When I turned around, I knew someone
私は見てしまった。
リク様の隣に親しそうにしている女の子の存在を。
嘘だと思いたかった。これは夢だと…。
しかし、現実だった。
隣にいる女の子がリク様の腕を取って、どこかへ歩き出す。リク様は嫌がるところか、笑いながら手を引かれたまま一緒に行ってしまった。
「……」
リク様、彼女がいたんだ。
そうだよね。いない方がおかしいもんね。優しいし、素敵だもん。
「……」
胸が痛い。その痛みのせいかわからないけど、涙が出てきた。拭っても止まらない。
変だな。何で止まらないんだろう。
さっきの楽しそうな二人の姿が焼きついて、涙は更に流れてく。
リク様も彼女の前では、あんな風に笑うんだな。私に見せてくれる時と違う。それはそうだよね。私はただの使用人の一人なんだから。親しいだけで私とリク様の距離は縮まることはないのに、何を期待していたのよ。バカみたい…。
そうか。私、失恋したんだ…。
だから、こんなに悲しくて苦しいんだ。
それから屋敷まで、どうやって帰ったか思い出せない。
気づいたら、屋敷に帰っていて、スマルトが玄関ホールにいた。
「アリス。買い出しに行ったんじゃないの?」
「……」
「もしかして、メモでも忘れ…」
「スマルトおおおぉ!」
私はスマルトに抱きついて、大泣きした。
最初は驚いていたけど、何も言わずに背中を撫でてくれた。
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