Summer Cottage(Ⅲ)

❰side C❱



アンバーにワゴン車を運転させ、走らせること約一時間。

使用人達が泊まる旅館近くの海にやって来た。旅館にうち専用の駐車場に停めて、ワゴン車の中で水着に着替えた。既にハルク、タスク、ライは下に穿いていたようだけど。

着替えは車に置いておくか。貴重品とタオルなど入れた小さな鞄だけ持って、海へと向かう。歩いて、数分で海に着く。そこは沢山の人で溢れ返っていた。



「すげー。テレビとかで見たまんまじゃん!」

「へぇ。人が沢山いるじゃん。この中に俺の好みのもいるかもしんねー!」

「人が多すぎる!アリス、どこにいんの?」


……。頭が痛くなってきた。
この弟達と一緒に来たのは、失敗だったかもしれない。俺も来なきゃ良かったかな。でも、そうなると、ハルクが別荘から抜け出して、騒動になるからな。それを考えると…!



「アガット。これ、どう思う?」

「どう思うって聞かれましても…」

「見事にバラバラですね。皆、それぞれ自分のことしかないですし」

「アンバー!……って、ライ様がいないんですけど!」

「……あいつはもう放っておこう」


しばらくは自由にさせよう。飽きたら、どうせ戻ってくるはずだからな。それにあいつのストライクゾーンに入る人は、早々見つからないと思うし。遊びたいなら遊ばせた方がこっちに被害は来ないから。



「カルロ!」


呼ばれて、振り返ると、タスクが海の家から手を振っていた。



「タスク。いつの間にそこに…」

「砂浜、暑いじゃん!ここにいることも出来るから、オレ、ここで待ってる。かき氷食べたいから、既に注文しちゃった!」

「それが狙いだっただろ?」

「まあねー!」


海の家にタスク一人を置いとくのも心配だから、アンバーに見てもらうことにした。荷物も預けて、俺はアガットとハルクを連れて、砂浜を歩く。





相変わらずハルクはアリスの姿を探している。こんな人が沢山いると、なかなか見つからないよな。



「もう!アイツ、どこにいんだよ!」

「母親を探してる迷子の子供みたいだぞ、ハルク」

「母親じゃねェし!」

「でも、似たようなものだろ。アガットはどう思う?」

「俺に振らないでくださいよ」


しっかし、暑いな。砂浜じゃなくて、海の方を歩くかな。サンダル履いていても、足が熱い。なんて考えていた時、「あの…」と後ろから声をかけられた。その声に俺とアガットは同時に振り返る。



「はい?何か」

「ん?」


そこにいたのは、水着を着た知らない女の子達だった。多分、俺達よりは年下かな。



「良かったら、一緒に遊びませんか!」

「私達も二人で来てて…」


どうやら逆ナンのようだ。可愛い子達だが、今はそれどころじゃない。早くアリスを見つけないと、あの暴れん坊がうるさいからな。



「ああ、ごめんね。俺達、弟の付き添いなんだ」

「すみません。申し訳ないですが、他の方をあたってください」


断ると、彼女達は素直に引き下がって行った。

だが、歩いていると、やたら女の子達が声をかけてくる。断っても、別の子達が来て、後を絶たない。中にはなかなか引いてくれない娘達もいたし。連絡先を教えてくれと聞いてくる娘達もいた。体を触ってくる娘もいた…。流石にそれはやめてくれ。

どうやらアガットと二人でいるからかもしれない。アンバーとも声をかけられることはあるが、ここまでじゃない。アンバー、外見だけだと隙がないように見えるからな。中身は、全然そこまでじゃないのに。

今回はきっとアガットの外見もあるんだろう。優しそうな雰囲気で、意外に色気があるからな。



「俺の顔、何かついてます?」

「いや、ついてないよ」

「そうですか」

「アガットは女の子に興味はないの?」

「興味ないわけじゃないんですけど。今はお坊っちゃまや弟達だけで精一杯です」

「弟達に結婚とか先越されてもいいの?」

「はい。俺はお坊っちゃまや弟達の幸せの方が大事ですから」


そう答えるアガット。
本当に自分のことより家族のことばかりだ。変わらないな。それがアガットなんだけどさ。



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