Cherry-blossom viewing(前)

「……ということがあったんだけど」


昼間あったことをメイド仲間のベゴニアとスマルトに話した。すると、二人は呆れていた。



「そりゃハルク様が鈍感女って怒るはずだわ…」

「アリス、天然にも程があるわよ。天然も度を超すとイライラしてくるから」

「何で私が怒られるのよ…」


少しふてくされていたら、ベゴニアに指を指された。



「あのね、ハルク様はあんたと行きたいんでしょ。お花見。だから、あんたの顔を見たのよ!」

「私と行っても楽しくないでしょ」

「その話を聞く限り、アリスと行きたい以外の何物でもないわよ」


そうかな。お花見じゃなくても、去年の秋頃にピクニックは行ったんだけど。



「私とは前にピクニック行ったから、もういいんじゃない?それより皆で行こうよ!」

「皆でも行くから、あんたは先にハルク様と行きなよ」

「何で?」

「何でじゃなくて。わかった。こうしよう。アリスは明日、お花見にハルク様を誘う!それでお坊っちゃまが行かないと行ったら、私達と行こう」

「もしも行きたいって、行ったら?」

「ハルク様と一緒にお花見に行きなさい」

「えー。皆でも行こうよ!」

「ともかくまずはハルク様を誘うこと。わかったわね?」

「うん…」


二人にそう言われて、私はお坊っちゃまをお花見に誘うことになった。

翌日。



「お坊っちゃま、おはようございます。お話があるんですけど」

「……何だよ」


その返事にまだ機嫌が悪いのがわかった。これじゃあ、誘っては断られるだろう。ま、聞くだけ聞いてみよう。



「今度、私とお花見に行きませんか?」

「行く!」

「そうですよね。行くわけな……え?」


今なんて言った?お坊っちゃま。行くって言ったの?聞き間違い??



「だから、花見に行くんだろ!行きたい!」

「そんなに行きたかったんですか…」

「うん!」


すっごい目がキラキラしてる。よっぽど行きたかったのか、お花見。



「私と二人でもいいんですか?」

「うん!」


何故だ。私と二人で本当にいいの?つまらなくないのかな。確かにピクニックは二人で行ったけども。



「あ、他にも誰か誘ってみます?」

「いらねェ…」


提案すると、一気に不機嫌になった。これは本当に他の人を誘ったら行かないって言い出すかも。今回は私が誘ったんだし、二人で行くか。



「わかりました。じゃあ、二人でお花見に行きましょうか?」

「うん!いつ行くんだ!?」

「桜がもう少し咲いてないと、お花見するには寂しいですからね。あと数日待ちましょう」

「わかった!」


珍しく聞きわけがいいな。いつもこうなら、苦労しないんだけど。



夜に二人にどうだったかを尋ねられて、「一緒に行くことになった」と告げると「ほら、やっぱりあんたと行きたかったのよ」と言われた。「お花見したことないからでしょ」と答えれば、「お坊っちゃまよりアリスの方が子供」だと返された。何でよ!





【続】
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