Cold and Love
いつものように仕事をしていたら、突然、めまいがして、立っていられなくなり、そのまま倒れてしまった。
目を覚ますと、自分の部屋のベッドにいた。
「アリス、大丈夫ですか?」
「はい…」
「医者に診てもらったところ、疲労と軽い貧血だそうです」
「疲労と貧血…」
「人数も足りていますから、今日、明日は休んで構いません。メイド長からも許可は下りてますし。ハルク様のところには、別の者を行かせますから」
「すみません。ジョーヌさん…」
「あなたはここに来てから、ずっと頑張っていましたから。これを期にゆっくり休んでください」
「……わかりました。ありがとうございます」
ジョーヌさんがそれだけ告げると、部屋を出てしまった。早く治さないとね。
用意してある食事を取ってから、薬を飲んで、横になる。
「……ん」
ふと目を覚ます。私、寝てたのか…。時間は、何時だろう?時計を見ようと起き上がると、ベッドの横に誰かの頭があった。お坊っちゃまだった。
というか、誰かが私の部屋に、お坊っちゃまを上げたな。使用人の部屋は入っちゃだめだって言ったのに…。
そこへノックがして、返事をすると、スマルトが入って来た。様子を見に来てくれたのだろうか?
「あら、起きたのね。アリス」
「たった今ね。そして、何故お坊っちゃまが私の部屋にいるのかな?」
「ハルク様、アリスが体調を崩したから来れないって言ったら、真っ直ぐ使用人の屋敷に来たらしいわよ。代わりに行ったメイドを置いて。しかも、アリスの部屋に行きたいって騒いでたらしくて」
「お坊っちゃまを私の部屋に入れたの、ベゴニアでしょ」
「正解よ。部屋に連れて来たら、あなたの傍から離れようとしないし。ずっとここにいるって、いうこと聞かないのよ。それならアリスの部屋に居させた方がいいってことになったの」
「そうなんだ…」
「話を聞いたメイド長が特別に許可してくれたわ」
私の部屋まで来るとは、少しは可愛いところもあるんだな、お坊っちゃま…。
「部屋に入れたはいいけど、もう大変だったのよ」
「何かあったの?」
「ハルク様、アリスのことが心配すぎて色々やるんだけど、全部空回り」
何となく想像できる……
お坊っちゃま、やりたがっても実力がともなっていなかったり知識が足りなかったりするから……
「風邪も移るかもしれないのに、健気ね…………って、アリス?」
「お坊っちゃまに風邪を移すわけにはいかないから……お坊っちゃまを部屋に運ぶの手伝ってくれる?」
「……いいわよ」
スマルトと呼吸を合わせてお坊っちゃまの手と足を持ち上げ──
──ビリッ!
イヤな音が聞こえた。
「あら。ハルク様ってば、今日に限って繋ぎパジャマなのね」
「どうしよう、スマルト……」
「起きたら謝罪、以上!」
そう言うと、スマルトはさっさと出て行ってしまった。
私は恐る恐る破れたパジャマを見る。
「……縫おう……」
うう……着たまま縫うのって難しい……
眠るお坊っちゃまを起こさないように、いつも以上に気を遣う。
縫い終わると、細かい作業に脳が疲れたのか……
再び熱が出たのか……フラフラだった。
裁縫道具をしまって、ベッドに転がる。
意識は直ぐになくなった。
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