Cut off My Sister
【side ハルク】
リコリスが泣きつかれて眠った。アリスのことになると、感情が激しくなる。ベッドに寝かせて、部屋を出た。丁度、クロッカスも戻って来たし。リコリスを任せて、オレは腹がへったから、食堂に向かった。アリスも今はリクのところにいるだろうし。
食堂に入ると、やたら他のヤツにジロジロ見られてることに気づいた。顔に何かついてんのか?んなわけねェか。
食事が載ったトレーを持って、どこで食べようか見渡した時、ドラとカルロがいる席が空いていたので、そこに向かう。
「前、座るぞ」
二人に声をかけて、持ってきたトレーをテーブルに置いて、座る。特に何も言われなかったので、食事を始める。何度か口に含んで食べていた時、二人が自分を見ていることに気づく。
「オレの顔に何かついてるか?ここに入ってから、やたらジロジロ見られんだよな」
「ハルク。お前さ、やっぱり付き合ってたの?」
やっぱり付き合っていた?どういう意味だ?誰とも付き合ってなんかねェし。それに今は、夢見過ぎなお子様と重度のアリス病のリコリスのおもりで、女と付き合う暇などねェ。
「は?誰とだよ」
「リコリス様ですよ」
「……………はあ??」
「噂になってるぜ。お前に抱きついて、リコリス様が大泣きしてるって」
はあ!?何でそんなことになってんだよ!
そういえば、リコリスが泣いてる時に知らないメイドが来たんだった。ソイツが話したのか!くそ!部屋だからって、油断した。
「あれはリコリスがアリスと話せなくて、泣きついてきただけ!付き合ってねェから!」
「だろうな。どう見ても、アリスしか見えてないお前らが付き合うわけねーもん」
「何でオレがあのお子様しか見えてねェみたいに言うんだよ!」
「間違ってないじゃないですか?常にアリスの傍にいるんですから。今はリコリス様の傍にいるから、タスクが怒ってましたよ」
「……………げっ」
だからか、タスクさん。さっき、顔を合わせたのに、珍しく話しかけて来なかったから変だと思ってたんだよな。その話を聞いてたからか。
「そういえば、アリスも元気ねーよな」
「ええ。リコリス様に嫌われたって、毎日泣いていますよ」
あの二人、似た者同士だな。互いに嫌われたって泣いてるのか。
「早く仲直り出来るといいんですが」
「仲直りしたら、間違いなくリコリスはアリスから離れなくなるぞ」
「どれくらい?」
「二週間もアリスが不足してるから、一ヶ月は離れないな」
「あー。リコリス様は、常にアリスが支えでしたからね。欠乏してると、そろそろアレが始まりますよ」
「アレか。あーなると、相当ヤバイからな。リコリスは…」
リコリスの場合、アリスと過ごすことでストレスは解消されていた。しかし、今その癒しであるアリスがいない。そうなると…
「どうヤバイんだよ?」
「ドラは、前回の時はいませんでしたね。アリスを欠乏したリコリス様は、誰彼構わず“アリス”に見えてしまうんですよ。アリスにしていることをやってしまうから、危ないんです。特に若い男性の使用人の理性が保っていられないほど…」
「オレもヤバかった。普段から耐性あるオレですら、グラッと来そうになった…」
「僕は幸い、本物のアリスが隣にいたので、被害はなかったんですが」
「ヤベーじゃん!早くアリスと仲直りさせねーと」
「アリスもたまに頑固ですからね」
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