Heartwarming Christmas
今日は終業式。
お昼前に学園から、帰って来た。
「クリスマス、か…」
去年のクリスマスは、クラリスの別荘で過ごした。新年もそこで過ごし、毎日が楽しかったな。
しかし、今年。
クラリス含めた友達全員、予定が入って、誰ともクリスマスの約束をしていない。みんな、家族旅行に行くんだって。中には、彼氏の家族と一緒に旅行って子もいたけど、彼氏は婚約者だもんね。親公認なわけか。
うちも年末に家族で旅行には行くけど、クリスマスはバラバラだ。
パパとママは、久しぶりに二人きりでデートだし。お姉ちゃん達もそれぞれ予定が入ってる。リンネまでも、クリスマスはパーティーだからっていないんだよ!そしたら、「アリスもパーティーに行けばいいじゃん」とリンネに言われたけど、親しくない人のパーティーに行ってもつまらないんだもん。私、初対面の人と上手く話せないし。
アガットも今年は、クリスマスから有休取っちゃったから、来年の4日まではいないし。だからって、一人で街に出たくない。家族連れやカップルばかりだし。それなら、家にいるに限る!
それにリク先生も昨日、帰省しちゃったんだよ。寂しい…。
「はあああ…」
「まーた盛大なため息ついてるな、お前は」
「なんだ。ハルクか…」
「なんだとは何だよ」
いつの間にかハルクが部屋にいた。いつものように勝手に入ったんだろう。でも、珍しく私服だった。どこか買い物にでも行ったのかな?たまに着替えて行くからな。ハルクもカルロもドラも。
「ため息、つきたくもなるよ。誰も遊んでくれないし。はあー」
「リコリスに聞いたのか?」
「聞くまでもないよ!リコリスお姉ちゃんのクリスマスの予定が埋まらないわけないじゃん!あの女神なお姉ちゃんなんだよ!?わかってる!?」
「まー、誘いは沢山来るだろうな。お前と違って」
「悪かったわね。……いいもん!こうなったら、部屋で読書して過ごすから。ハルク、お茶とお菓子を持ってきて!」
「へいへい。さっびしいクリスマスイヴだな…」
「ハルクだって、一緒に過ごす人いないじゃん!」
「バーカ。オレは仕事なの。お前のおもりがあんの」
そう言い、ハルクが部屋を出て行った。あの言い方だと、私がいなかったら、予定があったみたいなんだけど!
それからハルクが持って来てくれたお茶とお菓子を食べながら、私は本を読んでいた。クリスマスとはまったく関係ないホラー小説だ。ホラー漫画は読めないけど、小説なら読める。
ハルクも何故か傍で私の漫画を読んでるし。しかも、お菓子にも手をつけていた。カップだって、ちゃっかりと自分の分まで用意してたし。
「ちょっとお菓子、取らないでよ!どんどん減ってるじゃん!」
「少しぐらいいいだろ。てか、これを一人で食おうとしてたのかよ。ブタに一直線だな。なりたいなら、止めねェけど」
「ブタ!?」
「そうだろ?クリスマスに一人だから、いつも以上にヒスってるし。これなら男は出来ねェわ」
むー。ムカつく!何でハルクにそんなこと言われなきゃいけないわけ!?去年もブタになるって言われたし!
「ハルクだって、いないじゃん!クリスマスに仕事してるから、どうせ予定ないんでしょ!」
「予定はあんだよ」
「えー。うっそだー!」
「嘘じゃねェよ」
ハルクと言い合いしていると、部屋のドアをノックする音がした。誰だろう?
私が返事すると、リコリスお姉ちゃんの声がした。空いてるよと答えれば、リコリスお姉ちゃんが入って来た。
というか、お姉ちゃん、これから出かけるのかな?頭からつま先まで、いつも以上に全身に力が入ってるし。まさか、デート!?リコリスお姉ちゃんまでもリア充に…!
「良かった。アリス、家にいたのね!」
「残念ながら、予定がなくて…。リコリスお姉ちゃんは、これから出かけるんでしょ?早く行かないと」
「そうなのね!?(チャンスだわ(ФωФ)+)それじゃあ、私とクリスマスイルミネーションを見に行かない!?」
「イルミネーション?」
「ええ。うちからは遠いんだけれどね。セシリアが教えてくれたの。ここのクリスマスのイルミネーションがすごくキレイなんですって。どうかしら?」
リコリスお姉ちゃんがスマホでその場所のイルミネーション動画を見せてくれた。キレイ!動画でこんなキレイなんだから、実際に見に行ったら、感動しちゃうよね!
「行く!!」
「本当!?」
「うん!見に行きたい!」
リコリスお姉ちゃんと一緒にクリスマスイルミネーションを見るなら、楽しいだろう。
「それじゃあ、早速行きましょうか?」
「え?今から…?」
「そうよ。今から行くのよ!」
「でも、私、何も準備してないから、今から支度しないと…」
「大丈夫!アリスの準備なら任せて!車の中でお姉ちゃんが全部やってあげるから( ´∀`)(既に荷物は運び終えてるし。この日のためにアリスとお揃いの服や鞄、靴を揃えたんだから!双子コーデのクリスマスデートよ( *´艸`))」
「で、でも…」
「アリスは、アガットじゃなきゃコーディネートはされたくないの?私じゃだめなの?」
うっ…。リコリスお姉ちゃんがうるうるとした目で私を見てくる。こんなの断れないし!断れる人いないよね?
「だめ、じゃない…」
「良かった!行きましょう。アリス(^_^)」
「うん!」
私は部屋を出て、鍵をしめた。
あれ?そういえば、ハルクは?リコリスお姉ちゃんと部屋を出た時には、もういなかったんだよね。ま、いっか。
リコリスお姉ちゃんと廊下を歩くと、背後から「おい」っと頭を軽くチョップされた。
振り返ると、ジャケットを着たハルクの姿。
「もう!いないと思ってたら…!」
「あら、はあくん。準備が早いわね」
「こんなの財布とスマホがあれば、充分だからな。鞄なんて必要ねェし」
「というか、ハルク。知ってたでしょ!」
「何が?」
「出かけることだよ。だから、今日は私服だったんだ」
私の衣装部屋にでも、ジャケットを置いていたのだろう。いつでも出かけられるように。たまに荷物を置いてるんだよね、ハルクって。
「まあな。リコリスから聞いてたしな」
「え、リコリスお姉ちゃんに…」
じゃあ、本当は二人で行くはずだったんじゃないの!?私、お邪魔虫では?
「リコリスお姉ちゃん。私、お邪魔じゃないかな?ハルクと行くはずだったんなら…」
「え?何を言ってるの!アリス。私はあなたと行きたいから誘ったのよ!?はあくんは私達のボディーガードみたいなものだから!」
「本当?……それなら、良かった」
玄関前に着くと、そこに車が一台停まっていた。普通の乗用車。しかし、運転席には誰もいない。
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