Him and Her
ショッピングモールにあった時計に目を向ければ、時刻は16時過ぎ。私もそろそろ帰ろう。
ショッピングモールを出ようと歩いていると、数人の中学生達を見かけた。男の子や女の子が仲良さそうに歩いていた。中学生のグループデートかな。可愛らしいわ。ついニヤニヤしてしまうわね!
制服をよく見れば、お坊っちゃま達のと同じ。
そのうちの一人の男の子が、何かお坊っちゃまに似てる……って、お坊っちゃま本人だわ!!
お坊っちゃまもやるわね!まだまだ子供ね…と思っていたけど( *´艸`)
一旦、帰るのを止めて、彼らの後をこっそりとつける。すると、女の子達全員がトイレのある方に歩き出し、男の子達もトイレや電話をかけるなどと言って、その場を離れてく。一人残ったお坊っちゃまは、空いてるベンチを見つけて、腰をかける。
一人になったお坊っちゃまは、スマホを取り出す。
私はその背後からゆっくりと近づく───そして、
「……………」
「見ましたよ!お坊っちゃま」
「………っ!?」
私の声に気づいたお坊っちゃまが驚き、すぐさま振り返る。
「アリス!?何でここに…」
「えへへ。今日はお休みなので、街に来たんですよ!それにしても、隅におけないですね!お坊っちゃまも」
「な、何がだよ…」
「さっきいた女の子達の中に好きな人がいるんでしょう?」
「はあ!?違ェよ!!」
「またまた否定しなくても、私はわかってますから!」
「わかってねェよ!!どうしたら、そんな勘違い出来るんだよ!」
「お坊っちゃまに可愛らしい婚約者が出来るのも近いですねo(*゚∀゚*)o楽しみです!」
私は腕を組みながら、何度も頷く。お坊っちゃまの隣に立つ女の子を想像してみる。絶対にお坊っちゃまに似合う可愛らしい女の子よね。お似合い!
「だから、違うって言ってんだろ!」
「そんな恥ずかしがらなくても!」
「オレが好きなのは、お前だ!!」
お坊っちゃまがいきなりそう叫んだ。近くにいた人達までも、その声でこちらを向いていた。お坊っちゃまの顔は、真っ赤だった。
「……………」
「私も好きですよ」
「え?それって…」
「可愛い弟が出来たみたいで」
「…………………………は?」
リンネと同い年だし、生意気なところとか素直じゃないところが似てるから、つい弟みたく感じちゃうんだよね!お坊っちゃまったら、顔が赤かったのも、私にからかわれたのが恥ずかしかったからなのね。
「もう知るか!このウルトラ鈍感女!ラブフラグクラッシャー!!」
「ウルトラ鈍感女…?ラブフラグクラッシャー??どういう意味ですか!?」
お坊っちゃまはそう怒鳴ると、そこから立ち去ってしまった。え、何で怒ってるの??というか、一緒に来た子達を放っていいの?
私は慌ててお坊っちゃまの後を追いかけるも、お坊っちゃまはショッピングモールの外で待機していた車に戻っても、ずっと私を無視する。
屋敷に戻ってからも、私とは話そうとせず、さっさと部屋に戻ってしまった。
様子を見ていたアガットさんに何かあったのかと聞かれて、さっきの出来事を口にすれば、「今回はアリスさんが悪いです…」と言われた。
だから、何で!?
それから翌日もお坊っちゃまは、私が声をかけても最低限の返事しかしなくなり、普通に話すようになったのは、一週間後だった───。
【END】