Children's Day and then...

5月5日。
子供の日でもあり、オレの誕生日。

うちでは、特にお祝いはない。母さんが生きていた頃は、毎年料理やケーキを作って、祝ってくれてたけど、居なくなってからは、毎年いつもより豪華な飯とケーキが出されるくらいだった。

訂正。
母さんがいなくなった後、アガットが代わりに、毎年プレゼントを用意して祝ってくれた。


でも、今は───





「お坊っちゃま!!」

夕方。
アガットが部屋に戻って来て、オレを呼ぶ。


「夕食の準備が出来ましたので」

「わかった」

夕食の時間だからと、いつものようにアガットの後を歩き、部屋から連れ出される。ある場所の前まで来ると、アガットが立ち止まり、振り返る。


「着きました。さ、お坊っちゃま。お先にどうぞ」

「え?」

着いた先は、いつものダイニングではない。小食堂の隣にあるダイニングで、あまり使われることはない。以前にアリスとお祭りにある食べ物を作って、ここで食べたっけ。


「お坊っちゃま。早く入ってください」

「うん…」


アガットに促され、仕方なくドアノブに触れ、中に入ると、中は真っ暗だ。本当にここなのかと思っていると、電気がついたと同時に複数のクラッカーが鳴った。そして───


『ハッピーバースデー!!』

「!?」

複数人の声がした。
明るくなった部屋には、見慣れたヤツらがいた。兄弟達や友達に加え、兄弟の執事達までいた。クラッカーから放たれた大量のキラキラのテープがオレに降りかかった。


「……………」

「どうした?ハルク。突然のことで、ビックリしちゃったか?」

「ふふふ。はあくんの驚いている顔が見れたわ!大成功ね!」

オレに駆け寄って来たタスク兄とリコリスは、オレを見て、笑っていた。


「ハッピーバースデー!ハルク!」

「おめでとう!はあくん!!」

それだけ告げて、二人は離れてく。二人と入れ代わるようにやって来たのは───


「誕生日おめでとう!ハルク」

「ハルク、おめでとう。俺達の中では、一番年上だね」

「コウ、シンジュ…」

そんな二人の後ろには、シンジュの義姉・クルミやコウの家の使用人のミルの姿もある。二人も祝いの言葉を告げると、離れてく。

次にやって来たのは───


「おめでとう!ハルク」

「ハーも今日で13歳か。早いね…」

「もう中学生なんだから、少しは落ちつこうね。色々、と」

「……うるせェ」

オレの兄弟達。
と言っても、全員はいねェ。スミレとブラッドだけいねェ。あの二人は祝うほど、仲良くねェか。


「もうカルロ兄さんは、せっかくのハルクの誕生日に…」

「でも、カルロの言うことも一理あるよ」

「そうそう!ハル兄はもう少し大人になろう!」

「ドラ、フェリ。お前らまで…!」

「ハルクにとって、素敵な一年になるといい…」

「マシロの言う通りだな!ハルク。おれからは、これからベッドの中で役に立つテクを………がっ!!」

ライがいきなり手刀で眠らされ、控えていた使用人達に運ばれて、部屋から出て行く。


「全くライは油断も隙もないんだから…」

「そんなライを一撃で眠らせるリクの方が怖いから!」

「あはは。やだな~。カルロ兄さんも試してみる?」

リク兄が笑顔で手を振り落とすジェスチャーをして、それを見たグレンが答えた。


「カルちゃんじゃなくても怖いよ。リク」

「リィ。たまに怖いところがあるよね」

一部を除き、兄弟達が無言で頷き合う。
途中、恐ろしいもんを見たが、兄弟達もオレを祝ってくれた。

それからオレの元にやって来たのは───


「お坊っちゃま、おめでとうございます!」

「お誕生日おめでとうございます!」

「おめでとうございます!」

「ハルくん!おめでとう!」

アガットを始めとした兄弟達の執事達もオレを祝ってくれた。


「去年の誕生日から一年が経ち、また大きくなりましたね!俺はそんなお坊っちゃまのことを見守って……うっ!思い出したら、涙が!」

「おいおい。主役より泣いて、どうすんだよ!今日の主役はハルク様だろ?」

「仕方ないっすよ。アガくんは、ハルくんの幸せを一番に願ってるんすから」

「アガットらしいね…」

おい。そこは突っ込んだ方がいいのか?と思っていたら、執事達も離れてく。


「お坊っちゃま、13歳のお誕生日おめでとうございます!!」

最後に現れたのは、アリス。
ニコニコしながら、花束を抱えて、それをオレに渡してきた。


「ありがとう。……アリス。お前、まさか、これだけじゃねェよな?」

「違いますよ!まだまだあります!ここにいる皆さんもお坊っちゃまのプレゼントを用意してくれてますし。今ここにはいなくても、プレゼントを用意してくれた方達の分もあります。もちろん、私からのプレゼントも!」

オレは内心、ホッとした。

それにまさか、こんなに人が集まって祝ってくれるとは思ってなかった。誕生日って、こんなにいいものだったんだな…。思わず俯いてしまう。


「……………」

「お坊っちゃま…?もしかして、お祝いされるの、嫌でしたか?」

アリスが心配そうにオレの顔を覗き込む。


「………違ェよ。バカ。嬉しいに決まってるだろ!」

「それなら良かったです!さ、主役はこっちですよ!!」

アリスがオレの手を取り、席の方に連れて行く。繋がれた手の温かさから、少し泣きそうにもなったが、嬉しい気持ちの方が強かった。

今日は、皆に誕生日を祝わってもらうだけでいいか。

でも、いつかオレがもう少し大きくなったら、アリスと二人だけで祝ってもらえるようになりてェ───そう願った…。



【END】
1/1ページ
スキ