Gentle Gaze
夜。
使用人用の食堂で晩御飯を食っていると、ハルクが「隣いいですか?」と聞いてきたから黙って頷く。ハルクが腰をかけて、手を合わせてから食事を始める。オレもそのまま食べていると、ハルクが話しかけてきた。
「聞きましたよ。リコリスと話したんですよね。どうでした?」
「すげー楽しかった。けど、ほぼアリスの話しかされなかったな…」
「あー、やっぱり…」
「でも、アリスの話をしてる時のリコリス様、すげーイキイキしてて、超可愛かった!」
「……ソウデスカ」
なんだよ、その目は。
オレが興奮しながら、そう話すと、ハルクはちょっと引いていた。引くんじゃねェ!
「幸せそうで何よりです。だけど、リコリスにとって、アリスに好かれているのが第一条件ですよ。アリスに嫌われた段階でリコリスも嫌いになりますから」
「アリスか。反応が面白いから、ついからかっちまったなー。嫌われてはいねェだろうけど。お前、何かアリスから聞いてる?」
すると、ハルクが何かを思い出したのか、アリスとの会話を話してくれた。
“なあ、アリス。タスクさんのこと、どう思う?”
“タスク?あー。顔を合わせると、いつも私のことをからかってくるんだよね。あまり関わりたくないかな。からかわれるの嫌いだもん”
「……だそうです。アリスがそう話してました」
「まずい!それがリコリス様の耳に入ったら、口を利いてもらえなくなんじゃん!」
「リコリスはアリスを溺愛してますからね」
やべー。やっと少しだけ距離が近づいたかと思ってたのに、こうしちゃいらんねェ。隣のハルクの腕を掴みながら、オレは尋ねる。
「ハルク。アリスの好きなもんは何?教えろ!」
「タスクさん、顔が怖ェ…」
「いいから、早く!」
「アリスは本が好きです。けど、本なんてほとんど読まないタスクさんがプレゼントしても失敗すると思うんで、食いもんで釣るのがいいと思いますよ」
「食いもん?」
「はい。お菓子類です。市販で売ってるような手軽に食べられるやつとか、こないだは駄菓子とかに興味を持っていましたね」
「そっか。ありがとな、ハルク!」
礼を告げて、立ち上がる。空の食器をトレーに乗せ、返却口に返してから、食堂を出る。
よし。部屋でアリスに渡す菓子類を調べてみっか。この後はもう仕事はねェし。明日は休みだ。良いもんがあれば、買い物にも行ける!アリスの気に入るようなもんを渡さねェとな。
アリスに気に入られ、リコリス様にも認められないと始まんねェから。
【END】
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