Sports Day 前

お坊っちゃま、遅いな。
時刻は17時前。いつもなら、とっくに帰って来てるはずなのに、まだ帰って来ない。最近、帰りが遅いんだよね。



「ただいま!」

「お帰りなさい」


そう考えていたら、お坊っちゃまが帰って来た。



「お坊っちゃま、最近帰りが遅いですね」

「運動会、近いからな!」

「運動会ですか。懐かしい…」


昔は嫌で仕方なかったけれど。そんなに運動は得意じゃなかったし。



「放課後は毎日リレーの練習してるんだ。オレ、リレーの選手に選ばれてるから。アンカーにもなったし!」

「アンカーなんですか?すごいですね!頑張ってください」


きっと私は運動会を見に行けないだろうから。家族なら学園には入れるだろうけど、私は使用人で家族じゃない。



「なあ、アリス」

「はい?」

「運動会、見に来てくんねェ?」

「え?誰か見に来てくれるんじゃないですか」

「毎年来てくれるのはアガットだけだよ。親父は今まで来たことねェし。今年はアガットに仕事あるから、送り迎えしか来れなくてさ。だから、今年はアリスに来て欲しいんだ…。ダメ?」


お坊っちゃまも六年生になって、初等部でやる運動会は今回が最後。私も一度はお坊っちゃまの学校での姿は見てみたい。



「いいですよ」

「本当!?」

「はい。お坊っちゃまの活躍が見られるなら行きますよ」


そう返事すると、お坊っちゃまは嬉しそうに「絶対に来いよ!」と言った。



「それじゃあ、お弁当を作って…あ、お坊っちゃまの学校ってどうなんですか?私の方の学校はお母さんがよくお弁当を作ってくれて、一緒に食べてたんですけど。私立じゃ違いま…」

「オレ、アリスの作った弁当がいい!」

「え、でも、学校は…」

「毎年、弁当か給食を選択するんだ。確か、弁当なら、一緒に食べて良いはずだから一緒に食べようぜ!」


お坊っちゃまの笑顔が眩しかった…。すごい破壊力あったわ。





その日の夜。
お坊っちゃまの部屋から自室に戻ろうとしたら、ドラ様と廊下でバッタリ会った。



「ドラ様、こんばんは」

「ねぇ、アリス。ハルクから聞いたけど、運動会は見に来るの?」

「はい。行きますよ」

「オレの応援もしてくれる?」


確か、ドラ様もお坊っちゃまと同じ学校に通っているんだっけ?



「はい。もちろんドラ様のことも応援しますよ」

「ありがとう。オレ、頑張るね!」


普段あまり笑わないドラ様が笑ってそう答えた。
可愛い!こんな弟がいたら、間違いなく可愛いがっちゃうよ。




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