Heaven and Hell
一度、繋がると、人は様々な反応をする──
嫌悪・恐怖・不快……
快楽・解放・目覚め……
何にせよ、妾を忘れるものはいない──
“癖になる”と言ったのはライだった。
来るものは拒まず。
去り行くものも逃がさない。
それが妾…………だったのだが。
「そなた、まだ帰らぬのか?」
正直、早く解放されたいと思っている。
視える分、その感情は強い──
「叶だろ? いつでも好きな時に来ていいって」
「ならば早う、此方へ来るが良い」
「ヤりたい気持ちはあんだけどさ、見せたいんだって」
そう。
ライが訪れてからり早二時間。
最初こそ興味で受け入れたが流石に気が滅入る……
しかも連日となると余計に、だ。
3日前。
兄弟の下着を自分後のみにアレンジして着用するのを見てほしいという、良く分からない話から始まった。
2日前は悩殺ポーズを考えてきたから、悩殺させてやると張り切っていた。
結局、妾が悩殺されることはなかった。
だが“悩殺された”と伝えなければ解放されないと悟り、“フリ”で逃れられた。
そして今日、現在に至るのだが……
「No.1009! 尻に食い込むと見せ掛けて、食い込まねーパンツ!」
何着、持ってきたのだ……我は……
「さっきと何が違う?」
「色とレースの有無」
……微妙な違いではないか。
もう、妾は萎えてきておる。
いや、3日前から餓えてはいる。だが、こやつには萎えている──
──5000手前で限界が来た。
「今日はもう遅い……迎えを寄越した。帰るが良い」
「えー、やだー」
今すぐにこやつを出禁にしたい……
「明日、来るが良い」
そう言ったものの、明日からは大切な試験がある。
無理と分かっていて、そう言った。
それなのに──
「ご主人さま!」
露出が高いメイドの格好で朝からライは来ている。
「テストではなかったのか?」
「テストだけど、どーでもいい」
「……どうでも……いい、だと?」
「おやじもさ、叶の方を優先しろってさ」
…………何と……っ
妾は学んだ。
何もかも、妾優先はよくない……と。
ナース、バニーやプリンセス……様々な衣装を着こなしたのを何時間と見せられ、妾は萎えに萎え……
性欲というものを奪われた。
「さーてと、ヤろうぜ!」
「ちょ、待て! 脱がなくてよい」
「え! 服着たまんま!? 新しいプレ──」
「急用じゃ!」
「その前に一発」
そう言うと、ライは服を脱ぎ始める。
性欲の沸かぬまま、妾はライを──
「抱けるわけがなかろう!」
この日から妾はライの接近禁止命令を出した。
しかしライは変わらず通う……
妾が別の相手と交わっていようと、構わず乱入してくる始末。
「あれ? 叶、胸縮んだか?」
誰のせいと思っておる……
……誰か……誰か……この男をどうにかしておくれ──
END.
(2024.04.25)