First Love
―――と、そこで俺は目を覚ました。
辺りはまだ暗い。隣を見れば、若い女が寝息を立てながら眠っていた。
ここはホテルか。今、自分がどこにいるのかを思い出す。
昨夜、馴染みのバーで久々に飲んでいたら、向こうから声をかけられたから、気分で相手をした。ただそれだけ。
女がやたら何度も求めて来たから、それに応えてやったが、俺自身は正直そこまで気持ち良くなれなかった。女の啼く声を聞いても、欲情もわかない。
「……」
いつからこんな誰とでも寝れるようになったのか。昔はラピス以外となんて、絶対考えられなかったのにな…。
昔の俺が今の俺を見たら、軽蔑するだろう。
それにしても嫌な夢を見た。いや、あれは夢じゃない。過去にあったことだ。
「ラピス…」
あの頃の俺は、何もかもが彼女がすべてだった。もしも、彼女の前に“あいつ”が現れなければ、俺は彼女と今も一緒にいられてたのだろうか?
……バカバカしい。そんな未来あるわけがない。
彼女がこの世界にいない今でも、俺はまだ囚われている。ラピスを忘れられない。
“忘れられなくてもいいんです。無理に消さなくてもいいんですよ?先輩”
よくこんな俺でもいいと彼女―――モモは言った。
その彼女も俺を置いて、逝ってしまったが。
俺はこの世界に嫌われているのかもしれない。
だから、今も一人。
誰も愛せないんだ。
【END】