもいたけれど、やはりカップルが多かった。
そこでクリスマス限定のディナーを食べた。毎度思うけど、リコリスお姉ちゃんが見つけたお店は本当にはずれがないから、どれもすっごくおいしかった。

ご飯も食べ終わり、レストランを出る。
今、20時過ぎだから、家に帰るのは22時過ぎちゃうな。あー、まだ家に帰りたくない…。



「リコリスお姉ちゃん、まだ帰りたくない…」

「え?」


はっ!ついワガママを言ってしまった。どうしよう。お姉ちゃんを困らせたいわけじゃなかったのに…!



「お姉ちゃん、今のは…!」

「嬉しいわ。私もそう思っていたのよ!そう言うと思って、ここからすぐ近くのホテルを予約してるわ!」

「え!?」


リコリスお姉ちゃんが指差した先を見る。レストランから、少し先に立派なホテルが見えた。というか、オシャレな建物だよ。あそこに泊まるの?



「リコリス!?あのホテルに泊まるのかよ!」

「もちろんよ。でも、泊まるのは私とアリスだけよ!」

「は?お前らだけ!?」

「え…」

「そうなの!?お姉ちゃん」

「ええ!クリスマスだし、予約いっぱいで一部屋しか取れなかったのよ。だから、申し訳ないけれど、はあくん。タスクさんと先に帰ってね」


リコリスお姉ちゃんはそう言うと、私の手を取って言った。



「それじゃあ、私達はホテルに行きましょうか!アリス」

「え、うん。わかった…」


私はリコリスお姉ちゃんとホテルに歩き出す。後ろを振り返れば、放心してるタスクとため息をつくハルク。何だかかわいそうな気もするけど、一部屋しか取れなかったんだから、仕方ない。

その後。
私とお姉ちゃんはホテルに到着し、一泊してから帰った。服の替えとかなかったけど、ホテルの部屋には色々アメニティとかあったから、特には問題もなかった。

寂しいクリスマスになるかと思っていたけど、リコリスお姉ちゃんのお陰で楽しく過ごせた。ありがとう。リコリスお姉ちゃん!





【END】
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