Cherry-blossom viewing(後)

数日後。
桜も満開になり、見頃となった今日。日曜日でお坊っちゃまも学校はお休み。お花見は今日することになり、私は朝から二人分のお弁当を作っていた。

最初は料理長に頼もうとしたのだが、お坊っちゃまが私の作るお弁当がいいと駄々をこねられたので、作ることになった。
どうして、私のがいいのかしら?料理長の方が美味しそうだと思うんだけど。あっちはプロの料理人なんだし。

全ての準備を終えて、一度寄り道をしてから、待ち合わせた玄関ホールに向かう。そこには既にお坊っちゃまの姿があった。



「アリス!!」

「お待たせしました。さ、行きましょうか?」

「車ねェけど?」

「車で行かないですよ。歩きで行ける距離にあるので、今日は歩きましょう」

「わかった!」


歩きだそうとしたら、お坊っちゃまが、「それ、貸して」と私の持っている荷物を持つと言ってくる。いやいや、お坊っちゃまに持たせるわけには行かないし、二人分だからそんなに重くはない。



「大丈夫です。お坊っちゃまは何も持たなくて」

「オレが持つ」

「大丈夫ですから」

「持つ!」


なかなか折れない。これは持たせないと引きそうにないかも。仕方ない。こっちのお弁当が入ってる鞄の方を持ってもらおう。



「じゃあ、こっちの方を持ってください。お弁当箱が入ってますから、気をつけてくださいね」

「わかった」


お坊っちゃまは鞄を受け取り、しっかりと持つ。普段重い荷物なんて持たないから、ふらつくんじゃないかと心配したけど、そんなことはなかった。私が不安になりすぎただけなのかな…。



「あれ?ハルクとアリスじゃん。二人でどこ行くの?」

「……げっ、タスク兄」


出かけようとしていたら、タスク様に声をかけられた。日曜日はほとんど出かけていないことが多いのに、今日は出かけないんだ。出かける先は、いつもリコリス様のところだけど。



「タスク様。家にいるなんて珍しいですね」

「リコリス、今日は家族で出かけんだって。だから、家にいんの。もしかして、デート?」

「お花見に行くだけですよ」

「でも、二人で行くんだろ?やっぱりデートじゃん」


デートではないと思うんだけどな。
何気なく横のお坊っちゃまを見れば、顔が真っ赤だった。



「お坊っちゃま、大丈夫ですか?顔が赤いですけど。熱が出たんじゃないですか!?」

「違ェよ!」

「あははは!アリス、鈍い!」

「え?」


鈍い?何で。
だって、お坊っちゃまの顔は赤いし。



「ほら、早く行くぞ!」

「わかりましたから、急に引っ張らないでください!お坊っちゃま」

「行ってらっしゃーい」


タスク様に見送られて、私はお坊っちゃまとお花見に出かけた。



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