Sweets are Magic
午後三時になろうとした時、アリスがハルクに声をかける。
「お坊っちゃま。そろそろおやつを用意しましょうか?」
「おう。すぐ食べるから、ちょうだい!」
「わかりました」
アリスがいつものように返事をしながら、心の中でニヤッと笑う。「どうぞ」と言い、作ってきたお菓子をハルクの前に置く。
ハルクは手を合わせた後、アリスの作ったお菓子に手をつける。
「…………っ!?」
突然、ハルクが口を押さえて、目だけでアリスに何かを訴えてくる。
「どうしました?」
「~~~~~っ!!」
「すみません。ちょっと何を言ってるかわかりませんね(ニヤリ(^ー^))」
「@*&#§※!!」
アリスは、ニヤニヤと笑いながら、わざとわからないフリをした。そんなアリスを見て、ハルクは睨みつつも叫びたいが、口の中が辛くて叫べない。口に含んだものはすぐ飲み込んだらしいが、あまりの辛さに悶えていた。
見かねたアリスがお水を渡すと、一気飲みした。水のお陰で、やっと辛いのが治まったハルクが言った。
「アリス。お前、わざとだろ!」
「当たり前です。昨日のことは、まだ許してませんからね!」
「だからって、食べ物で仕返すなんて…」
「最初に私の顔にイタズラしたのは誰ですかね?」
「………うっ」
「私、前にも言いましたよね?人の嫌がることはやってはだめだと」
言い返せないハルク。
そう。彼は前にもアリスにイタズラを仕掛け、怒られていた。それなのにまた同じようなイタズラをしたのである。
「お坊っちゃま。こういうことを好きな人にしたら、だめですからね!嫌われますよ!」
「……………え。き、嫌われる…?」
「そうです。私だから、まだいいですよ。使用人なので、我慢は出来ます。お坊っちゃまは、まだ子供ですからね」
アリスの言葉を聞いて、青ざめるハルク。
全然良くないと小声で呟く。それはそうである。現に好きな相手に二度もやってしまったからだ。
「いくら好きだからって、意地悪するのもだめです。本っ当に嫌われてしまいますからね?私がお坊っちゃまくらいの時に、好きな女の子にイタズラばかりする男の子がいましたけど、本当に嫌われてましたので。意地悪する子になんか、誰も好きになったりしませんし」
「アリスもされたの?」
「私?……ああ。そういえば、いましたね。私にやたら絡んで来た男子が。ま、あの男子は私を好きとかじゃなかったと思いますけど。自慢ばっかして来てたり、すぐにバカにしてきたり。……今、思い出すと腹が立ってきましたね」
アリスはそう答えていたが、ハルクにはわかっていた。その男もアリスに好意があったことを。アリスは、自分に向けられる好意には鈍感である。
それ以来、ハルクはアリスにイタズラをしなくなったという。
その理由は、勿論─────好きな人に嫌われたくないから。
【END】