Lively Poolside




「なんだ?ハルク。相手にして欲しいのか?」

「それは遠慮する!お前の相手はオレに務まらねェから」

「えー。ハルク。さっき言ってたじゃん!“セクシーでスタイル抜群のキレイな水着の女なら役得”って。あれはクロノお姉ちゃんのことだったんでしょ!」

「バカ!違ェよ。あれは例えだ!」

「嘘だー。ハルクがそう言い出したんだから、クロノお姉ちゃんに相手してもらえばいいじゃん!」

「オレはちんちくりんの真っ平らなガキで間に合ってんだよ!」

「はあくん、さっきと反対のこと言ってるわよ」


本当だよね。さっきまでは、ガキなんてお断りとか言ってたのに!



「あ、ハルクだー!」

「ラセン。……っ」


ラセンお姉ちゃんもプールから上がり、ハルクの後ろから抱きつく。



「水着のまま、抱きつくなって!」

「いいじゃん!ねぇ、ハルクもプールに入ろうよ。競争しよう!」

「服が濡れるから!あと、オレはまだ仕事中…」

「どうせカルロから逃げてきたんだろう?あいつはくそ真面目だからな」

「……事実なだけに言い返せねェ!」


ラセンお姉ちゃんも胸が大きい。クロノお姉ちゃんと違って、スポーティーな水着だけど、スタイルがいいのはわかる。

お姉ちゃん達とは並びたくない!自分の身体がいかに貧弱なのかと思い知らされる!早く大人になりたいよ。



「アリス、リコリス。助けてくれよ!」

「良かったじゃない。ラセンお姉ちゃんも水着の美女だし」

「そうよ。はあくん、自分でそう言ったんだから。アリス、私達ははあくんのお邪魔しないようにプールで遊びましょうか」

「うん!」

「待っ…!」


私は飲みかけのジュースを飲み干し、缶をプールサイドに置く。クロノお姉ちゃんとラセンお姉ちゃんに挟まれたハルクを放って、私はリコリスお姉ちゃんとプールに入った。





一方、屋敷内からプールが見えるところがある。そこから使用人(主に若い男性)達が何人か見ていた。今は休憩のようだ。


A「ここは楽園か…」

B「美人でスタイルの良い女子達しかいない」

C「目の保養になるわ…」

D「今すぐにでもあのプールに行きたいくらいだよな!」

E「残念ながら、俺達は仕事中だ」

F「アリス様やリンネ様も可愛いが、まだ子供だからな。でも、将来に期待大」

C「今のままでもいいけどなー」

A「え、お前、まさか、ロリコン!?」

C「違うって!」

E「お前、好みのタイプもちょっとロリっぽい顔の娘が好きだとか言ってたじゃん」

C「別にいいだろ!」

B「てか、珍しくクロノ様もいんじゃん!」

D「クロノ様、やばい性癖あるけど、やっぱり美人だよな。あのスタイルの良さ!」

F「あと、ここにエリーゼ様もいたらな…。完璧だったのに」

B「てか、二人に挟まれてるハルクが羨ましい!そこ、今すぐ代われ!」

A「マジで代わって欲しい!」


若い男達には、アリスとリンネは対象外のようだ。まだ子供なせいだろうが。

それを少し離れたイスで聞いていたカルロとドラ。



「ハルクが羨ましいってさ。オレ、全然羨ましいと思わねーけどな」

「使用人の中で姉妹の方々に一番気に入られているのは、ハルクですからね。姉妹人気ナンバーワンのリコリス様に気に入られてますから、嫉妬と妬みはすごいですよ」

「んでも、ハルクも黙って聞いてるタイプじゃねーじゃん。ケンカ売られたら買うし。……そこにもいんじゃん。リコリス熱狂過激信者」

「……アイツ!」


タスクは窓に貼りつくようにプールを睨んでいた。睨んでいる先はハルクだ。しかし、別の方角を見ては「キレイだ…」と顔を赤くしながら呟いているから、リコリスを見ているのだろう。忙しい男である。



「放っておいてあげましょう。タスクは今ハルクに嫉妬の炎が激しいでしょうから」

「しばらくは鎮火しねーよ、あれ」

「それにしても、リコリス様は屋敷内もですが、外でもすごい人気ですからね。毎日、沢山の手紙や贈り物が送られてきますし。中には変なものを送ってくる者もいますから、必ず渡す前には開封します。やばいものはそのまま破棄しますが」

「モテんのも大変だな…」

「変なものを送られてくるのは、リコリス様だけではないですけどね。一番多いのはリコリス様なだけで」

「リコリスって、婚約者いないよな?作る気ねーの?」

「インカローズ様が何度か婚約者候補に会わせたことあるようですが、全部断っていますよ。おそらくリコリス様は余程のことがない限り、他のことに目は向かないでしょうね」

「あー。だろうな…。今邪魔したら、絶対に恨まれるぜ」

「リコリス様、普段は素晴らしいのですが、アリスのことになるとおかしくなりますからね」


リコリスは今、アリスとプールの中にいた。泳ぎが苦手なアリスに教えているようだ。アリスを独占しているからか、猫かぶりモードで嬉しさを隠していた。しかし、時折隠せないのか、にや~っとしている瞬間もあり、他の使用人達は気づいていないが、ドラとカルロは気づいていた。



「リコリス、中身はかなりやべーよな。あの外見に皆、騙されてるけど」

「しっ。ドラ、皆の夢を壊さないように」

「へーい。でもさ、アリスに好かれないと、リコリスは興味すらも持たないしな」

「ええ。過去にアリスを蔑ろにした者には容赦なかったですからね。リコリス様…」


そのことを思い出したのか、カルロが黒い笑みを浮かべていた。その笑みにドラは若干引いていた。



「ま、あれは完全にそいつらが悪いけどな。働きに来ているのに、リコリスに近づこうとしか考えてなくて、全然仕事しなかったし。やってもめちゃくちゃだった」

「うちを辞めてから、よそでも働けないように手は回しましたよ」

「お前も一枚噛んでたわけか。怖っ」

「僕は真面目に仕事をしない者は許しませんので」


そう言うと、カルロは立ち上がり、何度か手を叩く。それに他の使用人達も振り返る。



「そろそろ仕事を再開しますよ。ドラ、申し訳ありませんが、プールに行って、ハルクを連れて来てください」

「了解」

「なあ。オレが代わりにハルクを連れてくる!!」


タスクが手を上げて、そう言った。その顔には明らかに「ハルク、許さん!」と書いてあった。



「ええ。それではお願いしますよ。タスク」

「よっしゃ!じゃあ、すぐに裏切り者の首ねっこを掴んで来る!」


タスクがプールの方へと駆けて行く。それを見送った二人は───



「ハルク、かわいそうに」

「タスク、絶対にハルクに当たり散らすだろうな」

「でしょうね。さて、僕達も仕事に戻りますよ。ドラ」

「わかった」


その後、仕事をしていると、ハルクがずぶ濡れになって、戻ってきた。どうやらタスクによって、プールに突き落とされたらしく、少しふてくされていた。反対にタスクはやりきったようで、清々しい笑顔だった───。





【END】
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