Amusement Park
私は今、遊園地に来てます。
すっかり遊園地に行く約束を忘れてて、何か最近お坊っちゃまが睨んでくるなとは思っていたんですよね。
二週間前。
5月も半ばを過ぎた頃、お坊っちゃまが私に言ってきた。
「アリス。遊園地のこと、忘れてねェよな?」
「遊園地??」
「やっぱり忘れてやがった!約束したじゃん。運動会で…」
「………あ」
お坊っちゃまに言われるまで、完全に忘れていた。だって、最近仕事が忙しかったんだもの。
「それでお前の休み、いつ?」
「次の休みなら、二週間後の月曜日ですけど」
「日曜日は?日曜日の休みはないのかよ!」
「日曜日はあまりないですよ。有休を使えば、日曜日でも使え…」
「有休使えよ!」
「有休は年末の実家に帰る時に使いたいんですよね…」
私がそう答えると、お坊っちゃまは怒って、机を叩いた。
「約束、破るのかよ!」
「そういうわけじゃ…」
「どういうわけだよ!オレ、お前と遊園地に行きたいから頑張ったのに」
そんなに遊園地に行きたかったの!?お母さん亡くなってから、あまり連れてってもらえなかったからかな…。
「わかりました!今からメイド長に頼みに行ってきますから」
「オレも行く!アリスだけだと休みもらえなさそうだし。ほら、さっさと行くぞ!!」
それで二人でメイド長のところに行ったのよね。話をしたら、取りあえず、再来週の日曜日は有休を使えることにはなったんだけど。
来月は別の休みの時に仕事に入らなくちゃ。無理に休みにしてもらったんだから。
その後、大慌てで同じ遊園地に行こうと調べていたら、ベゴニアが別の遊園地の無料招待券を譲ってくれることになって、正直助かった。ベゴニアにはそのうちにお礼しないと。
その遊園地、雑誌読んでちょっと気になってた遊園地だったから、楽しみなんだよね。
そして、今日、遊園地に来た。
急なことにも関わらず、アガットさんに車で送ってもらった。これからそのまま別の仕事があるみたいだから、通り道だから大丈夫だって言って送ってくれたけど。しかも、また夜にも迎えに来てくれるって言ってくれたから、ついお願いしちゃったんだけど…。
アガットさんにも、今度お礼をしなくちゃ。
「お坊っちゃま。アガットさんにお礼したいんですが、何がいいんですかね?」
「お前のお菓子でいいんじゃねェの?」
「え、それは…」
「アガットもお菓子とかよく食べてるぜ。アリスの作るお菓子も好きだって前に言ってたし」
「じゃあ、色々なお菓子を作った詰め合わせにしてみますね」
「残ったら、オレにもちょうだい」
「残りませんよ。というか、これはアガットさんに作るんですから」
「………ケチ」
ケチじゃない。まったく二言目にはすぐお菓子って言うんだから。
私は鞄から招待券を取り出して、お坊っちゃまと一緒に遊園地の入園ゲートへと向かった。
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