Summer Story(前)
今日で期末試験を終え、お昼も食べずに学園から帰宅したお坊っちゃま。帰ってくるなり、私に───
「アリス。お前、怖いの平気?苦手?どっち?」
「怖いの?お化け屋敷とかホラー映画は平気な方ですよ」
「本当か!?」
「ええ。それがどうかし…」
「出かけるから、すぐ着替えて来い!」
「何でですか?」
「いいから、早く!10分後に玄関ホールに集合!」
そう言って、お坊っちゃまは私を部屋から追い出したのです。仕方なく言われた通りに自分の部屋に行き、着替えてから、玄関ホールに戻って来た。すると、既にお坊っちゃまは待っていて、私を部屋から出した後に着替えたのか、制服から私服になってました。
「アリス!」
「着替えてきましたけど、どこに行…」
「さ、車に行くぞ!アガットを待たせてるから」
来るなり腕を掴まれ、アガットさんの待っている車に連れて行かれて、行き先もわからぬまま、しばらく車に乗る。しばらくして、車から降ろされ、お坊っちゃまに再び腕を掴まれて、このお化け屋敷に連れて来られたというわけです。
「お化け屋敷。私は何故ここに…」
「実は…」
お坊っちゃまが言うには、一週間前に学園でお化け屋敷のチケットを配られたそうです。本当は来たくなかったらしいですが、行かないと幽霊についての大量の課題を書かないといけないと言われ、その課題やるくらいならお化け屋敷に来ることを選んだようです。行った証に日付の入ったチケットを出さないといけないみたいですが。
「私じゃなくて、学園のお友達と来た方が良かったんじゃないですか?」
「都合、合わなかったんだよ!コウもシンジュも」
誰と来てもいいなら、私じゃなくても、アガットさんで良かったのでは?と聞いたら、アガットさんもお化け屋敷は苦手らしいです。幽霊は平気だけど、人に驚かされるのがダメというのが一番の理由だそうで。意外です。ホラー映画とかも無理と言ってました。ホラー映画、結構楽しいのに。
「お坊っちゃま、怖いのが苦手ですか?」
「苦手というより無理。昔、タスク兄にあちこちのお化け屋敷に無理矢理連れて行かれてから、ダメになった…」
タスク様ならやりそうだわ。お坊っちゃまを一人にして、怖がってるのを隠れて見てそう。
他の兄弟も平気そうな気はする。前にリク様と話していたら、幽霊やお化けは一切信じてないから、ホラー映画や小説も平気だとおっしゃっていたし。夏に見ると楽しいし、涼しいですよねーって笑っていた。
「お前は何で平気なの?」
「私も最初は苦手でしたよ。でも、一緒にいた妹や幼なじみが全然怖がりもしないので、いつの間にか怖くなくなりました!今はむしろ楽しんでます!」
「……」
「あれ?どうかしました??」
「…何でもねェ」
列に並んでいる人を見れば、確かに学生が多いように感じた。普通の人も並んではいるけど。中にはお坊っちゃまを知ってる同級生っぽい子達も何人かいて、離れてるので声はかけてきたりはしないけど、たまに私を見てくる子がいるんだよね。コソコソと話してるし。特に女の子同士で来ている子達。お坊っちゃまのことが気になってるのかな。
お坊っちゃまも黙ってれば…ね。
「もう少しで入口ですね」
「そ、うだな…」
会話が続かない。よほど入りたくないんだろうな。
それから少しして、入口に来た。お坊っちゃまからもらったチケットを渡し、日付を入れてもらい、半券を返してもらった。
店員さんから提灯を渡されて、「行ってらっしゃーい」と見送られ、いよいよお化け屋敷の始まりです!
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