When I turned around, I knew someone
その夜。
使用人用の食堂でベゴニアが夕飯をトレーに載せ、仲の良いアリスとスマルトの姿を探す。少し離れたところの席に二人を見つけ、そちらに向かう。
だが、向かっている途中で何やらアリスの様子がおかしいことに気づく。スマルトの隣が空いてるので、そこに座り、話しかける。
「ちょっと、スマルト。アリスはどうしたわけ?燃え尽きた感じになってるわよ」
「見ちゃったんだって」
「何を?」
「リク様が女の子と仲良く歩いていたのを」
「え?リク様に彼女??いたかしら?」
ベゴニアは手を合わせ、食事を始める。スマルトは既に自分の分の食事は食べ終えていた。アリスにいたっては、スープを一度、口にしただけ。
だから、アリスが手をつけていないものをスマルトはパクパクと取って食べていた。この細い身体で全然食べれないかと思いきや、かなり食べるのである。街にあるチャレンジメニューも挑戦しては、見事に全て成功していた。ちなみに兄のアンバーは、大食いではなく、普通である。
「私もいないと思うのだけど、リク様が女の子と笑っていたのを見て、アリスは彼女だと思っているわ。それからずっとショックを受けてるの。特に帰って来た時が一番ひどくて、さっきまでずっと泣いていたんだから。今は泣き尽くして、マシになった方よ」
「これでマシなの?」
「ええ。この状態じゃハルク様のところなんて行かせられないから、アガットさんに言って、午後は休ませてもらったわ。メイド長もアリスのこの状態を見て、言葉を失っていたし」
「それでさっきから、燃え尽きた状態なのね。ま、この子がダメージを受けるのはリク様関連だけだし。他のことに関しては、ケロッとしてるのに。しっかし、リク様ねー。婚約者候補は何人かいたのは知ってるけど」
「あら、そうなの?」
「うん。でも、御当主の目にかなわないんじゃない?どの令嬢も一度きりしか見ないし。ほら、リク様は跡継ぎだから」
「跡継ぎなら、やっぱりドルチェ家と並ぶ家柄の令嬢を探しているんでしょうね」
「この子も黙っていれば、どこかの家の御令嬢に見えるんだけどね」
「あら、アリスはこのギャップがいいのよ」
「あんたもその顔と中身は、ギャップありすぎよね」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないわよ」
二人は話しながら、食事を進めていく。
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