April Fool




ある春休み。
ニヤニヤを堪えきれないリコリスとその隣を歩くハルクがいた。



「うふふ( *´艸`)」

「リコリス。さっきから、ニヤニヤし過ぎ」

「だって、やっとアリスと一緒にいられると思うと嬉しくて…。長かったわ!」


リコリスは、昨日まで学園の友人達と卒業旅行に行っていた。期間は一週間。親しい友人達と行って、楽しかったのだが、その合間を縫っては必ずハルクに連絡を取っていた。
というのも、卒業旅行前日にリコリスはハルクに言っていた。



「はあくん!友達と旅行はいいけれど、一週間もアリスの姿を見られないのが辛いわo(;д;o)電話だって、毎日朝昼晩としたいけど、嫌がられたくないし。だから、毎日アリスの姿を送って欲しいのよ!隠し取りでもいいから、最低でも一日に10枚、動画も一日一回は送ってね!」

「面倒くせェ…」

「はあくんしか頼めないのよー(・ω・`人)お土産、沢山買ってくるから。お願い!」

「仕方ねェな」


渋々引き受けたハルクは、毎日アリスの写真を撮っては、リコリスに送っていたのである。



「アリス。ちょいこっち向け」

「え、なん…」


アリスが振り向いた瞬間、カシャッ。カシャッと撮るハルク。何枚か撮ってから、確認する。しかし、ハルクの場合、ちゃんと可愛く撮れてるものではなく、変な顔している写真をリコリスに送るのである。だが、リコリスはそれでも喜んでくれた。



「よし。これでいいか」

「ちょっと!これ、半目になってる。しかも、ぶれてるし!撮り直して!」

「大丈夫だって。見るのはリコリスだし」

「リコリスお姉ちゃん!?やだー!こんなひどいのなんて送らないでよ!」

「バカ。消すなって!」


そんなやりとりしてからは、アリスがうるさいため、隠れて撮るようになった。
写真を送る度にリコリスからは、即既読がつく。余程待っていたのが、即絵文字やスタンプを返してくる。たまに写真ではなく、動画を送るとリコリスは必ず“アリス、可愛いー!ラブリー(≧▽≦)はあくん、もっと送ってー( ´ ▽ ` )ノ”とメッセを返してくることもあった。”

そして、毎晩夜10時過ぎになると、電話をかけてきて、アリスはどうだったのかを聞いてくるのだ。流石にそれが5日も続くとハルクも嫌気がしてきたのか、一日だけタスクにアリスの写真をリコリスに送るように頼んだこともあった。リコリスと仲良くなりたいタスクは、すぐ引き受けた。しかし、それがある問題を起こしたのである。その話は別の機会に語るとしよう。



「その前にアリスと卒業旅行に行っただろ?」

「2泊3日だけね。私としては、もう少しいたかったのよ!一ヶ月くらいは」

「そんな休み、長くないだろ。それにお前もアリスも準備があるだろ。お前は大学、アリスは中学に入んだから」

「それはそうだけど……あっ!Σ( ´∀`)」


リコリスの顔がある方向で止まる。そこに最愛の妹であるアリスを見つけたからだ。



「アリスー!」

「……」


いつものアリスなら、リコリスの方を向いて話すのだが、何故か背を向けたままだった。浮かれているリコリスは気づかない。
その様子にハルクが気づくが、ひとまず何も言わないでいた。



「あのね、少し前に通販で頼んでいたケーキがさっき届いたの!今回は、春限定の桜いちごのケーキよ!アリス、ここのケーキは大好きでしょ?天気も良いから、テラスで一緒に食べない?紅茶も新しいフレーバーティーで…」

「……い」

「なあに?」

「私……いらない」

「ひょっとして、お腹が痛いの?それなら…」

「違う。リコリスお姉ちゃんと一緒にいたくないの!」

「……え(゜_゜;)」


アリスの言葉にリコリスは、ショックを受けて、その場から動けなくなってしまう。



「おい。アリス。そんな言い方…」

「……っ!とにかくリコリスお姉ちゃんとは、一緒にいたくないから!」

「ちょっと待って。アリ…!リコリス!?」


そう言って、アリスは駆けて行く。ハルクは後を追いかけようとしたが、リコリスがショックで気絶したため、追えなかった。



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