Heredity

ラピスを奪われ、モモも亡くなり、俺はもう誰かを愛せることはないと思っていた。

そんな俺の前にラピスそっくりの娘が現れた。外見はラピスに似ていたが、中身はまったく違った。

どうやらその娘は、真面目で温厚な性格をしているが、異性から向けられる好意にはかなり鈍感らしく、まったく気づかないらしいと聞く。


……何だ。このイライラは?
昔、どこかで感じたことのあるような…



「ああ。確かにアリスは誰かに似ている気はしていましたが、アメジスト様の言ったことでわかりました」

「誰に似ているんだ?」

「昔、いたじゃないですか?例の特待生だったルビー・マチェドニア。彼に似てるんですよ」

「…あいつか。それでこんなに不愉快なわけか」


ラピスを奪ったあの男。
しかし、あの娘はラピスの娘ではないはずだが…。



「そういえば、アリスの父親は、ペリドットって名前でしたね。どこかで聞いたことがあるような…」

「ボルドー?」


何を思ったことがあったのか、ボルドーが調べ始めた。パソコンでキーボードを叩く姿をただ黙って見ていると、ボルドーが顔を上げた。



「思い出しました。ペリドット・パンナコッタ。サファイア・アッフォガート。この二人は、ルビー・マチェドニアとよくいた者達です」

「アッフォガートか。あいつにはよく世話になったな。いつか借りを倍にして返してやりたいんだがな…」


うちとまともにやりあえるのは、あの家だけだ。
あの家にも息子が何人かいたはずだ。



「アメジスト様。今はそこじゃありません。アリスがラピスとルビー・マチェドニアの娘である可能性が高いかもしれません」

「は?」

「しかし。この件、もう少し詳しく調べて直してみます。わかり次第、改めて旦那様に報告致します」


その時の俺は、大して興味は持っていなかった。だから、すぐに忘れていた。



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