Macaron




「皆さん、お揃いでどうかしたんですか?」

「あ、アイリスさん?!」

「先程はうちのものがお世話になったようで。お礼と言ってはなんですが……」

「マカロン!」

目の前に差し出された、山のようなマカロン。

「こんなにいいの? 良かったね」

「グレン、君は遠慮というものが…………アイリスさん、こんなに貰うわけには」

「1箱ずつ、売って貰えませんか?」

「売るだなんて、とんでもない」

「僕達、大切な方へのお礼をしたいんです。なので、ただ頂くわけにはいきません」

「リク兄の言う通りだな」

俺達はマカロンを1箱ずつ購入すると、帰りの車に乗り込んだ。

「そういえば、ライは?」

「自分がテイクアウトだってさ」

「本当に何しに来たんだか……どうでもいいけどさ」

グレンの言葉に誰もが頷いた。

ホワイトデー、当日。
オレは誰よりも早くアリスのところへ行った。
マカロンを一緒に食べようと思ったものの、どうすりゃいいんだよ。

「あ、お坊っちゃま! 丁度良かった。今日は私、午後はお休みをいただきます」

「は!? 何でだよ」

「リク様とカルロ様とドラ様と……声を掛けられていて」

「ちょ、お前! 全部OKしたのかよ!」

アリスはきょとんとしながら言う。

「皆さん、大事な用事があるとの事だったので」

「そうかよ。……勝手にしろよ!」

そう叫ぶと、オレはマカロンの包みを開ける。

「それ、人気店のマカロンじゃないですか! お坊っちゃまも隅に置けませんね」

「あー、すんげェ美味い!」

冗談抜きで、絶妙な味だった。


「羨ましいだろ?」

「べ、別に羨ましくなんて──」

「残り、やるよ」

「え?」

「ホワイトデーだからとか、その……そういうんじゃなくって……これやるから、午後の予定はキャンセルしろ! いいな!?」

「……いいんですか! けど、約束してしまったので……うぅ……」

喜怒哀楽が激しいやつ……
けど……すんげェ、喜んだ顔した……よな?

「…………冗談。これはやる。午後も了解」

リク兄よりも先にアリスに渡せた、ってことでいいんだよな?
喜ぶ顔も誰より早く見れたんだよな? 
そう、自分に言い聞かせる。

後から聞いた話、リク兄達からはマカロンではないものを貰ったとか。
それはそれで気にはなるけど、アリスの反応からするとマカロンが一番嬉しかったらしい。
今年は間違いなく、オレの勝ちだな。





〈Macaron-マカロン-〉



END.
(2024.01.20)
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