Sweets are Magic




「おーぼっちゃまー!待ちなさーい!」

「誰が待つかよ!ノロマアリス!カメアリス!」

「何ですってー!今日こそは、絶っ対許しませんからねー!」

「謝って欲しかったら、捕まえてみろ!バーカ!」

「お坊っちゃまー!!」

アリスとハルクの追いかけっこが始まっていた。追いかけるアリスの顔には、ハルクがやったであろうイタズラが残っていた。

しかし、ハルクの足が速く、アリスの足では追いつけるわけもなく、あっという間に見失ってしまった。


「はあ、はあはあ……ぁ…はあ…の……クソ、ガキ…はあ…」

更にアリスは、運動が苦手で体力が全然ないので、運動神経が抜群なハルクに勝てるわけがない。追いかけることを諦めたアリスは、顔を洗うことにした。


(もう本当にお坊っちゃまは、私の顔にイタズラがきなんかして!お陰でリク様に笑われちゃったじゃないの!)

使用人用の洗面所に行き、お湯が出るところで顔を洗った。しかし、一度ではなかなか落ちず、アリスは鏡を見ながら、メイク落としの洗顔クリームを何度も使ってから、ようやく顔についた汚れは落ちたのである。


(やーーーーーっと落ちたわ。こうなったら、私の方法でやり返すしかないわね!今に見てなさい!お坊っちゃま)

それからアリスは、ハルクの部屋には戻らなかった。

別に嫌で戻らなかったわけではない。部屋に戻ろうとした時、たまたまベゴニアと会い、大量にあるからと一緒に買い出しに行くのを頼まれたからだ。その後も色々と重なり、ハルクの部屋には行けなかったのである。アガットには連絡はしていたので、了解はもらっている。

しかし、アリスが来なかったことにハルクは自分のイタズラのせいで、アリスが怒ってしまい、来なくなったと落ち込んだのは言うまでもない。夕食の時、いつになく暗い顔をしながら食べていたので、他の兄弟達はアリスとまた何かあったと察知した。タスクがからかっても、ハルクは無反応だった。



翌日の朝。
アリスはいつも通りにやって来たのを見て、ハルクは内心ホッとしていた。だが、素直になれない彼は、つい意地悪を言ってしまう。


「あれから部屋に戻って来ねェから、もう来ないかと思った」

「仕事で来れなかっただけですよ。来なくても良かったなら、私、帰ってもいいですかね?特に必要ないなら、人数が足りないから手伝て欲しいと頼まれて…」

「ダメ!ダメに決まってんだろ!お前はオレの世話係なんだから」

「……わかりました」

本当はいて欲しいのに、素直に言えないハルク。そんな彼を見て、アガットは「お坊っちゃまもお年頃なんだな…」なんて思いながら見守っていた。



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