Awkward Gaze




「ねー。ハルクー!えほん、よんでー!」

「はあ?絵本……ヤダ。お前のねーちゃんに頼めよ」


寝る前になると、オレのところに来て、絵本を読んでと毎日せがんでくるアリス。いくら断っても、オレが頷くまで離れようとしねェ。



「ハルクがいいー!ねー。よんでー!」

「何でだよ…」


ここの使用人達やアリス以外の娘達は、オレに近づいて来ねェ。きっとアリスにもオレに近づいてはダメだと言われてるはず。それなのに、コイツは毎日オレの後を引っ付いてくるし、夜もこうやって部屋にまで来る。

来ねェのは飯の時くらいか?そん時だけは、アイツの姉が迎えに来るから。その姉がすごい目でオレを睨んでくんだよな。確か、オレと同い年の……リコなんとかってヤツ。せっかく可愛い顔してんのにな。オレにはあんな顔するけど、アリスにはすげーニコニコして、差が激し過ぎ。



「よんでー!おねがいー!」

「……わかった。読んでやるから」

「わーい!はい、これー!」


オレが渋々承諾してやると、アリスは絵本を渡してくる。本当何でオレに頼むか、全然わからねェ。



「てか、お前のねーちゃんに言えば、喜んで読んでくれんじゃねェの?」

「うん。でもねー、リコリスおねえちゃんはいそがしいから、あまりそういうことはたのんじゃだめだって、いわれたの」


使用人の誰かに言われたのか。けど、アイツならアリスに読んでと言われたら、絶対に読んでやるだろう。何をしたってアリスを最優先するから。
でも、周りからしたら、アリスがアイツの邪魔をしてるように見えんだな。



「ふーん…。オレ来てから、まったく行かなくなっただろ?寂しがってるから、行ってやれよ」

「……」

「どうした?」

「そしたら、ハルクがひとりになっちゃう…」


それわかってて、オレのところに来るのか。こんなお子様にもオレは心配されてんだな。アリスの頭を撫でてやる。



「オレは一人でも平気。お前のねーちゃんもお前がオレのところに来てばっかいたら、きっと寂しがってるぜ。行ってやれよ」

「うん、わかったー!」


本当に素直だな、アリスは。だから、アイツは可愛いがるんだろうな。気持ちは少しだけわかった。



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